Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    bksinto

    @bksinto

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    bksinto

    ☆quiet follow

    乱と鯰尾が貰い事故。
    隙あらばすぐイチャイチャする岩膝。

    「ねえ、膝丸さん知ってる?“好き”って気持ちはね、普通は四年しか続かないんだって」
     ――八つ時の事。
     乱藤四郎の言葉に、膝丸は軽く目を見開いた。
    「四年――それは随分と、短いな……」
    「でしょ?だから四年以上も“好き”が続いてるなら、それは何度も何度も惚れ直してるって事なんだってさ」
    「ああ、なるほど」
    「何かいいなあー。ボクもそういう相手、欲しいなあー」
    「ほう。君ほど魅力的な刀であれば、引く手は数多であろう?その気になれば容易いのでは」
    「本当に?もうー、膝丸さんったら上手なんだから」
    「事実だ」
     ぱっと笑顔を花開かせる様を見て、膝丸は頷いて見せる。見た目は愛らしく、けれどもその本質は刀らしく豪胆でもある。気遣いも細やかだし、彼が望めばいくらでも相手は見つかるだろうと思った。
    「……しかし、そうか……四年、か……」
     自分達のように長く存在する“物”からすれば、ほんの瞬きのような時間である。
     ただ、人の身を得てからはようやく両手の指を超えるかと言ったところ――そこからの年月を考えると。
    「……そうか。確かにこの数年程でも、あいつに惚れ直した回数は、数知れずやも」
    「…………へええ。……ね、そこって、詳しく聞かせて貰っていいやつ?」
    「ん?それは別に――そうだな、例えば……」
     ――例えば、あの大きく無骨な指から生まれる流麗な筆致。手ずから作る香の薫り良さ。
     夏の日、蒼天の背に笑う姿。秋の日、その時期に特別な味覚を収穫した得意げな顔。冬の日、静謐な景色の中で見せる凪いだ表情。春の日、桜にも負けぬ朗らかな姿――ありとあらゆる場面で、とにかく愛おしいと思う瞬間があった。
     ああそうか、と膝丸は思う。
    「そうだな……確かに――些細な瞬間にもあの男に惚れ直す、と言うことを繰り返しているような気がするな……」
    「…………わーお」
     両手を合わせ、乱は静かに「ごちそうさまです」と呟く。今日の八つ時の甘味は一期大福で、それは随分と前に食べ終わったはずだがどうかしたのだろうか、と首を捻る。
    「……お」
     噂をすれば、というやつだろうか。何気なしに向けた屋敷森の方――農具を抱えた岩融が、笊を持った鯰尾らと庭を横切るところだった。
     そう言えば今日は、何か収穫作業をすると言っていたはず。
    (…………そう。ああいう所、も……)
     鋤や桑は重い。体格的な判断ではあるのだろうけれど、岩融は率先してそれらを持つ役割を買って出たに違いない。
     自分の方が向いているから、と笑って。――そして農具に加え、作業が追われば収穫物も纏めて持とうとするのだろう。
     それらの想像で、口元が緩む。思わず声をかけていた。
    「――岩融、」
     今日は生憎の曇り空である。その中で、膝丸の声に素早く振り返り瞬時に破顔したその顔は、快晴の日の陽光にも負けぬ眩しさがあった。
    「――膝丸様。どうされた?」
    「別に……――今日も、良い男だな」
    「……!」
     唐突な言葉だったから、岩融は一瞬だけきょとんと眼を見開いた――そしてすぐ、喜色を浮かべる。
    「……膝丸様こそ、相も変わらずお美しい」
    「ああ」


    「…………お腹いっぱいでくるしいなあ……」
     ぺたりと、乱藤四郎は卓へ突っ伏した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏💯💞💴💞😍💞💞👏👏❤🙏😭👏👏💗💞💖🙏🙏🙏🙏💕💕💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works