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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太のつもりで書いてたんだけど逆にしか見えねえ……
    字数はもう800字のルールを守るのは諦めました。

    ##文スト

    うれし涙 休日。敦と太宰は二人で海の見える公園へ来ていた。辺りを吹く潮風はもう夏のように涼やかではなく、少し肌寒いくらいである。
     公園の入口近く。自販機を見つけた敦は笑うと、指で示した。
    「太宰さん、喉渇きません? 何か飲みます?」
    「ああ、私は珈琲がいいな。温かいやつ」
     敦は「はい!」と満面の笑顔で頷いて、自販機へと駆け寄っていく。それを横目で見ながら、太宰は近くのベンチへ腰を下ろす。背もたれに寄りかかると、周囲を見渡した。公園は恋人たちや家族連れの姿で賑わっている。奥の方にはクレープのキッチンカーも来ていて、年若い女性たちの黄色い声が響いている。
     ――たまにはこういうのもいいなぁ。
     太宰の頭に去来するのは過去に関係を持ったことがある女性たち。彼女らとデートでこんな処に来る、なんて無かったことだ。
     白い漣を立てる水平線をぼうっと見ていたら、頬に何か少し熱い物が触れた。視線を横にやれば、敦が缶の珈琲を太宰の頬に押し当てていた。悪戯っ子のように笑うその笑顔が愛しくて、太宰は珈琲を受け取りながらその額を指で軽く小突いた。「あいてっ」と敦は額を押さえてまた笑う。
    「敦君。こういうのは暑い夏場に冷たい物でやるんだよ」
    「そうなんですか? じゃあ来年の夏にやりますね」
     そう云って敦は太宰の隣に腰を下ろす。それから自分の分のメロンソーダの缶を開けた。ぷしゅっと小気味好い炭酸の音が弾ける。太宰も珈琲のプルタブを開けると、口をつけた。特有の香ばしい匂いと苦味を含んだ甘い味がする。温かい。一口飲んで深い深い溜息をついた。
    「いや~……長閑だねえ」
    「本当ですねぇ」
     二人の言葉には実感がこもっている。少し前まで組合の異能力者たちと戦っていたのが嘘みたいだ。だが敦は確実にあの時、このヨコハマを守った一番の功労者でもある。
     そこで二人の前方十メートルくらいの処。走っていた三、四歳くらいの男の子が敷石に足を引っ掛けて転んだ。予想通りにわんわんと泣き始めるので、敦は思わずベンチから腰を浮かせる。その手首を太宰が掴んで止めた。
    「よく見なよ、敦君」
    「えっ?」
     敦が太宰を振り返った瞬間だった。すぐに父親らしき大人が駆け寄ってきて子供を抱き上げた。「お前は強い男の子だろう? ほら、泣かない泣かない」と涙を拭ってあやすのを見て、敦は再びベンチに腰を落ち着けた。
    「そうかぁ……普通の子供にはああやって守ってくれる親がいるんですね」
    「……」
     太宰はそれを聞いても何も云わなかった。彼の発するその言葉の重みが、どれだけの物か推し量ることが出来てしまったから。
    「僕、孤児院にいた頃から泣き虫で……泣くと余計にぶたれるんですけどね。涙って止めようが無いんですよ」
     敦の語り口は至って穏やかで、逆に太宰の心がざわついた。
    「僕、涙には限界量があるんだろうと思い込んで、その昔に夜中じゅうずっと泣いてたことが有りました。
     今いっぱい泣いておけば明日泣かずに済む、余計にぶたれずに済むって。
     ――でも、そんな訳ないじゃないですか」
    「敦君」
     堪らず太宰は手を伸ばすと、敦の手を握った。冷たい缶ジュースを持っていたせいか、それは少し冷たい。二人の視線がぶつかり合う。敦の方は少し戸惑った様子だ。
    「君はああいう『普通の家族』をも救った。君がいなければ、君のような孤児が増えていたかも知れないんだから。
     ……少なくとも、それは誇っていい事だよ」
     太宰の言葉に、じわりと敦の瞳が涙の膜を浮かべる。それは朝焼けに輝く白露のようで、目が離せない。透明な膜が重力に従って下の目蓋に溜まると、それはやがて頬へと流れ出す。敦は、ひとすじの涙とともに「はい」と微笑んだ。
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