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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太。また800字をオーバー……
    お題ガチャで出たお題をお借りしました。

    ##文スト

    最凶のふたり「ん……うーん……」
     ――うちの蒲団、こんなに固かったっけ?
     そんなことを思いながら敦は目を覚ます。目に映るのは白い天井。明らかに社員寮の見慣れた木目の天井ではない。畳の匂いもしない。そこではっとして敦は寝そべっていた床から飛び起きる。
    「此処……何処だ!?」
     見渡す限り白一色の手狭な部屋。出入口らしきものはドアが一つ。
    「はぁい敦君、やっとお目覚めかい?」
     太宰の声がしたので傍らを振り仰ぐと、何時ものコートを纏った痩身が其処に立っていた。
    「太宰さん……何なんですか、此処。確か僕達、街を歩いていた筈じゃ」
    「それがねぇ、私にもわからないんだ。私も突然背後から薬を嗅がされたと思ったら此処に放り込まれてたから」
     あっちを見給え、と敦が太宰の指差す方向を見ると、ドアの上に『お互いに相手が自分の何処が一番好きか当てられないと出られない部屋』と書かれている。
    「……えぇ~?」
     敦は理解が追いつかない。ただ真っ先に思いついたのは太宰の異能だった。
    「そうだ。太宰さんの異能力ならこんな変な部屋、触るだけで――」
    「もう試したけど駄目だったよ。この部屋は異能で造られたものじゃない。それに見て、あの監視カメラ」
     部屋の一角の天井近くに監視カメラがある。それは小さな赤いランプを灯して此方を見ている。
    「……誰かが見張ってるってことですか?」
    「そ。……何処の酔狂な人間だろうねぇ。君と私を二人こんな部屋に放り込むなんて。
     まあ私達の仲を知っているストーカーもどきだと思うけど」
     そこで太宰は言葉を切り、敦に視線をやった。
    「まあ何にせよ、あのカメラの向こうで見ている人間が納得する行動を取らないと鍵は開かないんじゃないかな」
     敦は頭を抱えた。太宰もコートのポケットに手を突っ込んだまま監視カメラを睨みつけている。
    「僕、太宰さんがなんで僕を好きでいてくれるのか未だに不思議なんですけど……」
     僕は僕の事が嫌いだ。見栄えはぱっとしないし、中身は弱くて甘ったれで。
    「私だって君が私の何処を一番好きなのかわからないよ。強いて言うなら顔かな? って思うくらいで」
     そこで部屋の中に『不正解』と云わんばかりのブザー音が鳴り響く。敦はがっくりと肩を落とした。
    「顔も好きですけど一番ではないですよ……本当に何なんだこの部屋……」
    「んー、じゃあ目を離すと死んでしまいそうで放っておけないところ!」
     再びのブザー音。
     二人はお互いの顔を見つめると溜息をついた。これは長期戦になりそうだ。そう敦が思って俯いた瞬間、太宰が珍しく苛立ったように舌打ちを響かせた。
    「敦君。虎になれ。異能じゃないなら物理で破壊するまでだ」
     監視カメラを睨む横顔、そのこめかみに青筋が見えるのは気のせいではない。
    「あのカメラの向こうに居る奴、私達二人で死ぬ程後悔させてやろうじゃあないか」
     ねえ? そう目が笑っていない笑顔が云う。敦は神妙な顔でひとつ頷くと眩く蒼い光を纏って大きな白虎へと変身する。そして雷の如き轟く咆吼と共に、ドアをその鋭い爪で切り裂いたのだった――。
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    高間晴

    DONEお題箱より頂いた、「ひたすらモさんを褒めちぎるチェズ」。
    なんか手違いで褒めるというよりは好きなところを挙げていますがご容赦ください。
    ■このあと美味しくいただきました。


     チェズレイは目的のためならかける手間を惜しまない男だ、とモクマは思う。
     ふらりと出かけ、数時間ほどでセーフハウスに帰ってきたチェズレイを玄関で出迎える。その手にはケーキが入っているらしき箱と茶色の紙袋があった。甘いものに目のないモクマは嬉しそうに笑う。
    「チェズレイ。それお土産? ケーキ?」
    「タルトです。苺が旬なのも今のうちですし、買ってきました。一緒に食べましょう」
     そう言いながらキッチンのダイニングテーブルに箱と紙袋を置く。待ちきれずにモクマが箱を開けてみると、たっぷりの真っ赤な苺がクリームの上に乗ったタルトが二切れ入っている。テーブルに手をついて箱を覗き込みながらモクマはお伺いを立てる。
    「あ、おじさんコーヒー淹れよっか? タルト甘いだろうからブラックで――」
    「いえ、クリームを使ったタルトに合わせるなら油分のあるコーヒーより、口の中がさっぱりするストレートの紅茶ですね」
     それを聞いてモクマは首を傾げる。紅茶。コーヒー豆ならあったけど、茶葉なんてなかったはずだ。そこで隣に置かれている紙袋に目が行く。チェズレイはその中からアルミの小 2964

    高間晴

    DONEチェズモクワンライ「ダンス」。
    酔っ払ってジターバグを踊る二人。
    ■ジターバグ


    「モクマさん、私と踊っていただけますか?」
     リビングのソファで晩酌をしていたモクマの横顔を見ながら、隣でチェズレイは言った。突然のお誘いに、モクマはぐい呑みを手にしたままぽかんと口を開ける。
    「踊る、って……」
    「社交ダンスです。アルコールが回ったせいか、いささか興が乗りましたので――少々お付き合いいただけないかと」
     そう言いながらチェズレイは左目の花をたゆませて微笑んだ。モクマは、その顔でお願いされると弱いんだよな、ともう何度目かになる心の声に正直に従うことにする。
    「いいけど、おじさんそういうのやったことないよ?」
    「大丈夫ですよ。仮にもショーマン。少し手ほどきして差し上げれば、すぐに踊れるようになるかと」
     そうチェズレイが言って立ち上がるとモクマの手を引く。飲みかけのままでぐい呑みをテーブルに置くと、引っ張られるままにモクマは立ち上がった。
     少しスペースの空いたリビングの片隅に連れて行かれる。
    「何、踊るの?」
     社交ダンスと一口に言ったって、タンゴやワルツ、その他色々あるのだということくらいはモクマも知っている。
    「そうですね、初心者でも比較的踊りやす 1612