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    pap1koo

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    pap1koo

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    【フォ学ミスオエ】(🍎🍬とオエ誕おめでとう話)
    ▼最近ミに他の相手でもできたのかと怪しんで休日を邪魔してやろうとするオエと、なぜかソワソワしてるミです。
    ▼せっかくなのでミスティックでハッピーなエンゲージしておきました…💍
    ▼注:性行為前後の描写がふんわりあります。

    ##ミスオエ

    十月三十一日、二十三時五十五分に鐘は鳴る。「はあ……ハロウィンにわざわざ街に出ることないんじゃないですか。あっちに行っては声をかけられ、こっちに行っては腕を引っ張られ……わずらわしくて仕方がないですよ」
     人混みをかき分けながら、オーエンはミスラと夜のネオンに色めく繁華街を歩いている。
     十月三十一日の夜はいつもよりも騒がしい。ハロウィンと日曜日が重なったこともあり、街中が仮装した人間で賑わいをみせていた。
    「僕は楽しいよ。トリックオアトリートって言うだけで、うんと甘いお菓子がもらえるんだから。ほらね」
     オーエンがその手に握りしめるのは、小ぶりなキャンディアップルだ。ちょうど新装開店のプロモーションで配られていた。こんなにもつやつやと光る飴が絡まったリンゴのお菓子を貰えるのなら、何度だって呪文を唱えてやってもいい。
    「ふふ、美味しい」
     ぺろりと舐めれば甘い飴がそこだけ溶けて、歯を立てればリンゴの果実がシャリと崩れて甘酸っぱい果汁をこぼす。指に垂れたそれを拭うと、皮膚が薄い赤色に染まっていた。きっと食べ終わったころには口元も赤くべたべたになっているに違いない。
    「並べられたカボチャばっかり見て、何が楽しいんだか。オーエン、そろそろ帰りましょうよ」
     上機嫌なオーエンとは反対に、ミスラはぶつぶつと言いながら何度も時計を気にしている。そんなにも、オーエンとふたりで過ごす時間が面白くないのだろうか。帰りたそうにタクシー乗り場を見つめるミスラに気づき、その腕を引っ張った。
    「もう少しだけ、いいだろ。明日には後悔してるんだろうなってぐらい、馬鹿みたいに騒ぐやつらのこと、まだ見てたいし」
     本当はそんなことなど、オーエンだってどうでもよかった。周りで響き渡る他人の笑い声だって鬱陶しいぐらいなのに、どうしてもミスラを帰したくなくて嘘をつく。
     最近ミスラの様子が変だ。何か別のことに心を奪われているようで、今日なんかは特にそうだった。オーエンのことをこれっぽっちも見ずに、物思いにふけている。それがまるで、誰かを想っているように見えて心が落ち着かないでいた。
     もしこのまま別れたら。そんなことになったなら、きっと、こいつはその足で――想像するだけで、内心穏やかではなくなっていく。
    「ねえ、まだもう少し付き合ってよ。それとも何、そんなにそわそわして……この後、何か予定でもあるわけ?」
    「……いえ、別に……」
     珍しく言いどもるミスラは、さらに目を泳がせた。何だよ、とその態度に心の中で悪態をつく。しばらく沈黙が続いたあと、「ならいいじゃん」と返した声は小さく喧騒に消えていった。


