一日遅れのモーニングハロウィン(高銀)「高杉、ハッピーハロウィン♡」
「朝から何してんだ。ハロウィンは昨日だろ?」
俺の渾身のセクシーダイナマイトヴァンパイアコスを目の前にして、起きたばかりの高杉は眠たげに目を擦り、欠伸をした。
「ああそうだよ!昨日だったよ!でも、テメェ昨日帰ってこなかったじゃんかよ!終電だったじゃんかよ!」
「仕方ねェだろ、月初だ。それよりコーヒーくれ」
高杉はそれだけ言うとダイニングテーブルにつき、テレビをつける。朝のニュースでは、昨日の各地のハロウィンイベントの盛況ぶりが楽しげに映し出されていた。
「俺だけウキウキしてて可哀想だと思わないのか」
「ウキウキしてたのか」
「ウキウキワクワクしてた。歌舞伎町のハロウィンイベント行って、いっぱいお菓子もらってきた。最高だった」
「しっかり充実して楽しんでるじゃねェか」
「シャラップウウウ!」
ダン!と高杉好みの熱いコーヒーを出してやる。朝ごはんのトーストと目玉焼きとサラダを皿に並べながら俺は抗議する。付け牙は邪魔なので外しておく。
「それはそれ!これはこれ!仕事で疲れた旦那のために健気にこーんなセクシーコスして布団で待ってた健気な俺にかける言葉がほかにあんだろ?」
「つまり?」
「ハロウィンコスセックスしたい」
焼きたてのトーストをかじりながら、高杉はじっと俺を見る。
「俺の分のコスもあんのか?」
「ある。テメェは神父な。そんで、吸血鬼の俺に喰われるの」
「テメェが退治される側じゃねェのか」
「え、なに?そのマグナムで俺を退治したいって?とんだ助平な神父だな」
「言ってねェ」
テレビのチャンネルを変えながら淹れたてのコーヒーをすする。お天気お姉さんによれば、今日は一日快晴とのことだ。
「朝っぱらからやんのか?吸血鬼のくせに」
「お前がちゃんと帰ってくれば昨日の夜に出来るはずだったんだよ。まあ、あれだ。朝方の吸血鬼ってことで」
「いいのかそれで」
「日光で弱体化したせいで、神父に分からせられるってシチュはどう?」
「縛っていいのか?」
「お前、ほんと縛るの好きね……」
爽やかな朝には似つかわしくない会話をしながら、俺はシャキシャキのレタスのサラダを頬張る。
「お、目玉焼きめっちゃいい感じに半熟」
「ソース取ってくれ……。にしても、どうせならもっとちゃんとした衣装にしろよ。テカテカのマントしやがって」
「ほいソース。まあ、トンキで安かったからな」
「その格好で歌舞伎町行ったのか?とんだ痴女じゃねェか」
「ばーか、歌舞伎町のはまた違うコス。仕事用でミイラ男してた。これは、お前用♡」
「テカテカだけどな」
「いや、逆に安っぽいほうがそそるときも逆にあるじゃん」
「逆に二回言って戻ってるぞ。まさか、俺の分もそんな安っぽいやつじゃねェだろうな」
「お前がその面で、安っぽいトンキの衣装着てるのも逆にいいかなって」
「ふざけんな」
そんなこんなな会話をしながら朝食を食べ終わる。皿を台所に片付けて、俺は天気のいい外を見ながら洗濯物にとりかかる。
マントが邪魔なので一回外す。いやぁ、それにしても本当にいい天気だ。よいしょよいしょと洗濯物を干し終えた頃に、
「おい」
と、寝室から高杉が俺を呼ぶ声がした。
俺は外していたマントを羽織って牙をつける。
寝室で高杉が似合わないテカテカの神父服を着ているのを想像して、少しおかしくなって笑う。
俺はニヤニヤしている顔を吸血鬼らしくキリッと引き締めて、寝室の扉を開けた。