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    ⚠️かっこいい2人はいない、むしろかっちょ悪い
    悠真がアキラに飲みに誘う話。

    #悠アキ

    酔った恋人は僕の心を振り回すその日の悠真はとても浮かれていた。少々困難を極める仕事が早く片付き、あの副課長から定時で退勤する許可がもらえ、こんな明るい時間に帰路へとついている。これも有名な『パエトーン』の案内があったからというもの。だからだろう…いつものようにイアスを回収しに来たアキラに、たまには飲みにでも行かない?と誘ったのは…。いつものアキラならもちろんと誘いに乗ってくるものだが悠真の予想に反して珍しく渋い顔をした。

    「どうしたの…?もしかしてお酒嫌いだった?」
    「いやそうゆう訳じゃないんだけど…」
    「ん……?」

    珍しく妙に煮え切らないアキラの様子に詳しく聞いてみるとどうやらお酒があまり強くないらしい。本人の記憶にはないみたいだが酒癖もあまり良くないため、彼の最愛の妹から外では飲まないようにと口酸っぱく言われているようだ。

    「うーんそっか〜、じゃあ…外で飲むのが心配なら僕の家ならどう?それなら何しても平気だし、僕だっている!ね、安心でしょ?」
    「でも……」
    「大丈夫!リンちゃんには僕から言っておくからし、帰りが心配ならそのまま泊まって行っちゃいなよ!」

    困った様に少し考えるも、結局微笑みながら首を縦に振るアキラの手を引っ張る。電車に揺られること数十分。悠真の家に着いた2人は、途中で買ったおつまみを夕飯代わりにつまみ、盃を交わした。飲むペースは特段早くもなくゆったりと会話しながら飲んでたと思ったのだが……。

    「はるまさ……」
    「えっ…と……」

    (どうしてアキラくんに押し倒されてんのぉぉお!?)

    そう僕は今愛する恋人に押し倒されています……。こんなことになる前、ときは数時間前に遡る…。


    ……………

    「はい、着いた!ちょっと待ってね今鍵開けるから!」
    「ほら悠真、荷物もっておくから貸してくれ」
    「えなに僕のアキラくんイケメン…」
    「もう…ふざけていないで早く開けてくれないかい?」
    「あはは、ごめんごめん!ほら、開いた!」

    ガチャリと音を立て開いた扉とぼんやりと月明かりだけが照らす部屋が疲れた2人を歓迎する。

    「お邪魔します」
    「はーい、どうぞ〜」

    パチッとスイッチに手をかければ真っ暗な部屋に明かりが灯る。とりあえずはこの重い荷物を下ろさねばとアキラの手から袋を掻っ攫い、先にキッチンへと急いだ。

    「あ!アキラくんは先に部屋行って待ってて!」
    「分かった」

    普段あまり飲むことなんてしないのに調子に乗って買いすぎたお酒とお腹を満たすために調達したおつまみの袋をどさりと下ろす。

    (流石に食器に移すか…でかいお皿あったっけ…?)

    家にある数少ない食器を棚から探していると、仕事柄鍛えられた耳が背後から聞こえる僅かな音を拾った。

    「ん?」
    「悠真…」
    「あれ、どうしたの?座って待っててって言ったのに」
    「でも…ほら悠真だけに準備させるのは悪いからね。やっぱり僕も手伝うよ」
    「そう?じゃあ……っと、このお皿にさっき買ってきたやつ移してくれる?僕は氷とか用意するから」
    「わかった」

    アキラは悠真からお皿を受け取ると箸で料理を盛り合わせていく。アキラのほっそりとした白くて綺麗な手が調子よく動いていくその様に、氷を砕きながら隣で眺めていた悠真はふとひとつの空想に思いふける。己の家のキッチンに立つ最愛の人、愛し合った恋人がひとつ屋根の下で一緒に夕飯の支度をする。

    (なんか……新婚さんみたい……)

    すっと通った綺麗な鼻筋、瞬きをする度に震えるまつ毛。繊細な顔立ちに目を奪われた悠真の手はすっかり動くのをやめてしまっていた。だがそんな静かにじっとこちらを見つめ続ける悠真にアキラでさえも動きを止める。

    「あの……悠真…?そんなに見られると流石に恥ずかしいんだけど…」
    「え…!?あ、ごめん…!そんなつもりじゃなくて!」

    突然の指摘に慌てふためく自分を見て、アキラがくすりと小さく喉を鳴らす。手元に視線を落とし、作業で気をまぎらわしながらも聞こえてきた澄んだ音に頬はかぁと熱くなった。お互いの準備する音だけが響く沈黙の中、己の中で騒ぐ心音がすぐ隣にいるアキラに聞こえてしまうのではないかとなんだか落ち着かない。

    「よし…できた、これで大丈夫かい?」
    「え、あ!うん大丈夫!」
    「悠真?いったいどうしたんだい…?今日はなんだか様子が変だけど……」

    (ち、近い…!)