     ここ数週間のことを思い出してみても、ミスラの様子は不可思議で仕方がなかった。珍しく登校したときや、ミスラの家で過ごすときでもオーエンのことをいつも以上にじっと見つめてくる。さらには普段は興味のなさそうなテレビ番組や雑誌を指差しては「これ、どう思います?」と聞いてきたりと奇妙な行動は続いていた。
    「甘いもの、そんなに好きだっけ?」
    「いえ、ただ、何となく聞いてみただけです」
     その通り、ミスラが誘ってくるからと甘いものを一緒に食べに行くことなんて日常茶飯事だが、ミスラは美味しければたらふく食べるだけで特にそれが大好物と言えるほどではないはずだ。どうしてそんなものに急に興味を持ち始めたのだろうと、オーエンは考えれば考えるほど、ミスラのその行動がますます怪しく思えてくる。
     先々週の日曜日、ミスラの家のソファーに座り雑誌を見るふりをして観察していた時のことだ。
    「ああ、それ、いいですね」
     気がつけば背後から声がして振り返る。ミスラがすいと近寄ってきて、オーエンの肩に顔を起き、後ろから腕を回して手元を覗き込む。するりと黒い爪が左手を絡め取った。
    「これ? ただの指輪だろ。ミスラの部屋にたくさん飾ってあるじゃん」
    「そうですけど、こういうのはまだ持ってないんですよね」
     たしかに紙面を見てみれば、そこに並ぶのは繊細な作りのもので、ミスラの好みとはいえなかった。
    「ふうん、お前もこういうの興味あるんだ」
    ソファーを乗り越えミスラが隣に座る。体をずり、とにじり寄せ、自然と肩に腕を回された。
    「どれがいいと思います?」
    「何が?」
    「だから、付けたときに似合うやつですよ」
     そう言ってミスラは自分の左手と一緒にオーエン手を重ねて目の前にかざした。
    「はあ? 知らないよ」
    「あなたも考えてくださいよ。あ、これなんかどうです」
    「うるさいなあ、そんなの興味ないってば」
     押し問答をしているうちに、ムラっときたミスラに押し倒されて結局その話は流れていった。
     偶然開いていたページがペアリングだっただけで、別にオーエンは欲しいなんて思って見ていたわけではなかった。それなのにミスラがあんなにも食いつくなんて、もしかして……誰か渡したい相手でもいるのだろうか、なんて考えが頭に浮かんで離れない。気になり始めるとミスラどころではなくなっていく。考え事をしていると勘づかれたのか、ガブリと肌に噛みつかれ、そこからはしつこくてあまり覚えていない。
     ソファーに沈む気怠い体を動かして、オーエンは体から落ちかけていた毛布を手繰り寄せた。さっきの懸念を思い出すとわずかに胸が曇り、絡まる足を引き抜いて丸まってみる。下敷きになりぐしゃにぐしゃに汚れた雑誌が、ばさ、と床に落ちる音がした。

     疑わしきことはまだ続く。
     先週の日曜日だって――隣で歩くミスラの腕が時折ポケットを触るのを片目で見ながら思い出す。がり、とリンゴの芯まで噛みつくと、口の中に薄く苦味が広がっていく。
    「きみ……誰か気になるやつでもできたの?」
     ベッドに寝転んで隣に座るミスラの背中を見上げて言った。下着に足を通し、「ああ、どうりで小さいと思ったら」と足首まで戻すと、脱いでくるまった下着がオーエンの顔に降ってくる。
    「わっ……おい、お前……!」
    「え? 何か言いました?」
     長袖の襟首を頭にひっかけながらミスラが体ごとオーエンを向く。布団の中で自分も下着に足を通しながら、ミスラにもう一度さっきのセリフを言ってみる。意外にもミスラはぴくりと体を揺らし、大きく反応を示した。
    「どうしてそう思うんです」
    「だって、最近こそこそしすぎじゃない? 今週だって仕事もないくせに僕と会ったのだって今日だけだし……いったい何企んでるの?」
     ミスラはオーエンのそばに横になると、体をぐいっと抱き寄せた。いきなりちゅっと唇に軽く触れられ、オーエンは目をしばたたかせる。「ねえ、聞いてる?」と離れていく顔をじっと目を細めて視線をやれば、ミスラがふいっと目を逸らす。
    「別に、何でもありませんよ」
    「本当に? 怪しいなあ。そんなに忙しく何かに夢中になってさ、誰か狙ってるやつでもいるんだと思ってた。……ああ、わかった。そいつにプレゼントでもしてやるつもりでしょう? そのために僕に色々聞いてきたんだ。ふふ、僕には全部お見通しだよ」
     薄ら笑いを浮かべミスラを見つめるが、ミスラは少し考えるそぶりをして口を開く。
    「まあ……そう言われると、違うとも言えませんね」
     曖昧な返事にオーエンはむっとして眉間にしわを寄せた。違うと言えば許してやったのに。自分から聞いておいて何だが、正直面白くない。そんな思いが、唇に強く力が入る。
    「まあ、そんなことどうでもいいじゃないですか。今、何時です? ふあ……今日は珍しく眠れそうだな……」
     ミスラが腕を伸ばして携帯のロックを開ける。ちらりと見るだけで、腕がぽすんとベッドに落ちた。
    「お前、散々しといて先に寝るとか……ねえ、聞いてる?」
    「連日……遅くまで悩んでるので眠いんですよ……あ、今なら寝れそう……」
    「は? おい、ミスラってば」
     ミスラの体を揺らしてもまぶたのひとつすら動かない。今日に限って深く眠ってしまっているようだった。
    「ムカつく……」
     くうっと寝入るミスラの腕は、意外にも簡単に解けた。その時落ちた携帯に目が引き寄せられる。スケジュール管理のアプリが開いたまま、それをつい覗きこんでしまう。
    「次の週末、全部バツばっかり……ハロウィンの後なのに、月曜日まで?」
     月曜日といえば、もう十一月だ。誰かが共有で管理しているのだろう、他の予定は細かく書いてあるのにこの数日だけは予定が埋まっていることが見た目で分かるだけで、その詳細はぼんやりとしている。
    ――もしかして、誰かと会うつもりでも……?
     そう勘づいたオーエンは、思わず指を携帯へ滑らせた。ミスラはその中の一日が何の日なのか覚えていないのだろうか――口元を指でさすりミスラの顔をちらりと見る。さすがにわずかな罪悪感を抱くも画面を押す指は止まらない。
     ミスラが少し身じろぎをする。それに驚き心臓がどくんとひとつ大きく鳴った。うるさく騒ぐ胸中を黙らせるように完了のボタンを一度押す。
     ポンッと軽快に変わる画面を、すぐさま裏返してベッドに伏せる。これぐらいなら可愛げのある悪戯だし、きっとそいつといい雰囲気になっているところをこれで邪魔をされた時の顔を想像すればそれも悪くない。何なら間近でそれを見てやりたいと思うほどだ。
    「ふふ、楽しみだね」
     オーエンは来週への期待に胸を膨らませながら、ミスラの腕の中にもう一度潜り込んで目を閉じた。

