犬と光世 終代金は、事前に支払い済みだと自本丸の清光が言っていた。光世は、品物を受け取ろうと手を伸ばすと、急におとなしかったおはぎがむくりと立ち上がり、加州清光に目掛けて歩いていった。この時、リードから手を離して居た。光世は一瞬の事に目を見開いた。おはぎが突進でもしたら、ケーキが落ちてしまう!それだけは、なんとか阻止しなければと口から言葉が出る前に加州清光が叫んだ。
「おはぎ!!」
ぴたりと、歩みを止めおはぎは加州清光の前でお座りをした。尻尾を振り顔はしっかり加州清光を見上げている。加州清光から袋を受け取り、光世はリードを掴んだ。
「すまない。俺が、きちんとリードを掴んで居なかったばかりに。」
「いいよ、いいよ。それに、今度ばかりは主の前でカッコ悪い姿は見せたくないからさ。
よしよーし、きちんと待てが出来たじゃんおはぎ」
加州清光がしゃがみ込み、おはぎの顔を撫で頬を両手で包み込む。その様子に、光世はホッとすると、奥の扉から主人がその様子を眺めて居た。
「大丈夫か?清光」
「大丈夫だって!ほら、早く中、戻らないとカラメル焦げちゃうよ。主」
主人に向かって軽く手を張る加州清光を見て、光世は、すまないとまた頭を下げた。
「おはぎはさ、大典太の事凄く好きなんだと思うよ。あんたん所の刀剣男士が、おはぎを散歩させてても大人しくしてるけど、あんたと来てる時は嬉しすぎて、その嬉しさを皆に伝えたいんだと思うんだよね。俺」
加州清光が、しゃがんだまま目を細めて光世を見上げた。
光世は、嬉しくなりはらはらと桜の花弁が散った。おはぎは、後ろを振り向き光世を見上げわんっと、元気に鳴いた。
終