1945年4月30日、アドルフ・ヒトラーは総統地下壕で自殺した……と思われていた。しかし実際には、ソ連軍の急襲により捕らえられ、極秘の地下収容所に投獄されていたのであった。
捕虜となってから数カ月、ヒトラーはいつものように薄暗い独房で目を覚ます。そして、与えられた硬いパンと水っぽいスープを機械的に胃に流し込み、天井のシミを見つめる。かつて「総統」と呼ばれた男の目は生気を失い、濁っていた。
突然、扉が音を立てて開いた。現れたのはスターリンだった。
「おはようヒトラー。よく眠れたか?」
眠れるわけないだろクソが。ヒトラーは内心で毒づく。スターリンはほぼ毎日、ヒトラーのもとを訪れる。その度に暴力的な尋問や精神を削るような雑談をしてくるので、ヒトラーは心身共に疲弊していた。
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