Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    しんした

    @amz2bk
    主に七灰。
    文字のみです。
    原稿進捗とかただの小ネタ、書き上げられるかわからなさそうなものをあげたりします。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 67

    しんした

    ☆quiet follow

    七灰原稿進捗(2021.04.25頒布予定の生まれ変わり本)
    気に入った部分を細切れにあげていく予定。
    上から新しい→古い順になってます。
    七海視点
    2021.03.01〜



    また巡り会えた。やっと思い出せた。
    二度と失いたくない。絶対、放したくない。
    「灰原、頼むから」
    ──もう、どこにも行かないでくれ。
    七海がそう囁くと、灰原は一瞬大きく目を見開いた。
    濡れた頬を拭い、そこへ静かに唇を寄せる。黒い瞳からまた涙の雫がこぼれたが、七海はそのまま、薄く開いていた灰原の唇をゆっくりと塞いだ。

    2021.03.11




    彼は暗く澱んだ世界で見つけた、唯一の明かりのようだった。
    ハキハキとよく通る声で名前を呼ばれると、頬が勝手に緩んでいく。くるくると表情を変える瞳に見つめられると、胸の奥があたたかくなる。大きな口から発せられる言葉はいつも前向きで、自然と背中を押されていた。
    彼のそばにいると、世界が鮮やかに見えた。辛さや苦しさが、少し楽になる気がした。
    いつの間にか特別になった。誰よりも大切にしたいと思った。ずっと共にありたいと望むようになった。

    2021.03.07




    メッセージだけでも嬉しいというのに、わざわざ写真まで送ってくれたことに胸の奥があたたかくなる。七海は手早く『綺麗に咲きそうだな。明日でも大丈夫だけど灰原はどうだ?』と送った。
    本当は今すぐにでもしたい。というよりも、今すぐ灰原に会いたい。
    流石にそんなことは言えないが、七海は灰原からの返事を内心そわそわしながら待っていた。

    2021.03.06




    最初、声をかけてきたのは灰原だ。次に出会った時もそうだった。
    きっと、灰原が人違いをしなければ、自分は今こんな風に過ごせていない。ならば、名前の同じ『昔の友だち』に感謝しなければならないのだろう。
    しかし、灰原が咄嗟に呼び止めてしまうほどの仲だったのかと考えた時、ほんの少しだけ『ななみ』が羨ましくなった。
    灰原と『ななみ』がどんな風に過ごしていたのか、もちろん知らない。そもそも『ななみ』という人物が本当にいるのかも分からない。
    気にならないと言えば、嘘になる。ただ、そのことを灰原へ聞いてみるのは、何故かいけないような気がしていた。

    2021.03.03




    灰原とする何でもない話に苦を感じたことはなく、むしろ灰原の口から知らない話題を聞くことは楽しくて、灰原自身についての話を聞けることは嬉しく感じた。
    こんなに誰かと親しくしたことは初めてだった。
    時間を共有することが心地よかった。

    2021.03.02




    結局、彼が自分の名前を知っていた理由は分からずじまいになってしまった。しかしそんなことよりも、これをどうしようかと七海は手のひらに乗ったままの薄桃色の花びらを見つめた。
    ああ、せっかくなら彼の名前を聞いておけばよかった。
    あんな出会い、そうないのだから。
    今度は迷わずたどり着いた講義室で、桜の花びらをちぎったノートに挟んでいた時ふとそう思ったが、講義開始のチャイムで思考はかき消されていた。

    2021.03.01
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖👏👏💕☺💘💘💘💕😭💖🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works