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    しんした

    @amz2bk
    主に七灰。
    文字のみです。
    原稿進捗とかただの小ネタ、書き上げられるかわからなさそうなものをあげたりします。

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    しんした

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    七灰家族パロ。子煩悩な七海視点。生存if30代前半くらい。一級術師の七海、呪専教員の灰原くん。灰原くんが産んだお子(双子の男児)がいます。灰原くん似→建志、七海似→雄志。お子たちとの絡み多めですが、最後はふーふでラブラブしてるだけ。※全部幻覚です。

    七灰家族 みんな寂しんぼ数少ない一級術師ということもあり、一週間家を空けることは珍しくなかった。
    地方への出張が重なり、一か月間家に帰れないことも度々。しかし、灰原と結婚し、数年後双子を授かってからは極力家を空ける時間を少なくしようと働き方を見直した。
    呪術師という職種で、月曜から金曜という固定勤務は難しい。だが、それまでまちまちだった週休は必ず二日確保し、なるべく連休になるよう調整した。事前に予定されていた任務以外にも深夜早朝に呼び出されることももちろんあったが、子どもたちへ「おはよう」か「おやすみ」のどちらかを言える時間にはできる限り家にいるように心掛けた。
    「ただいま」
    ふたつ並んだベビーベッドを覗き込んでそう話かける瞬間、胸の中は幸福に満ち溢れていた。
    まだ自力で起き上がることも喋ることもできなかった頃、子どもたちは灰原によく似たまん丸な瞳をくりくりとさせて不思議そうにじっとこちらを見つめてきた。それが、いつしかバタバタと手足を大きく動かすようになり、懸命に寝返って向きを変えたり、起き上がって手を伸ばすようになった。
    ベビーベッドが狭くなると、双子の定位置はリビングの一角に設置したサークルの中へ移動した。手洗いうがいを終えて真っ直ぐサークルへ向かうと、それまで遊んでいるのか喧嘩しているのか分からないほど揉みくちゃになっていた子どもたちは、競い合うようにハイハイでこちらへ向かってくれる。転ぶことなく歩くようになってからは、脚によじ登ってくる子どもたちのどちらを先に抱っこするのかという双子ならではの課題にいつも悩まされた。結局、唸ったすえに二人まとめて腕の中に閉じ込めるのも毎回のことだった。
    だが、そんな熱烈なお出迎えも、子どもたちが大きくなるにつれて多少落ち着いてくるものだ。
    新年度が始まり幼稚園の年長へ上がると、子どもたちは急にお兄ちゃんぶるようになった。園の中で一番歳上になったことや下のクラスの子との関わりが増えたことが彼らの心をくすぐったらしい。家でもなにかと自分たちだけでやりたがり、ほんの数ヶ月前のようにべったりと甘えてはこなくなった。
    背伸びしすぎている感は否めないが、我が子の成長は喜ばしいことではある。ほんの少しの寂しさを感じつつ、子供部屋で寝支度をする子どもたちの様子をそっと扉の隙間から眺めていると「建人の方が甘えただね」と灰原に笑われた。
    タイミングが良いのか悪いのか、その年の繫忙期は例年よりも随分と早く訪れた。桜が完全に散る前から任務は途絶えなくなり、なるべく避けていた地方への出張も連続で入る始末だった。
    「「建人パパおしごとがんばってね!」」
    自分たちだけで幼稚園の準備を終えた二人に元気よく玄関で見送られたのはもう一週間。こんなにも長い間家へ帰れなかったのは子どもたちが生まれてから初めてのことで、二日も経たないうちに寂しさで胸がざわついた。スケジュールの後半にもなると、灰原が送ってくれた二人の写真や音声メッセージで気持ちを紛らわすほどだった。
    こんな自分に情けなさが込み上げる。きっと子どもたちの方がしっかりやっているだろうと苦笑がこぼれた。
    うちへ帰ったら、まだまだ小さな体を抱き上げて、お日様の匂いがする髪へ鼻を埋めて、まんまるなほっぺたに頬ずりをしたい。お髭がチクチクすると言われないようにまずはお風呂へ入った方がいいとは思うが、それまで我慢できるか正直自信はなかった。
    パパは寂しがりなんだよ。そう主張すれば子どもたちに呆れられるかもしれない。だが、大切な宝物を前にすると、頼り甲斐のある親でありたいという意地はどこかへ消え去ってしまうのだ。


