「悪りぃ先生、待たせた、な……」
寂雷の足元に柄の悪い男が三人ほど倒れていることに気づき、左馬刻の声が低く沈む。
「ああ、左馬刻くん。大して待っていませんから、気にしないでいいよ」
「怪我はねぇだろうな」
「ええ」
怪我どころか服装一つ乱れていない事を確認し、左馬刻は倒れている男たちに目を向けた。マイクを持っていないところを見ると腕力でなら寂雷に勝てると思ったのだろうか。
(馬鹿な奴らだ)
完全に気絶している3人の中で一番近いところにいた男の胸ぐらを掴み上げようとしたところで、「左馬刻くん」と穏やかな声が響いた。
「恥ずかしながら、お腹が空いてしまってね。早く、帰らないかい?」
寂雷の視線に“色”を感じ、左馬刻は倒れている男達の事が完全に頭から消えた。細い腰に手を回すと抵抗なくこちらに寄り添われ、腹の底がむず痒くなる。
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