スパイごっこ with 猫 ヘアフィールド邸のリビング・ルーム。ソファには屋敷の主エードリアンと、今夜の客人ノーマンの姿があった。
「なあ、エードリイ。あの猫の首輪、何かついてないか?」
ワインのグラスを傾けながらソファにもたれていたノーマンが、暖炉の前を歩く猫を顎で指した。黒く柔らかな毛並みの、美しい雌猫だった。
「マダム・グレースのことか?」
エードリアンは読書を中断して本を膝の上に置き、猫をちらと見る。
「首輪の飾りが揺れているだけだろう」
「いや、見ろ。あれはどう見てもマイクか発信器だ。僕の目に狂いはない」
「君は何でもそういうものに見える病気なんじゃないか?」
ノーマンはにやりと笑って立ち上がった。
「尾行してみよう」
「……バカげてる」
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