    いつもと様子のおかしい悠真を心配してか、こちらを覗き込んでくる。一気にアキラとの距離が縮ま思わず飛び退いた。

    「もしかして何か隠しているんじゃ…」
    「な、なんでもない!なんでもないよ!」
    「………」

    (言えるわけない!台所に立つアキラくんをみて、新婚さんみたいだね♡って思ってましたなんて!!)

    「ほら、あっちで食べよ!氷も用意できたからさ!」
    「……?」

    首を傾げているアキラには悪いが、こちらの妄想を見破られる訳にはいかない。料理を手にするアキラの背中をグイグイと押して部屋へと連れていく。

    「よし、じゃあ今日もお疲れ様ってことで!」
    「「乾杯…!」」

    かちんと音を立てグラスを合わせる。よく冷えたお酒が喉を通り、お腹を満たしていく。

    「ん〜アキラくんと飲むお酒は美味しいな〜!」
    「また調子のいいことを言って…」
    「え〜ホントのことなんだけどな〜」
    「はいはい、あ…これ甘くて美味しい」
    「ほんと?アキラくん苦いのは苦手って言ってたから飲みやすいの選んでみたんだ〜気に入ってくれたなら良かったよ!」
    「うん、すごく飲みやすい…ありがとう悠真」

    アルコールを含んだアキラの顔がほんのり火照る。いつもよりも子供っぽく緩む表情に愛おしさが募る。思わず撫で回したくなる衝動を喉に流し込むことで必死に抑えた。

    「悠真…そんな一気に沢山飲んだら身体に悪いよ…」
    「ん?あぁ…まぁそうなんだけど普段飲まないし、今日くらいはね?それに僕あんまりお酒酔わないんだ」
    「そうなのかい?僕と一緒でこうゆうのは弱いのかと…」
    「あはは、体質なのかな?それとも小さい頃から病院にいたせいか身体がアルコールに慣れちゃったのかも?」
    「そうか…」

    『病院』というワードに一気に暗くなる空気。やらかしたと悟った悠真は話題を変えようと試みる。

    「そんな暗い顔しないでよ!ほらこれ食べてみて?」
    「え…うん…」
    「どう?美味しいでしょ?」
    「ん…すごく美味しい」
    「でしょー!これ僕も好きなんだよねー!まだあるからあるから沢山食べてねー」
    「うん、ん…」
    「ぇ……」

    ふと料理を運ぶ口に目が止まる。唇からちらりと覗く赤い舌、熱を逃がすためにはふはふと動く口元にごくりと喉が動く。

    (って何考えてんの〜!?男子高校生じゃないんだから!)

    先程から頭の中を惑わせる恋人のに思わず頭を抱える。これもさっき変なことを考え始めてからだ。だが少しは許して欲しい、アキラくんとは付き合い初めて数ヶ月。それなのにまだキスだってしていないのだ。悠真も立派な成人男性、可愛い恋人と先に進みたいと思うのも男としてむしろ健全な思考ではなかろうか。だが人と付き合うのなんて初めてと以前言っていたアキラのためにも焦る訳にはいかない。それで嫌われたりなどしたらきっと悠真はしばらく立ち直れないだろう。

    (ふぅ……落ち着け…大丈夫、ただお酒を飲みに来ただけ…)

    「悠真?」
    「あぁごめんね、どうしたの?」
    「今日の悠真なんだか様子が…」
    「あはは…大丈夫、これは僕の問題だから…。ほら気にしないで飲も!」
    「うん……」

    アキラくんとくだらない話をしながら、煩悩を追い出すように酒を流し込む。そうしているうちに時間は刻一刻と進んでいき気づけば夜の22時半、良い子であればそろそろベットに入る時間というわけだ。さすがにお酒が弱いと言っているアキラを長時間付き合わせる訳にはいかない。そろそろお開きにしようと声をかけようとした時、隣に座っていたアキラの半身がぐらりと揺れた。

