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    nicola731

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    nicola731

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    https://twitter.com/nicola731/status/1374684085319168000?s=21
    晴道ハッピーゆるゆる結婚生活だよ。ホントだよ。

    #晴道
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    ふと、書き付けを捲る道満の指が止まる。自分が書き留めたはずの術式がまるで目新しく見えた。自分の屋敷から運ばせた書物の内に紛れていた一片の書き付けを、道満は思い出すことができない。なぜ自分が書き留め、なぜこのように術を構築したのか。道満は考え込んでしまう。
     晴明の屋敷の奥、その御帳に囲われている道満は外へ出ることもできないため、自邸から自身の蔵書を運ばせた。一度死んでしまい、晴明の手によって人形の体に魂を移し替えられてしまった道満にはできることが少なかった。与えられる衣服が小袖のみなので人前に出ることもできない。仕方なく畳の上に座って自分を囲む書を読むか、不本意ながら夜伽の真似をするか、まことに不本意ながら子の世話をするぐらいしかない。
    「ンン、ンンンンン? なぜこのように……いや、効果的ではあるが、こちらではむしろ、ンンン、検証済であるか…………」
     紙片を前に悩む道満の背に勢いの付いた何かがぶつかる。道満が振り返ると七歳ぐらいに見える、夜の海に幾つもの白波が立っているような、白髪の混じる黒髪の子供がいた。
    「おや吾子、腹でも空いたか?」
    「かかちゃまー縺ェ縺ォ繧偵@縺ヲ繧九」
    「相変わらず何を言っとるのか分からん」
     むにむにと唇を動かす子供は道満に纏わり付き、胡座を掻いたその膝の上へと転がった。道満は小さな子供の頭を指の先で掻いてやる。擽ったそうに身を閉じる幼子は道満が摘まんでいる紙片に気付いた。
    「縺ソ縺帙※縺ソ縺帙※かあちゃまぁ」
    「統一せんな……」
     座りやすいように抱え直してやり、道満は紙片を見やすいように下ろしてやる。吾子は溢れそうな大きな瞳を凝らして見詰めている。それから手を振って喃語を発する。どうにか道満が解読すると紙片の術式を説明しているらしい。最初から手振りで再生するように、順繰りに説明しようとしている。それが分かると道満は「なるほど」と頷いて、自分が組み上げたはずの術式を理解する。
    「吾子は賢いのだな、儂にはとんと分からなんだ。晴明殿が組んだ人形だけのことはある」
     道満が膝を揺すると吾子はとても喜んだ。そんなところに生絹を揺らして屋敷の主人が現れた。
    「お前の夫が帰りましたよ。可愛い妻よ、今日の吾子は御機嫌如何かな?」
     道満は全てを諦めた顔で雑に応対する。
    「あーはいはいお帰りなさいませ晴明殿。お勤めご苦労で御座いました」
    「縺ー縺代℃縺、縺ュ縺薙o縺hおかぁちゃまぁ」
     吾子は生みの親であるはずの晴明を見ると怯えて隠れてしまう。「おおよしよし」と道満も子を袖で隠してしまう。
    「なんでこんな嫌われたかな……」
    「吾子は聡い子ですから貴方の正体なぞすぐに見破ってしまうのでしょう」
    「中身はお前を組んだ時に余った臓腑だしね。外付けのHDDみたいなものだよ。だからお前が覚えていないことも覚えている」
     晴明が話していることを全て理解するのが難しい道満は「そうですか」で済ませてしまう。不満げな晴明を放置して、道満は吾子を抱える。
    「吾子や吾子、怖い狐はお前が泣くと喜ぶから泣いてはならぬぞ」
    「失礼な、私が喜ぶのはお前が泣いている顔です」
     腰を下ろした晴明が道満に寄り掛かると、吾子は「ぎぃ~」と愛らしい顔を歪めて嫌がる。
    「嘘でしょ……元はと言えば私の尻尾だろお前……」
    「父親役をやりたいのであれば吾子が寝るまで此方には顔を出さぬほうが宜しいのでは?」
     けらけらと笑う道満に、晴明は吾子と同じように口を曲げて「ぐぅ」と唸る。それから吾子に手を伸ばして、とん、と軽く指で額を小突いた。殺意はあるのか子はその指に嚙み付こうとして避けられた。
    「お前の母様は私の妻だというのに、全く。誰に似たんだか」
    「どう考えても晴明殿です。ほれ吾子や、そんなモノ食わんで」
     吾子は道満にそう窘められて、ぐずるように胸へと顔を埋めた。小袖の袷に顔を突っ込んで乳を求める。道満は好きにさせている。心穏やかではない晴明が子に剣呑な視線を向けている。
    「乳離れどころか乳を吸ったことないでしょ何してるんですかおい」
    「吸わせると安心するようなので。なぜお怒りになるのですか、子のすることでしょうに」
    「しますよ。それは私のだぞ吾子」
    「誰が貴様のものじゃ誰が」
     自分が造った子に悋気を出す夫に、妻は呆れてしまう。彼が仇敵であったことも忘れた道満は子が眠れば夜伽が待っているのを拒まない。
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    🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼😍🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼😭😭😭🙏🙏🙏🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼🙏🍼💘💴💴💴🍼🍼🍼🍼👏👏💴💴🙏🙏🙏🙏☺☺☺🍼🍼🍼🍼🍼🍼🍼😭🙏
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    nicola731

    DOODLE「罪深き墓前まで」
    思いつきの時代物パロ晴道。多分この後二人で共謀して旦那を始末します。
     晴明の兄が妻を娶ったのは彼が十五の時だった。付き合いのある旧家の長子で、美しいことで評判だった。まだ十八になったばかりだった。晴明の幼馴染だった。
     晴明は義姉になる前まで兄の結婚相手を「道満」と呼んでいた。義姉になるまで兄の結婚相手を抱いていた。去年の盆に宴会があり、その裏で二人は体を繋げた。お互い初めての相手だった。晴明にとっては初恋だった。
     道満は自分の妻になるものだと信じ切っていた彼は、夏の盛りを過ぎた頃に兄から婚姻のことを聞かされて、がらがらと全てが崩れていくような心地になった。美しい上に賢い道満は詩経さえ誦じてみせる。対して夫となる晴明の兄は凡庸で家柄ばかりが取り柄の役人だった。幼少のみぎりから才覚を発揮していた晴明とは大違いだった。
     晴明は兄が何処か勝ち誇ったような顔をして自分を見ていることに気付いた。兄が自分を打ち負かしたいがためだけに、道満を妻に迎えたのだとすぐに理解した。殺してやろうかと思った。
     道満は家庭に入ると頗る良妻で、よく躾けられた奥様になった。夫の父母に気に入られ、夫の床屋政談にも美しい笑みを浮かべたまま付き合った。晴明が「義姉さん」と呼んでも笑み 1027

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