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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。鍋が美味しい季節です。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    すき焼き 敦と太宰は日用品の買い出しに出ている。
     太宰が台所用品の売り場を見回しながら歩いている。と、目に留まったそれに思わず感嘆の声をもらす。
    「あ、これいいな~。ねえ敦君、これ買おう?」
    「なんですか?」
     敦はカートを押しながら後ろからついてきた。太宰が嬉しそうな顔で指差すのは、底が浅めの平たい鍋だ。
    「すき焼き用の鍋。
     ほら、私って今まで一人暮らしだったから、鍋なんてなかなか出来なくてさあ」
    「いいですね。僕も鍋とかそういう料理ほとんど食べたことなくて」
     ふたりとも納得して鍋を買うと、家路を辿った。
     帰り道に、敦がなにか云いたげにしているのに気づくと、太宰はその頬をつつく。
    「どうしたんだい?」
    「いえ……買っちゃったのはいいんですけど、すき焼きってどんな食べ物ですか?」
     彼が暮らした孤児院でそんなものが食卓に上るはずもない。太宰は笑顔で答えた。
    「牛肉とか豆腐を甘じょっぱく煮た料理だよ。熱いから溶いた生卵につけて食べるんだ」
    「わあ……なんですかそれ。すごく美味しそう」
     敦は目をきらきらさせている。太宰は愛おしくなってその頭をくしゃくしゃに撫でた。「子供扱いしないでください」と非難の声が飛んでくる。
    「よし、そんなに食べたいなら今夜は早速すき焼きにしよう」
     その提案に敦は一も二もなく頷いて、二人は一旦家に荷物を置き、スーパーですき焼きの材料を買うことにした。
    「ええと、牛肉と豆腐でしたっけ。あとはなにか入れるものあります?」
    「んー、なんだっけ」
     売り場で太宰は首を傾げて考え込んでいる。
    「味付けとかもどうしたら……」
    「えーとね、汁は茶色くて甘じょっぱいから、コーラに塩入れてるのかな?」
     それを聞いて敦は、自分の携帯ですき焼きのレシピを調べ始めた。
    「――他に入れるのは葱としらたきと椎茸くらい。味付けはめんつゆでもできそうです」
     敦の指示でてきぱきとカゴに食材を入れて会計を済ませた。
     日の暮れた道は冷たい風が吹いているが、これから家に帰れば二人で温かい鍋をつつくのだ。
    「そんなにすき焼きが楽しみなのかい、敦君」
    「生まれて初めて食べるすき焼きが、太宰さんと一緒で嬉しいんです」
     その言葉に虚を突かれた太宰は、手で口元を覆ってしまう。頬に熱が上るのが分かった。
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    DOODLEチェズモク800字。嫉妬するチェズ。■わたしの一番星


     二人の住むセーフハウスにはグランドピアノが置かれた部屋がある。今日もチェズレイが一曲弾き終わって、黙って傍の椅子でそれを聴いていたモクマは拍手をした。応えるように立ち上がって軽く一礼する。
    「ところでモクマさん。あなたも弾いてみませんか?」
    「えっ、俺?」
     驚いたように自分を指差すモクマを、ピアノ前の椅子に座るよう促す。困ったな、なんて言いながら満更でもなさそうだ。そんな様子に少し期待してしまう。
     モクマは確かめるように、両手の指を鍵盤にそっと乗せる。そうして指先で鍵盤をゆっくり押し下げて弾き始めた。
     ――きらきら星だ。
     多少調子外れながらも、鍵盤を間違えずに一分弱の曲を弾いてみせた。
    「――はい。おじさんのピアノの十八番でした」
     仕向けておいてなんだが、チェズレイは正直驚いていた。きっと片手を使って弾くのがやっとだろうと思っていたから。それと同時に、興味が湧いた。
    「どこで、覚えたんですか」
    「あーね。おじさん二十年くらいあちこち放浪してたでしょ? いつだったかバーで雑用の仕事してる時に、そこでピアノ弾いてたお姉さんに教えてもらったの」
     若い頃のモ 871