    スケジュールをこなし、やっと自宅へ帰り着いた頃にはもうすっかり夜は更けっていた。今日帰ることは灰原に連絡しているが、子どもたちの就寝時間はとっくの昔に過ぎている。可愛い我が子に「ただいま」を言えるのは明日の朝だろう。しかし、玄関を開けた瞬間、廊下の向こうから小さな怪獣たちが駆け寄ってきた。
    「「建人パパー!!」」
    呆然としていると、お揃いのパジャマ姿の子どもたちが思い切り脚に抱きついてきた。
    「おかえり!」
    「おしごとおつかれさまー!」
    すぐに抱き上げたい気持ちを押し殺し、手を洗うからとまとわりつく二人をいなして廊下を進んだ。
    「まだ寝ていなかったのか?」
    「建人パパが帰るまで起きとく!って聞かなかったんだよ」
    困ったように眉を寄せた灰原がリビングから出てくる。
    「土曜日だから許したけど」
    「そうか。大変だっただろう」
    「まあねぇ。でも、それ以外はずっといい子にしてたから。ご褒美、みたいな?」
    それはどちらに対してのご褒美なのだろう。そんな疑問もお見通しなのか、灰原は小さく笑って見上げてきた。
    「ほら!二人ともなんて約束だった?」
    「「建人パパは先におふろ!」」
    「二人はどうするの?」
    「「ベッドで待ってる!」」
    「そうだね!じゃあ準備してください!よーいドン!」
    それまで脚にしがみついていた二人は、灰原の掛け声に元気よく返事をして子供部屋へ駆けていった。
    「ごめんね。ねんねは建人パパがいいって言うからさ。たぶん建人がお風呂入ってる間に寝ちゃうと思うから、上がったらちょっと部屋覗いてあげて」
    寝る気がある子たちの寝かしつけくらい、なんてことはない。ここしばらく誘っても断られていたのだからむしろ嬉しい。
    「わかった」
    「ありがと」
    ほっと表情を緩めた灰原の唇を思わず塞ぎたくなったが「手洗いうがい」と、ぴしゃりと静止された。
    お風呂の準備はばっちり整っていたが、適温で張られた湯を堪能したい気持ちよりも眠気と戦いながら自分を待つ子どもたちの元へ行きたい気持ちの方が勝る。一通り体を綺麗にし、朝より伸びていた髭も丁寧に剃った。
    ドライヤーもそこそこに、完全には閉まっていない子供部屋の扉にそっと手をかけた。
    「あ!建人パパ!」
    「こっちこっち!」
    常夜灯しかついていない薄暗い部屋の中、二段ベッドの下の段に二人して潜っていた子どもたちは慌てて起き上がって掛け布団を捲った。
    「おまたせ」
    「いいよー!」
    「建人パパの場所あけといた!」
    二段ベッドは大人でも横になれるサイズだが、すでに幼稚園児二人と平均よりかなり大きい大人一人が入ると窮屈で仕方がない。しかし、子どもたちはぎゅうぎゅうと苦しいくらいにくっ付いて、この一週間の出来事を口々に話した。
    「あのね、今日は年中の子とおさんぽしたんだよ!ぼく小さい子と手つないで歩いたんだ!」
    「ぼくもね、一緒に横断歩道わたったよ!ちゃんとみぎひだり見たよ!」
    「そうか。二人とも偉いな。すっかりお兄ちゃんだ」
    順番に頭を撫でると、子どもたちは得意げな顔をして笑った。だが、手前にいる建志がじわじわ眉を下げたかと思うと、ぎゅっとしがみついてきた。それに続くように雄志も精一杯手を伸ばしてくる。
    「どうした?」
    ふたりまとめて腕の中に閉じ込めたが、子どもたちはただぐりぐりと顔を押しつけるだけだ。
    寂しかった。
    口には出していないが、そう全身で訴えているのをヒシヒシと感じる。そんないじらしさに胸が張り裂けそうになった。
    「パパも寂しかったよ」
    そんなこと言っていないと主張しているのか、二人とも何度も首を横に振る。肝心なところでどこか遠慮してしまうのは、きっと灰原に似たのだろう。自然と苦笑いがこぼれたが、もう何も言わず子どもたちの背中を優しくさすり続けた。
    さほど時間が経たないうちに穏やかな寝息を漏らした二人へ布団を掛けて、そっと子供部屋をあとにした。リビングへ向かうと灰原はダイニングテーブルに突っ伏して眠っていた。テーブルの上には箸とお椀があり、キッチンのコンロにはまだ温かい鍋が置いてある。夜食を用意してくれていたのだと容易に分かった。
