ディミレト 大修道院の庭園には庭師たちが丹精した花木が季節を彩るが、竪琴の節は特に美しい。雪解けを待って芽吹いた花々が一斉に咲き誇る。
一昨日の雨が丘陵の一部をぬかるませていたが、今朝はすっかり青空が広がり、葦毛の馬はしっかりとした歩みで勾配を登っていった。ガルグ=マクを囲む矢柄のような峰はまだ雪冠に白く輝いている。
正午の鐘が鳴る半刻前にベレトと共に大修道院を出発したディミトリは、他愛ない会話に笑いながら壮大な長めを楽しんでいた。
後方には護衛が離れて付いてきている。二人きりになることは叶わなかったが、連れ立って馬を駆ることに心は弾んでいた。
大修道院を背に、暫く馬を走らせたあと木立に入ってから速度を落とす。士官学校時代にも二人で来たことがある。この先に小さな湖が見えてくるはずだった。
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