     そうして今日を迎えたのだが、ミスラはすんなりと誘いに応じてこうしてぶらぶらと目的もなく隣で歩いている。
     気づけば少しずつ人の流れが緩やかになっていく。思う存分騒ぎ立てた若者も次第に数が目に見えるほど減っていった。終電に乗り遅れる前に、と走るやつらとすれ違いながらふたりは通りかかった公園のベンチに座る。まだ夜は少し寒いぐらいで、これぐらいの気温なら上着ぐらいで十分だった。
    「はあ……疲れましたよ。もう満足したんじゃないですか」
    「うん。満足した。楽しい週末だった」
    「夜になって急に外に出たいとか言って、一体どうしたんですか?」
    「別に」と前を見てつぶやく。「そういう気分だっただけ」
     辺りに沈黙が流れる。時々遠くで車が行き交う音がして、そのライトの行き先をふたりして眺めていた。
    「せっかく今日はあなたの我儘に合わせてやったんですから、もうちょっと楽しそうにしてくださいよ」
    「楽しいよ、とっても」
     言いながら、自分は本当に何をしてるんだろうとオーエンは大きくため息をこぼす。まだ吐く息は白くない。それなのに体はぎゅっと縮こまる。
    「日付ももうすぐ変わるし、はあ……俺の予定が丸潰れじゃないですか」
     それを狙ってたのだから、ということは口にできない。自分でも馬鹿らしくなってきたところなのだ。返事をせずにいると「オーエン」と名前を呼ばれた。
    「嬉しくないんですか? もうすぐ明日になりますよ」
    「……何のこと?」
     視線が揺れて、前を向いたまま答える。まさか、という思いで少しだけミスラの体の端を視界に入れた。
    「はあ? 明日はあなたの誕生日でしょう? 忘れたんですか?」
    「へえ、きみ……覚えてたんだ」
     目を丸くしてミスラの顔を見れば、ミスラはぽかんとした顔をする。
    「当たり前じゃないですか。去年だってプレゼントしてやったでしょう。ケーキとか、菓子とか、ありったけ用意して」
    「でも、お前……最近変だった。そわそわして、柄にもなくあんな指輪なんか欲しいって言ってみたりして。だから僕の誕生日なんて忘れてると思ってたんだ。今日だって、本当は誰かと会う予定だったんじゃないの?」
    「ええ、そうですよ」
    「ほら、そうだ。僕の思ったとおり――」
     ミスラに体を向けると、手を引き寄せられる。手のひらに何かが乗って、硬いものが肌に当たる。
    「……何?」
     開いてみれば、輪っかがふたつ、暗闇の中で電灯の灯りにきらりと光っている。
    「こっちの大きい方が俺ので、こっちの小さい方があなたのです」
    「は?」
     その言い方が気になり視線を上げれば、ミスラは頭を掻きながら少し不貞腐れた顔を見せる。
    「本当ならこんなところで渡すつもりはなかったんですけど。あなたのせいで俺の計画がめちゃくちゃですよ」
    「これ、僕のために? お前が? 付き合ってもないのに?」
     手のひらを動かすと、カチンと小さな音が鳴る。
    「俺も新しいのが欲しかったので、まあ、ちょうど良かったです」
     何度も感触をたしかめているとミスラが左手を差し出した。
    「ほら、あなたはもうすぐ誕生日なので、特別に一足先につけさせてやりますよ」
     何それ、と思いながら、言われたままリングを持ってミスラの指をそっと持つ。ピッタリと合うサイズが、関節で引っかかりもたつくと上からミスラの指が重なり押し込まれた。他の指にはめられた大きめのリングと少し違うそれだけが、ひときわ目立つ。
    「似合います?」
     唇の端をぐい、とあげてミスラは自分の手を嬉しそうに眺めている。「似合うわけないだろ」と喉元まででかかるが、舌がもたついて声が出ない。
     あれもこれも、それも、全部、この日のために――。
     蘇る記憶にじわじわと、背中が熱くなるのを感じる。ごくりと唾を飲み込むと、一気に頬が茹るように熱くなっていくのが分かる。
    「あはは。真っ赤になってますよ」と言われ、びくりと肩が跳ね上がる。「口の周りが」と言われ、何だそのことかとほっとしたのも束の間、顔に手が伸ばされる。
     頬を滑る手の、金属の感触に一瞬冷やりとする。でも、指先はその分、温かい気がしていやに優しい。唇を親指で触れられる。そこに残る甘い蜜に親指がひっかかりながら、ゆっくりとなぞっていった。
    「お前が僕に優しいの、何か変な感じする」
    「まあ、年に一回ぐらいはいいんじゃないですか」
     近づいてくる顔を見ていたい気もするが、ミスラが目を閉じたので、一緒になってまぶたを下ろした。
     口元に吐息がかかる。
     唇を開いて、ちょっとだけ顎を上げて。ぎゅっと指を握り、手のなかでリングを弄びながら、あと少し、もう少しと近づいていく。