    「お、っと…危ない…アキラくん大丈夫?」

    持ち前の反射神経でグラスとアキラを受け止める。そこには先程とは比にならないくらい顔を真っ赤に染めたアキラが目を瞑り、今にも寝入ってしまいそうだった。

    「んぅ……はるましゃ」
    「あぁ…これはダメかも…アキラくん、ベット行こうか」

    腕の中に収まるアキラを持ち上げようとすると、首をブンブンと振り、抵抗される。

    「やら…まだ飲むの」
    「えーでももう眠いでしょ…?」
    「やーだ、まだはるましゃといっしょにいるの!」

    (うぅ……何この可愛い生き物〜!)

    普段の冷静さからは想像もつかないくらい、ぐりぐりと頭を押し付け甘えてくるその姿に悠真の行き場のない手は宙を漂うばかりだった。

    (うーんどうしよう…ずっとこのままってわけにもいかないし。とりあえず無理にでも運んじゃうか…)

    「ごめんアキラくん、ちょっとさわ…ってうわっ…!」

    突然襲い来る胸への衝撃。考え事に耽っていた悠真の重心は抵抗することも無く、床へと傾く。両腕をつき、自分の身体へつ影を落とす正体はアルコールで顔を紅潮させ、熱さのせいか少し瞳を潤ませるアキラだった。

    …………………………

    (というわけなのだが……)

    「えっと……アキラくん大丈夫?」
    「んぅ……」

    自分のことを押し倒しながらもふらふらと揺れる身体。やはり大分アルコールが回っているのだろう。早めに寝かせた方がいいと判断した悠真は自分の上に跨るアキラに説得を試みる。

    「ほらアキラくん、いい子だから一緒に寝よう?ね?」
    「む……じゃあねんねするからおねがいきいて」

    (ね、ねんね……!?)

    普段の彼からは想像もつかない子供っぽい言動に驚きを隠せないが、声に出さなかった自分を褒めてやろうと思う。

    「うん、いいよ。今日のアキラくんはなんだか大きな子供みたいだね」

    まるでホントの小さい子供のようにお願いと強請ってくる銀色の頭を優しく撫でつける。そんな子供っぽい雰囲気とは裏腹に欲張った内容は全く子供とは程遠いものでさらに驚かされる。

    「ちゅ……して……」
    「ぇ……?」

    (え…?今何言われた?聞き間違い…?)

    「ちゅー、して……ほしい」
    「は?」

    あまりの衝撃に考えることを拒否したがる頭を必死に働かせ、この状況をどう切り抜けるべきかに思考を回す。

    (全然聞き間違いじゃない!!どうしよう!え、どうするべき??これって据え膳ってやつなのでは!?むしろしなきゃ失礼にあたるんじゃないのこれ!?いやいや酔っ払い相手に何言ってんだ僕は!!)

    「いやいやいや!ダメだよアキラくん!僕もアキラくんが求めてくれるなら吝かでも、いや大歓迎だけど!今こんなことしたら明日きっと後悔するから!ね?今日は大人しく…」
    「やっぱり……」

    ポタッ……

    「え……?」

    顔に降り注ぐ数滴の暖かい雨。己の頬に流れ落ちるそれが何かを認識するのと目の前の彼が震える瞼を濡らしているのに気づくのにそう時間はかからなかった。

    「え…え!?アキラくんどうしたの!?気持ち悪い?飲みすぎちゃった?」

    紅く染まった頬に手を添え、いくら拭おうとぽろぽろと零れる涙は止まること知らない。アキラが突然泣き出してしまった理由が全く分からず途方に暮れる悠真に泣き続ける彼が言葉を1つ垂らす。

    「やっぱり……ぼくじゃだめなのかい…?」
    「ん……?」

    あまりにも脈絡のない言葉に疑問が浮かぶ。いったいどうゆうことだろうか…いくら考えようとも悠真の頭に答えが導き出されることはなかった。

    「ぼくが…かわいくない、おとこだからいつまでたっても手を出してくれないんだろう…?」
    「ぁ……」
    「もうぼくにきもちがむいていないのなら…そういってくれればぼくだって……」

    そう言いながら更にぼろぼろと涙を零すアキラは力が抜けたように悠真の胸へ倒れ込む。そのまま顔を埋め、溢れ続けるアキラの涙がじんわりと悠真の胸元を濡らした。

    (あぁ…なんだそうゆうことか)

