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    かとうあんこ

    赤安だいすき

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    かとうあんこ

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    同棲してる赤安

    『バ〜ボンのひみつ』好きだと言えば許される気がした。
    「えっ、じゃあ、僕を好きだと言ったのは嘘なんですか!?」
    ついさっきまで眠ってしまいそうだった瞼が見開かれ、青い瞳が溢れ落ちそうになる。
    シーツの海にさざなみがたち、俺たちの距離がわずかに開いた。
    隠すのが上手い彼が一目瞭然に驚くほど俺の愛が伝わっていたわけだ。
    一年前には想像できなかった。
    過去の自分への優越感に胸が満たされていく。
    「嘘とは違うな」
    「じゃあ、なんだっていうんです」
    拗ねてわずかに突き出した唇が可愛くてキスしようとしたが、俺の唇が触れる前に顎を引かれてしまった。
    その反応は俺たちがひとつのベッドで肌を寄せ合うようになった経緯を考えれば当然だった。
    一年半前、因縁の組織が壊滅した。
    最後まで唯一組織に潜入していた降谷くんは、大規模な作戦の途中で大怪我を負い、生死の境を彷徨った。
    しかし、日頃の鍛錬の賜物で、医療関係者が驚くほどのスピードで回復。
    全治半年と言われていたのに一ヶ月で職場復帰を果たすという快挙を成し遂げた。
    しかし、体がいくら丈夫でも、心も同じとは限らない。
    一ヶ月経っても回復した時より顔色が良くならないのを見かねて問い詰めると、続けて眠ることができていないのだと彼は明かした。
    その時もちょうど今みたいに唇を尖らせていた。
    頼れる間柄の人間がいないのだとわかった。
    そして俺に対して頼る気もないのだと。
    『君を支えたい』
    『は?どうしてあなたが……』
    『君が……好きだから』
    そう言えば彼がそばにいることを許してくれるだろうと思った。
    俺の予想は当たり、彼は俺と一緒に暮らすことを選んでくれた。
    しかし予想外なこともあった。
    たとえば朝、目が覚めたばかりのあどけない表情。
    もしくは昼、多くの捜査官が行き交うオフィスで告げられる『今日は遅くなります』。
    きわめつけは夜中、魘される君の背中を撫でた時に感じた無力感。
    彼を好きだと気付くのに、そう時間はかからなかった。
    自分に恋してる俺に精一杯気持ちを返そうとしてくれる彼を見て、あの時『好きだ』と言って良かったと心底思った。
    「気付いていなかっただけで俺はとっくに君に惚れていた。それだけの話だよ」
    「ふうん」
    彼の唇はまだ不満げだが、事後の甘い空気は戻ってきた。
    俺の腕を枕にしていた彼に『いつから僕のこと好きだったんですか』と聞かれて、『気が付いたら好きになっていた』と曖昧に答えることもできたが、俺のために受け身になってくれた彼に対して不誠実だと感じた。
    「機嫌を直してくれ」
    「別に……気にしてませんけど!もっと早く言ってくれても良かったんじゃないですか?」
    「すまない」
    素直に謝ると小さな丸い頭がドンと俺の胸にぶつかった。
    撫でてやるとぐりぐりと頭を押し付けてくる。かわいい。
    「まあ、僕もあなたに隠してることありますけどね」
    「ホォ?」
    出会った時から秘密の多い男だった。
    バーボン、安室透、降谷零、三つの名前を持っていたが、彼を呼ぶのは俺が知っている名前だけではないだろう。
    「そういうミステリアスところも君の魅力の一つだから仕方ないな」
    「ふふ、物分かりがいいひとは好きですよ」

    デスクに褐色の水たまりが広がっていく。
    白いシーツに寝そべてっている降谷くんの背中……に見えなくもないな。
    「ちょっと、シュウ!!なにをぼーっとしてるの!?早く拭きなさいよ!?」
    投げられたペーパーで零したカフェオレを拭き取ってみたが焼け石に水。見かねたジョディがダスターを持ってきて、まるで母親のように小言を連ねた。
    「本当に、あなた最近変よ?コーヒーを買おうとしてカフェオレを買ったと思ったら、半分はデスクにこぼしちゃうし。熱でもあるの?」
    「至って健康だ」
    「なおさら妙ね」
    「考えすぎだ」
    思考を読もうとする視線を避けて書類に目を向けると、今度はキャメルが俺を不安そうに見てきた。
    「赤井しゃん……一体なにがあったんですか」
    「……何もない。仕事に集中しろ、キャメル」
    「でも……書類さかさまですよ……?」
    その週の俺は散々だった。
    職場に向かおうとして車の鍵を部屋に忘れ、オフィスに入ろうとして自宅に入館証を忘れたことに気付いた。
    フライデーナイトになると職場に愛車を忘れるという有り得ないミスをして、ついに零にまで俺の異変に気付かれてしまった。
    「ジョディさんやキャメルからもあなたの様子が変だって問い合わせがありましたよ。一体どうしたんです?」
    「……」
    「だんまりですか。まあ、お互いに秘密が付きものの仕事ではありますが。同僚にまで明かせないなんて、ただ事ではなさそうですね……」
    零はそう言って俺から視線を逸らした。何を想像したのかは聞かなくてもわかる。
    「潜るわけじゃない」
    「……そう」
    「君は……?」
    「えっ、僕?」
    「…………隠していることがあると言っただろう」
    短くない沈黙の後、零の腕が俺を包んだ。
    「かわいそうにっ、僕がどこかに潜るかもしれないと不安でヘマばかりしてたんですか!?」
    可哀想と言うわりに嬉しそうな声だ。
    抱きしめられていても、俺には君がどんな顔しているかわかるぞ、零。
    「お詫びに僕の秘密を一つ教えてあげます」
    指を2本立てた零は俺の予想通り上機嫌だった。
    「ぜひ頼む」
    「誰にも話してない秘密ですからね!あなたも他言無用です」
    「ああ」
    「それから、この秘密を知ったあなたは僕に水着買わないといけません。派手ですごく面積が小さいやつ」
    自然と眉間に皺がよる。セクシーな水着を身に付けた零は見たいが、他のやつには見せたくない。
    そんな俺の眉と眉の間に人差し指で円を書きながら「安心して」と俺の恋人は言った。
    「実は数年前に大富豪からもらったプライベートビーチがあるんです」
    「……ホォ。さすがバーボンだな。それが一つ目の秘密か」
    「ええ。そろそろ様子を見に行こうと思ってるんです。一緒に行ってくれる?」
    「もちろん。しかしあまりセクシーな水着は……」
    いくら私有地とはいえ、高台から誰が見てるからわからない。俺がそう言うとわかっていたように、零は妖艶な笑みを浮かべた。
    「ビキニを履いたら僕の秘密が見れますよ♡」
    「なんだって?」
    零が俺の耳に唇を寄せる。体温と匂いがすぐそばにやってきて、バーボンに騙された大富豪の気持ちがわかった気がした。
    「僕、お尻にハート型のホクロがあるんです。恥ずかしいから誰にも見せたことないけど、あなたになら……」
    「……それは知ってる」
    「えっ!?」
    あんな体勢で俺に組み敷かれてるのに、見られてないと思っていたのか。かわいいな。
    「誰にも言ってないでしょうね……?」
    「死ぬまでそのつもりだよ、零くん」
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