銀高ss⑦-2初めは、銀時の洗濯物が紛れていた時だった。
銀時の家での泊まりから帰宅して荷解きをしていると、自分のものではないスポーツタオルが入っていた。
枕に敷いているやつだ。
何度も寝転んだことのあるベッドで使われていたから見覚えがある。明日学校で返すか。そう思ったのに。ほんとうに、返すつもりだったのに。
泊まった2日間、同じ家で同じものを食べて、一緒に風呂に入った。そして、溶けてひとつの生き物になるくらい、素肌を重ねて。終いには触れる手がしつこいから蹴飛ばしたくらいなのに。
「………。」
静寂に包まれた自宅に帰ってきて、銀八と離れたから。自分より少し大きな体が、温もりが、恋しくなったなんて。
ぐるぐると考えて、迷った末に、タオルに鼻を近づけて、その香りをいっぱいに吸い込んだ。
知ってるジャンプーと、洗剤と。ちょっと煙草の匂い。銀八の、匂い。
こんな変態みたいなこと、だめなのに。でも心はすっかり満たされてしまった。離れているのに、銀八に包まれているみたいだ。
それから、気が済むまでタオルを抱きしめて。これを主へ返そうという気が自分の中から消えていることに気づいた。
泊まりに行くと、毎回ではないにしろ何かしらが混ざることがある。ハンカチから、パジャマ、稀にネクタイ。
ハンカチは一つくらい失くなってもあいつは気づきそうもない。このパジャマも、季節外れだから仕舞おうかなと言ってたから、いいか…。ネクタイは、流石に返さないと。
あの日返さなかったスポーツタオルは今も枕の横にあって、就寝前に抱いたりしている。こんな所あいつに見られたらなんて言われるか。どうかあいつが一生バカのまま気づきませんように。返さなくても良くなりますようにと、こっそり祈った。
こうやって、いつの間にか返せない物が増えていった。
「ええ……なにそれ。これ夢?ドッキリ?」
「……変な真似して悪かった。色々探させたのも。」
ぽかんと口を開ける銀八は、悪いけど間抜けに見えた。
ついにバレてしまった。本当に、さっさと返せばよかった。銀八はどう思っただろうか。変態、とか気持ち悪いとか、罵るかもしれない。だけどやった事は事実で。一切の言い逃れはできなくて。ただただ、俯くしかできなかった。
「セーターも高杉だったのか。あれ他とは別にしといたのに、よく分かったな。」
「自分で捨てようかなって呟いてたろ。……捨てるなら、いいかと思って。」
あの灰色のセーターも、自室に保管してある。着古してほつれてる部分もあったけど触り心地は良かった。何度も着ただけあって、その、匂いも強かったというか……点数、高かった。
「点数て。しかし高杉くんにそんな性癖があったとはね。先生びっくり。」
「なんとでも言え…言い訳は、しない。」
「因みにさ、パンツ、ナニに使ったの?」
「あ、あれは使ってねえ!だから今日返そうと思って、持ってきた!ワイシャツだって!」
そこまで変態への道は突き進んでない。用があったのだって、匂いだけだ。身を乗り出して否定するが、ニヤニヤと銀八は笑うだけだった。
「ありゃ、残念。なんか荷物多いなと思ったけど、なるほど、溜め込んだもん持ってきてたのね。」
「悪かったよ。」
「いーや。怒ってねえよ。巣作りするハムスターみたいでかーわい。しかし知らなかったなぁ。先生のこと、そんなにだ〜〜い好きだったなんて。」
「…ぅ。」
ニヤニヤ。緩みきったアホ面にだんだん腹が立ってくる。でも俺に反抗する権利はなくて。やめときゃよかった、と後悔を溜息で吐き出した。
随分落ち込んで見えたのだろうか。くしゃりと髪をかき混ぜられる。
「本当は一緒に住めたらいいんだけど。」
「今は、無理だろ。分かってる。」
教師と生徒。主に社会的な障害は多い。それを理解しているからこそ、毎日会っていても積極的には出れない。自分の性分もあるけれど。
だからこそ、相手の物を溜め込むなんてことをしてしまった。表しきれない気持ちをぶつけていたのかもしれない。
「おいで。」
両手を広げた銀八。ここは素直に腕の中へ。ぎゅうと包まれて、居心地の良さを実感する。やっぱり、ここが、いい。
「寂しい思いさせてごめんな。これからはも〜っと構ってやるから。」
「いや、鬱陶しいのはいい。」
「えっ、うそ〜…」
「タオルとかも、返す。一応洗うから、明後日くらいに。」
「持ってていいよ。さみしくないように。ナニに使ってもいいよ。あ、その時は報告お願いします。でも、一個お願い。」
なに、と言う前に唇を塞がれる。入り込んだ舌に上顎を擦られて、すっかり躾けられている体はあっという間に力を失う。
「最後は、俺のところに帰ってきて。かわいいかわいい、俺の高杉くん。」
返事の代わりに、唾液で濡れた唇を舐めてやった。
[おまけ]
日曜日の夕方。そろそろ泊りの時間も終わりだ。少しだが荷造りをして、後は一緒にコーヒーでも飲んで、それから駅まで送ってもらって。
「あ、高杉くん。これこれ。忘れ物。」
「?」
はい、と銀八が何やら詰まったビニール袋を差し出してきた。
受け取って、中を覗き込むと、布が見えた。
「俺のパンツ詰め合わせです。こっちの袋に使用済みも入ってます。使ったら連絡ください。洗わなくていいからね。先生も次使うか、ら、いだだだだだ!!ちょ、抜ける!ハゲる!」
「しね。」
おしまい。