因習村───✕✕村△年〇月───
大規模な寒波到来につき、村人の一割が凍死。同年同月、大雨による河川の氾濫により八割中二割が死亡、及び行方不明。
✕✕村発足以来史上最悪の年となったのは間違いない。
著:不明。『生贄の歴史』より抜粋
「悪く思うなよ、オロルン」
悪い。そう少しでも思っているのなら、こんな決断に踏み切らないで欲しかったと思うのは僕だけだろうか。でもきっと、そんなことを言ってしまえば目の前のおじさんは酷く困った様子を見せて、僕の前で泣きそうな顔をさらけ出すことになってしまうのだろう。だから、こういうしかないのだ。
「思ってないよ、そんなこと」
案の定、おじさんはあからさまにほっとした様子を見せて、すまない、すまない、と何度も謝りながら飾り立てられた僕の手を両手で握った。
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