    最後の任務の前に軽く夕食は食べただけで、正直腹は空いている。だが、さっきの子どもたちのいじらしさや、こうした灰原の優しさで胸がいっぱいになっていく。
    たまらず、眠る灰原を後ろから抱き締めた。性格を表しているような真っ直ぐな黒髪へ鼻を埋めると、子どもたちと同じお日様の匂いが鼻孔を抜ける。しばらくそのままでいると、背中の重みに気付いたのか灰原が小さく身じろいだ。
    「けんと……?二人は寝たの?」
    「ああ」
    「早かったね」
    「眠いのに頑張ってたんだな」
    「建人が帰ってくるって昼間からはしゃいでたし」
    「そうだったのか」
    「うん。ご飯と豚汁あるけど食べる?」
    「少しだけもらおうかな」
    「はーい、わかりました。甘えんぼの建人くん」
    コンロの前に立った灰原がくるりと顔だけこちらへ向けた。甘えんぼなんて言われれば、普段は少しくらい不服を表に出す。しかし、灰原が目を覚ましてからこうしてキッチンへ移動しても後ろから抱き締める腕を外していないのだから、微笑む灰原をただ黙って見つめることしかできなかった。
    「お疲れ様。頑張ったね」
    お玉から手を離した灰原が優しく頭を撫でてくれる。ぎゅうっ、と腕に力を込めると灰原は声を漏らして笑った。
    「きみや子どもたちとこんなに離れたのは久しぶりだったから」
    「うん。そうだね」
    「でも、送ってくれた音声メッセージだと、子どもたちはすごくしっかりしていて」
    「建人パパが頑張ってるから僕らも頑張る!って張り切ってたからだよ。お仕事頑張る建人パパかっこいい、って」
    「……そうだったのか」
    この一週間で自分がどれほど子どもたちに支えられていたのかを実感した。別に子離れなんてまだまだ先のことだと思うが、かっこいいパパと出来るだけ長く思ってもらえるようにしっかりしたい。全てお見通しなのか、優しく髪を梳いていた灰原の手のひらがくしゃくしゃと乱雑に動いた。
    「さっき、寝かしつける時、口には出さなかったけど二人とも寂しいって言っていた気がしたよ」
    「そりゃあね。寂しいに決まってるじゃん。だーい好きな建人パパがいないんだから……それにね、」
    腕の中にいる灰原がもぞもぞと身体の向きを変える。首筋へ腕を回した灰原は、一瞬息が止まるくらいの力を込めて抱きついてきた。
    「僕もすごく寂しかったよ」
    耳元でそう囁かれたと思うと、耳たぶへ柔らかな感触が訪れる。そのまま頬、目尻、鼻梁へと軽いキスをされ、最後はそっと唇を塞がれた。
    「ほんとは帰ってきてすぐ抱きつきたかったし、キスもしたかった」
    「ならあの時止めなかったらよかったんじゃ」
    「頑張って起きてたあの子たちより先に僕が建人を独り占めするとかおかしいじゃん。あの時キスしちゃってたらしばらく建人のこと離したくなくなってたと思うし」
    そう言った灰原は困ったように眉を下げて笑った。昔から周りを振り回しているようできちんと他人のことを見れていた灰原が、そんなことをしないとは自分がよく分かっている。甘えるよりも甘やかす方を優先しがちで、子どもたちを授かってからそれは加速するばかり。そのせきか、こうして気持ちを見せられると思いきり愛したくて仕方なくなる。
    「じゃあ、今から私を独り占めしてくれ。私もそうするから」
    灰原の黒い瞳がまん丸くなったが、返事を聞く前に灰原の唇を噛みつくように塞いだ。触れるだけのキスはそこそこに、ぽってりとした下唇を甘噛みしながら舌先をゆっくり這わす。招くように開いた唇の間から伸びてきた灰原の舌は、熱くて柔らかくてたまらなく気持ちがよかった。
    お互い息が上がるほどのキスをしたのも久々で、それ以上のことは早すぎる繁忙期が始まってから全くなかった。
    黒い瞳はうっすらと濡れていて、抱き上げた身体は熱っぽく、欲の証も存在を示し始めている。
    「夜食、朝でもいいか?」
    「それ夜食じゃないじゃん」
    灰原はクスクスと笑ったが、ぎゅっと首筋へしがみついてきて「じゃあ先に僕を食べて?」と甘く囁いた。



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