腹の底「──危ないッ!」
鋭い声が辺りに響き渡る。ドンッと肩に衝撃が走り、一緒にいた男、高塔戴天に抱き締められる。戴天の頭へ何かがぶつかるのが見えたと同時にバランスを崩して倒れ込む。覆い被さるように倒れた戴天を見ると、彼はぐったりとして目を閉じていた。
「おい、大丈夫か?!」
肩を叩いてみるものの反応は無く、仰向けにすると頬を数回叩く。
「しっかりしろ!」
う、と呻き声をあげながら戴天が目を開く。数回瞬きをすると辺りを見回して「ここは……」と呟いた。
「気分は?」
「気分……?体調は悪くありませんが……ええと……あなたは?ここはどこでしょうか」
「……正気か?」
「すみません……。何も覚えていなくて、自分の名前も……」
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