    アキラが嗚咽混じりに漏らした本音。そこから見える答えは分かりきっている。アキラが涙を流し続ける理由は…。

    「僕だったんだ…」
    「グス…ぅ…」
    「ごめんね、アキラくん…よっと!」

    日々鍛えられた筋肉で起き上がると胸元に縋りついていたアキラの身体を離す。ずっと涙していたアキラの目元は赤く腫れて、痛々しい。その瞼を労るように優しくキスを落とす。

    「本当はね僕もアキラくんとキスしたかったし、なんならその先だってしたかったよ?でも焦って先に進めちゃうとアキラくんのこと怖がらせちゃうと思って必死に我慢してて…でも触りたかったのは僕だけじゃなかったんだね…」

    涙の跡が残るアキラの頬に手を添え、少し濡れた唇に軽く触れる。はじめてした恋人のキスの感触はとても暖かくて少ししょっぱかった。

    「僕が臆病すぎるせいで…沢山不安にさせちゃったよね…ごめんね?」
    「ううん…」
    「落ち着いた?」
    「うん」
    「そっか、それじゃ……よいしょっ!」
    「わっ!」

    涙もとまりようやく落ち着いたアキラの身体を持ち上げ、ベッドへと下ろす。そして自分の中に閉じ込めるようにアキラの顔の横にそっと手をついた。

    「は、はるまさ?」
    「ねぇ、アキラくん…?僕、まだし足りないんだけど…?」
    「ぁ……」

    その意味を理解したアキラは恥ずかしそうにふいっと目を背ける。だがそれもつかの間、意を決したように伸ばしたアキラの腕が、悠真の首に絡んだ。

    「うん、して…ほしい」

    その顔の熱さが羞恥心からか酔いからかは分からないが、とてもいじらしいその表情にぎゅっと胸が締め付けられる。そんなアキラの様子に止まることなど出来ず、覚えたての子供のように何度も唇を合わせた。そしてようやく唇を離したものの、直ぐにその距離が煩わしくなり、アキラの首元に顔を埋める。アキラの匂いが強く感じる首筋に自分の中の欲が囁きかける。僅かに残る理性が悠真の身体を縛ろうとするも欲を優先した悠真は構わず白い首筋に舌を滑らせた。

    「んっ……」
    「アキラくん…」

    しばらくちろちろと舌先で遊んだ後、ちうっと赤い花を散らす。熱い吐息を零す悠真の上からすぅすぅとこの艶めかし雰囲気に似つかわしくない音が響いた。

    「え…?」
    「すぅすぅ…」

    顔を上げるとそこには先程の空気など感じさせないくらい穏やかに眠るアキラの姿があった。

    「え…アキラくん…?」

    (嘘でしょ!?ここで……!!?)

    今まさに湧き上がっているこの劣情をどうすれば良いというのか!だが泣き疲れて眠りについてしまったアキラに手を出す訳にもいかない。そんな悠真の葛藤も露知らず、気持ちよさそうに眠るアキラに気が抜けたように笑いが零れる。

    「はぁ…ほんと困ったお姫様だよね…」

    (片付けは……明日でいっか…)

    身体の疼きに目を背けながら、アキラを抱えベッドへと潜る。腕を通して伝わる恋人の熱に、胸が高鳴る。

    (キス…しちゃった……)

    やっとかなった念願に今にも踊り出しそうな衝動を押さえ込み、ぎゅっと目を閉じた。


    ……………


    「ん………朝…」

    ぼんやり窓から差し込む光に目を開ける。ムクリと身体を起すと頭にずきりと痛みが走った。

    「いた…飲みすぎたのか…」
    「んみゃう…」
    「あ……おはよう」

    悠真の家にいる猫が朝の挨拶をしてくる。くわぁっと大きなあくびをした後、アキラの手に甘えるように擦り寄ってきた。

    「悠真は、いない……」

    猫とじゃれながら部屋の中を見回すも、昨日一緒に飲みを共にしたはずの悠真はいなかった。昨日のことは…あまりよく覚えていない。悠真におすすめされたお酒を飲んでいたことまでは覚えているのだが………。