     ピピピピピピッ――。

     けたたましくアラームが鳴り、二人は慌てて体を離した。
    「何ですか、こんな時間にアラームなんか……は? 俺の携帯から?」
     ごそごそとポケットを探るミスラが携帯を取り出した。「二十三時五十五分? 誰がこんな時間に……それに何ですかね、これ……」画面をタップするミスラを見て、オーエンははっと思い出す。
    「あ。ミスラ! それ貸して!」
    「はあ? 何ですかそんなに狼狽えて……あ、ちょっと返してくださいよ! それ俺の携帯なんですけど……!」
     ミスラの手から奪い取り、見えないように背を向ける。画面を触るが咄嗟のことでうまくいかない。そうこうしているうちに後ろからミスラが抱きしめ、体をはがいじめにされると身動きが取れなくなった。これでは画面を操作できない。
    「ちょ、ちょっと! 離せよ」
    「あなた、俺の携帯に何したんですか? 返してくださいよ」
    「絶対に嫌」
    「なら、それはいいのでほら、指、出してくださいよ。あなたまだ付けてないじゃないですか、俺がせっかく用意したプレゼントを」
    「それも嫌だ」
    「はあ? さっきからあなた何なんですか、もしかして俺のプレゼントが気に入らないとでも?」
    「違う……それは欲しい。けど、今は手が離せないんだって!」
    「はあ? 何ですかそれ……あ! こら! 暴れないでくださいよ」
    ベンチがギシギシと音を立てる。
     手の中で潰れてしまえばいいのにと、携帯を力を込めて握りしめた。これだけは、絶対にバレたくない。

     『もうすぐ僕の誕生日だけど』

     画面に浮かぶ文字を消してしまいたい。
    今すぐ逃げ出したくなるのに、ミスラのせいで動けない。
    「最悪」
    「何ですって?」
    「はあ……もう、うるさいな」
    振り返って口を塞ぎ、何度も甘く吸い付くとミスラは大人しくそれに応じてくれる。肩に手を回して片目を開けるとそっと指を動かした。これでもう大丈夫だと、目を閉じて体を寄せる。とても長いような、あっという間に過ぎ去るような甘い時間が過ぎたころ。
    「ねえ、つけて」
     指にはまるものをうっとりと見ていると、ミスラもつられて機嫌がよくなっていた。タクシー乗り場まで、ふらふらと立ち止まっては顔を寄せ合う。
     来年もこうやって……オーエンはそんなことを考えて思わず左手を前にかざしてみた。随分と恥ずかしいことをしてしまって手を戻す。
    「来年は何にしようかな」
     隣で同じことをしているミスラを見て、「馬鹿みたい」と口元だけでオーエンは小さく笑った。
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