坂田をコネコネする高杉の話(高銀)体がモゾモゾする感覚に目が覚める。
夜はまだ深く、朝が来るまでにはまだ遠い時間だ。
違和感の正体はすぐにわかった。尻を撫でられている。
同じ布団で寝ている男にだ。
「なにしてんの?」
すぐそこにあった額にこつんと合わせて、その顔を覗き込む。翡翠の目が、じっと俺を見ている。
「したいの?」
俺はまだ眠くて、うとうとしながら問いかけてやると、男はーー高杉は無言のまま俺に唇を合わせてきた。薄い唇の先を擦り合わせてから、ちゅっちゅと啄むよう吸い付いてくる。
こそばゆくて声を漏らせば、高杉は不機嫌そうに口付けを深めてきた。にゅるりと口の中に入ってくるそれを、俺はいつも生きた蛇のようだと思う。もちろん、実際に口の中に蛇を入れたことなんてない。ただ、それは高杉の体の一部のようでいて、高杉とは違う意志を持った生き物のような不思議さを感じるのだ。
俺が拒まないことで許しを得たと思ったのだろうか。尻を撫でていた高杉の手は大胆に体をまさぐりはじめる。
「ん……したい、の?」
舌を絡ませる合間に、もう一度問いかける。けれども高杉は否定も肯定もしないまま、今度は足を絡めてくる。
裾をはだけさせて、もつれるように素足を重ねる。互いの息遣いがわかるくらい体同士をぴったりとくっつけたまま、高杉の手が俺の腰と尻を寝着の上からいやらしく這い回った。
体を弄られて、否応なしに体温が上がってくる。もともとの眠気も相まって、頭の中がとろとろになっていく。
「たかすぎ、あ、なぁに?」
高杉はやはり何も言わない。ただ、ギラギラとした目で俺を見てくる。熱が灯った獣の目だ。
高杉の大きな手で握るように尻の丘を揉みしだかれて、思わず腰が揺れる。けれども、それを咎めるように高杉の足が俺の腰を力強く挟み込むので、俺はまともに身動きもとれないまま、高杉の手に身を委ねるしかなかった。
「なあ……んん、なんだよ、もう」
お腹に高杉の熱が当たっている。ちょっぴり湿ったそれが、俺の腹の下ーー膀胱のあたりをグイグイと押してくる。
「したいんなら、そう言えって」
たまらない気持ちになって、非難めいた色の声が出る。
けれども高杉は俺を見つめながら、体を触り続けるだけだった。
「なんか、……言えよ、んん」
性感帯でもなんでもない、ただの腕をさすられる感触でさえ、そこから溶かされていくような甘い疼きに変わっていく。体が跳ねそうになるのを高杉自身の体で押さえつけられながら、はだけた襟元から鎖骨をねっとりと舐めあげられる。
「あ……んん、ん」
強く抱きしめられているせいで、もどかしい快楽に悶えようにも内太ももをこすりあわせることしかできない。そのせいで、余計に体の奥でグツグツとした熱が溜まっていく。
「高杉……もう……なんなんだよ、ほんとうに」
布越しに伝わる体温がどんどん熱くなっていき、額にうっすらと汗をかきはじめる。
「触るんなら……ちゃんと触れよ」
布団の中で隙間なくぴったりと重なった身体。高杉の匂いと、かきはじめた汗の匂いがまざっていく。
「あ……あ、ん、なんで」
尻をぎゅっぎゅっと握られて、首筋を甘噛みされる。それだけで、その先には触れない。そんな児戯のような愛撫が切なくて、先に限界を迎えたのは俺の方だった。
「やだ、触って……高杉」
俺のおねだりの言葉に、高杉はようやくふっと声を漏らした。そして汗で張り付いた俺の髪をよけながら、耳朶に向かって吹き込むように「上手に言えたじゃねェか」と笑う。
高杉の大きくて硬い手が俺の裾の中に潜り込んでくる感触に、俺はこれから与えられる快楽の予感に熱い息を吐いて、暗い天井を見上げた。