廟にて鏡湖派の襲撃から逃げ延びた私たちは、山の外れの廃れた廟で夜を明かすことになった。
周子舒。
この男は実に面白い。
髪は乱れ、口元には髭が残り、衣は血と泥にまみれているのに、その目の静けさと端整な輪郭は、どこか艶めいてさえ見える。
警戒心を剥き出しにして、常に私を疑い、なのにどこか脆い。
何もしない手はない。
「阿絮、寒くないか?」
「……別に」
短く返されても、構わない。
私の距離の詰め方に、こいつはまだ慣れていない。だが、それもまた良い。
「そうか。だが、そのままでは風邪を引くぞ」
私は阿絮の肩に手を伸ばす。ぐっと掴んで、ゆっくりと胸元の襟を緩めた。
「おい、何を——」
「服を乾かすんだ。ほら、焚き火のそばへ」
「……触るな」
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