銀高ss⑧最近めっきり降っていなかった雨が降った。昼間は晴天だったのに日の落ちる頃に水滴が地面を濡らし、今現在は雷様が元気に活動している。天気変わりすぎだろ。お天気お姉さんこんなこと言ってたっけ?雷雨の中原付きを走らせ、もうずぶ濡れでやっとの思いで帰宅した。
「ただいま〜、」
「…ん。随分降られたじゃねぇか。」
珍しく玄関にてお出迎え。もしかしてちょっと心配してくれたのか?体は冷たいが心は勝手に温まった気がする。
「最悪だよ。パンツまで濡れてるよコレ。寒っ!」
ほら、とタオルが差し出される。やっぱ心配して用意しててくれたんじゃん!我ながら単純な脳は歓喜した。
顔を拭くも、前髪からすぐ雫が滴って視界が濡れてしまう。
ああもう、と悪態を吐いて一人格闘していると、高杉にタオルを取られた。
「貸しな。」
え、もしかして…と期待が湧き上がった。
ふわりとタオルが頭に乗せられる。それからランダムに高杉の手が動いた。おお…!!
いつも髪の毛は乾かしてやる側だ。高杉の真っ直ぐな髪が丁寧にするほど艶めくから、この役割は気に入っている。自分の髪なんて乾かしたところでどうしようもないし、自然乾燥だ。
だから、こんな風に触られるのは新鮮だ。タオル越しに指先がわさわさと動いて、たまに耳たぶに触れて。なかなか、心地いい。
高杉もこんな気持ちなのだろうか。そういえば一度もあの作業を嫌がられたことはない。少しでも気に入らなければ手なり足なり飛んでくるはずだ。これって、かなり、うん。嬉しい。
そう思った瞬間、何か込み上げてくるような、むずむずした感覚になって、頬がでれ、と緩んだ。
「もういいぞ。」
「……。」
「おい、どうした。」
「いや……雷で顔が歪んじゃったみたいで……」
「はあ?」
こんな顔見せられるか。
タオルを外されても、暫く顔を上げられなかった。