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    danraku

    @amayado_m

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    danraku

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    双子のお仕置きが猫耳執事だったブラッドリーと晩酌の予定があったネロ

    #ブラネロ
    branello

    ふたりのマナー 手袋と燕尾のコートは丸めてソファに投げる。眼鏡とクロスタイを粗野な手つきで外して、髪を掻き上げると頭を振った。階段を上がる音が聞こえるのもお構いなしに、ベストのボタンを一つずつ外していく。その足音は自室の前で止まった。
     ブラッドリーは安堵の息を吐き、ノックと同時に声をかけた。
    「早えじゃねえか」
     向こう側の男も心得たもので、すでにドアを開けている。
    「今晩はカナリアがいたからさ。昨日まで任務だったから、俺は休み」
    「は、いいご身分だな。こっちはさんざんな目に遭ったってのに」
    「自業自得じゃね?」
    「どこが」
     バーの花瓶を割った穴埋めに、オーエンが西の国のけったいなカフェに向かった。そのことは魔法舎中の噂になっていた。そんな不始末の一因である、ブラッドリーとミスラが連帯責任で双子に仕置きされたことも、周知の事実というわけだ。
    「俺は、シャイロックのバーではやめとけって言ったからな」
    「はいはい、直前までかっかしてたんじゃ世話ないだろ」
    「おまえ……」
     ブラッドリーが脱ぎ捨てたベストの放物線を目で追いつつ、ネロは後ろ足でドアを閉めた。片腕で支える皿の一つに載ったフライドチキンに喉が鳴る。チーズだの葉っぱだのが載った皿だって、ネロが晩酌で味わうために用意されたのなら悪くない。
     それはそうと。隠すつもりもない、にやついたツラは気に食わないが。ブラッドリーがいくら睨んだところで、けろりとした様子で近寄ってくるのだから今更だろう。
    「あんたのそれ、なんだかんだ活躍してるよな」
     ネロはテーブルに皿を置くと、ソファの上に乱れる執事服とブラッドリーとを交互に見つめた。
    「似合わないって思ってたけどさ」
    「なんだ、一から着て欲しいのか」
    「……馬鹿、何言ってんだよ」
     むっとしたネロに、胡椒が飛んでるかとブラッドリーは身構える。しかし、慌てた彼は乱暴にフライドチキンを掴むと、薄い唇に押しつけてきた。あつあつな、出来立ての脂っこい匂いに誘われるがまま、口を開ける。歯を突き立てれば、じゅっと溢れた衣と肉汁が唇を濡らした。「やっぱ美味えな」「だろ」もくもくと食べるのに夢中になり、外すのを忘れられたシャツの釦が、心許なく留まっている。
     ブラッドリーにひとしきり食べさせたネロは、どこかそわそわした様子で、シャツに掛かったままのボタンに人差し指を這わせた。
    「なあ、どこまで知ってんだ?」
    「え……あー、なんだっけな、そう『猫耳執事の萌え萌え♡おもてなし大反省会』……?」
    「クソ、全部じゃねえか」
     今はないはずの獣の耳がぴんと張り詰め、神経質に膨らんだ尻尾の錯覚に、ブラッドリーは苛立ちを吐き捨てる。
    『こやつらにもマナーを叩き込むのは名案じゃが、我は前に執事のブラッドリーからもてなしを受けてしまっておる』『むむむ……そういえばこやつら、仲良く猫耳を生やしておったな。オプションとやらを付けるのはどうか?』『確かに、萌え萌えきゅんきゅんの執事なら、我も初めてじゃ!』『きゃ〜ホワイト(スノウ)ちゃん最高〜!』の斉唱から始まって、飽きるまで弄ばれて。堪ったものではない。
    「まあ、大変だよな。あのおまじないとか……」
    「美味しくな〜れって?」
    「…………」
    「引くなよ」
    「引くだろ」
     複雑だぜ、と渋面ながらネロの手つきはもっと性急になった。もう待ちきれないと、シャツの鈕をすっかり外してしまう。何だってそんなに落ち着きがないのか、気になってきたブラッドリーだったが、その答えはすぐにもたらされた。
    「ブラッドリー様に、着替えのお手伝いは必要か?」
     そう言って困った顔をしたネロは、横目にテーブルに並んだ皿を見ていた。
     鼻を鳴らし、着慣れたスーツに戻る。
    「いらねえ。ちんたら着替えてたら、飯が冷めちまうからな。それに——」
     無防備に安心しきった男の薄い顎を掴んで、ブラッドリーは笑った。
    「この俺様を笑い飛ばそうと駆け足で来たくせに、飯食って欲しくなったてめえの話を聞かせろよ、ネロ」
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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