    「〜♪」

    昨日のことを必死に思い出そうと頭を捻らせていると部屋の外から鼻歌と共にぺたぺたと人の近づく音が聞こえる。今の状況から察するに音の正体はこの部屋の主であろう。

    ガチャっ

    「あ、起きたんだ…おはよアキラくん」

    シャワーでも浴びてきたのだろう…。がしがしと雑に頭をタオルで拭きながらアキラのいるベッドに腰掛ける。よく見るとお酒で散らかっていたはずの部屋も綺麗に片付いていた。

    「すまない、悠真…片付けまで1人でさせちゃって」
    「あ〜……いいのいいの!それより昨日のこと覚えてる?」
    「それが……」

    あんまり記憶にないことを口にすると悠真は何故か少し残念そうだった…。もしや昨日何かやらかしてしまったのだろうか…。

    「もしかして僕は何か悠真に迷惑を…?」
    「あ〜違う違う!全然そんなんじゃないから安心して!そうだ、僕これからちょっと副課長に呼ばれちゃってさ〜昼すぎには戻ってくるからそれまでゆっくり寝てて?まだ頭痛いでしょ?」
    「ん……」

    僕より少し大きなごつごつとした悠真の手が頭に触れる。それだけでなんだか痛みが和らいだ気がするのだから本当に自分は単純なんだろう。

    「よし、それじゃちょっと行ってくるね〜」
    「あ…行ってらっしゃい」
    「はーい…おっと忘れ物……」

    背を向けた悠真は部屋を出ていった…と思ったのだがなにか思い出したようにくるりと戻り、ベッドに軽く乗り上げた。突然消えた2人の距離に思わず後退るも、そんなことは構わず悠真はアキラの手を捉える。

    「悠真?どうし…んぅ」
    「ん……ふ…」

    今までしたこともなかった突然のキス。どうして悠真がいきなりそんなことをしようと思ったのか、アキラは戸惑いで固まる他なかった。唇同士が触れるその僅か数秒の時間がアキラにとってはとても長らく感じる。そのせいか離れた口付けに少し寂しさを感じたが、困惑の顔を隠さず悠真に問いかける。

    「んぅ…はぁ……な、なんで急に…?」
    「ん…ふふ、さぁなんでだろうね?」
    「また…意地悪なことを」
    「あはは、ごめんね…じゃあ」

    悠真の手がアキラの頬に触れ、お互い目を合わせる。自分を見つめる悠真の瞳はとても暖かくなんだかむず痒い。

    「アキラくんが昨日のことを思い出せたら…今したキスも……その先も、沢山してあげる」
    「ぇ……」
    「だから…早く思い出してよね?お姫様……」

    それだけ言い残すと今度こそ部屋を出ていく悠真。あまりの出来事に誰もいない部屋でほおけた顔を晒す。そして赤く染まる顔を隠すようにシーツにくるまり、自分を置いて仕事へ行った恋人に恨み言を零すように呟いた。

    「僕は昨日いったい何をしたっていうんだ!」







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    Replies from the creator

    n_05060812

    DONE⚠️受け女体化

    ホワイトデー悠アキです。前回のバレンタインの時にあげた悠アキと軽く繋がってます!そちらを読んでからの方が伝わりやすいとは思いますが、詠まなくても特に支障はないと思います。
    すっっっっごく焦れったいしアキラちゃんとても初心ですぐ顔赤くします!それに悠真もアキラちゃん好きすぎてすっごいかっこ悪いです!前半は悠真が何あげようか知り合いに相談して、後半にやっとアキラちゃん出てきます。
    いつだって傍にいる晴れやかな午後13時。暖かい日中の日差しはとても心地よく、道端の猫も眠たそうに、んにゃんにゃと声を漏らしながら欠伸を零す。それは人であろうと変わることはなく、ほんのりぽかぽかと暖かいHANDの部署では1人の青年がすぅすぅと寝息をたて、穏やかな寝顔を晒していた。

    「ナギねえ、ナギねぇ!ハルマサ寝ちゃった!お布団かけてあげたほうがいい?」
    「いえ…その必要ありませんよ、蒼角」

    愛しい鬼の子は頭を撫でてやると嬉しそうに頭を擦り寄せた。その姿のなんと可愛らしいことか、日頃の疲れも吹っ飛ぶというもの。

    「ん………」

    だが、だらしない同僚の寝顔は別である。

    「はぁ……全く…」

    この部署の副課長とされている月城柳はその綺麗な桃色の髪を揺らし、未だ眠りこけている青年へと近づく。そしていつもつかさず持ち歩いているバインダーを高く振り上げ…
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