連れ立って全く、あんたは相変わらずだな。
そう告げるのは、今はなき本丸の初期刀だった山姥切国広が、己の刀剣の後ろで胡座をかいて座り1人綺麗だと呟く元主人を見ながら柔らかく微笑み立ち上がった。
隣に胡座をかいて座る山姥切長義もまたそんな山姥切国広を見ると横に置いてあったバインダーに挟まる紙を見た。
「君の主のようだね。偽物君、行くのか?」
「嗚呼、折角俺を観にはるばる来てくれたからな。次のあの世への御伴は、俺の番だ。
俺が連れて行くさ。」
「それにしても、君達は元の主人を見つける事に関しては、俺達よりも目ざといな。」
「俺達は、初期刀だからな。
いずれあんたも気がつくさ。」
「へぇ、それは俺達に喧嘩を売っていると言うことかな。偽物君」
「こんな時まで喧嘩すんの辞めろにゃ!
他の審神者にも観られてんだから。」
「南泉、短い間だったが世話になった。
次の俺もよろしく頼む!」
「おう!まかせろ!」
山姥切国広は初期の姿から桜吹雪を巻きながら極めの姿になる。
鉢巻をびしっと巻き直すと、嬉しそうに微笑みショーケースを後にした。
綺麗だと呟き興奮気味の元審神者の後を山姥切国広が後ろについて行く。
ひらひらと、手を振る南泉とバインダーに挟まった書類に行き先を書く山姥切長義に振り返り山姥切国広が言った。
「あんたも行かないか?本科。」
「嗚呼確かに俺の主でもある。が今回は行けそうに無いな。依代が無いからね。」
「依代が無い?」
「主は、俺の依代を持っていない様だ。残念だよ。」
「なんだ、そんなことか依代ならあるぞ。本科」
「君の目は、節穴かな?どこに俺の依代があるって?」
「これだ。こっちの俺の御伴の御伴のぬいぐるみでも良いぞ。」
「なんだよ、御伴の御伴って。」
審神者の鞄についていた山姥切国広と山姥切長義の紋が彫られた鍔のキーホルダーを持ち山姥切長義に見せた。南泉はちらりと山姥切長義を見た。怒るかと思えば、呆れた表情をし立ち上がると桜吹雪を纏い極めの姿に変わった。
「今日だけだからな!そんな依代は!大体、御伴の御伴ってなんだよ。嗚呼、後は頼んだよ。次の俺」
よいしょとうさぎのぬいぐるみの山姥切長義が、バインダーを持ち上げ小さな手を挙げると隣にちょこんと座るうさぎのぬいぐるみの山姥切国広にお前は、あっちだよ。と指を刺す。
「任されたよ。君も偽物君も良い旅路になる事を祈ってるよ。」
そうして、人混みに紛れて行く二振りと1人を南泉は目を細めて見送った。
終わり