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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。サボテンとヒマワリ。

    ##文スト
    #敦太
    dunta

    仙人掌と向日葵 朝に目を覚ました太宰は、歯を磨きながら何とはなしにテレビを見る。退屈な朝のニュース。そうしてふとテレビ台の上に置かれた小さなサボテンの鉢に目をやると、あ、と小さく声を漏らした。
    「……枯らしちゃった……」
     小さな小さな丸いサボテンは、黄色くなって萎れた蜜柑のようになってしまっている。

    「えっ、太宰さんってば、サボテン枯らしちゃったんですか?」
     探偵社のデスクで敦が資料をまとめながら、目を丸くして云った。
     もとはといえば、あれは敦と二人で雑貨屋に行った際に敦が買ってくれたもの。なので、太宰が素直に枯らしてしまったと伝えたらこの反応である。
    「サボテンなんて枯らす方が難しいと思うんですけど」
     PCを立ち上げながら、太宰はしょんぼりした様子で敦に謝る。
    「ごめんね。何かの世話をするなんて私にはやっぱり向いてなかったみたいだ」
    「僕は構いませんけど……
     ――あ、国木田さん。頼まれてた資料できました」
     敦は国木田に資料を渡しに行って、戻ってくるとデスクに座った。PCの画面を見つめたままどこか寂しそうにぼんやりしている太宰を見て、敦は声をかける。
    「そんなに落ち込まないでくださいよ」
    「だって、せっかく敦君がくれたものなのに」
     少し唇を尖らせてそう云うと、敦は話題を変えようと思ったのか、こう切り出した。
    「――そういえばですね、僕、孤児院時代に向日葵を育てていたことがあるんです」
      ちら、と太宰の視線が敦を向く。敦は続けた。
    「普通に水をあげていたらいつの間にか、孤児院で一番背の高い向日葵が咲きました」
     それでも院長先生は褒めてはくれませんでしたけど。そう括ると、太宰は腕を伸ばして敦の頭をくしゃくしゃに撫でた。
    「だ、太宰さん」
    「敦君はすごいね。何かの世話をできるってことはそういう才能があるってことだ」
     そこで太宰は心の中で思う。表では自分が敦の面倒を見ているように見えるだろうが、私生活ではすっかり敦に色々頼っていることを。
     少し乱れた髪を手櫛で元に戻そうとしている敦を、太宰は微笑んで見つめていた。
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    ▶︎古井◀︎

    DONE横書きブラウザ読み用!
    猫に出会ったり思い出のはなしをしたりするチェモのはなし
     やや肌寒さの残る春先。早朝の閑静な公園には、ふたりぶんの軽快な足音が響いていた。
     現在、チェズレイとモクマが居を構えているこの国は、直近に身を置いていた数々の国の中でも頭一つ飛び抜けて治安が良い。借り受けたセーフハウスで悪党なりに悪巧みをしつつも優雅な暮らしをしていた二人が、住居のほど近くにあるこの公園で早朝ランをするようになって、早数週間。
     毎朝、公園の外周をふたりで一時間ほど走ったり、ストレッチをしたり。そうするうちに、お互いに何も言わずとも自然と合うようになった走行ペースが、きっちりふたりの中間点をとっていた。
     数歩先で軽々と遊歩道を蹴るモクマに、チェズレイは平然を装いながら素知らぬふりでついていく。『仕事』が無い限りはともに同じ時間、同じような距離を走っているはずなのに、基礎体力の差なのかいつもチェズレイばかり、先に息が上がってしまう。
     今日だってそうだった。そしれこれもまたいつも通り、前方を走っている相棒は、首だけで振り返りながらチェズレイをちらりと見遣っただけで、仮面の下に丁寧に押し隠した疲労をあっさりと感じ取ってしまい、何も言わずにゆったりペースを落とした。
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