無題手にしたお猪口にとくとくと日本酒が注がれ、とっくりが完全に離れる前に私はそれを一気に飲み干し、また差し出した。「そんな飲んで帰れるわけ?」心配してくれるベルトさんに、「近くのホテル泊まるから」と笑って返す。「ベルトさんも一緒に泊まる?」なみなみに注がれたお酒を少しだけ口角から零しつつも胃に流し込み、けたけた陽気に問いかけた。馬鹿言うんじゃねぇべ。なんて、いつもみたいに諭してくる姿を想像して。でも返ってきたのは熱い眼差しと、口元に当てられた温い親指。「…え…お、お兄さん…これは…」「あのさぁ俺、これまで散々警告したよな。あんま気ぃ許すなって。……庶務課の上司さん怖えからやめといたけど、そろそろ限界」唇から指を離すと、ベルトさんはぺろりと舐めた。酔い潰れて歩けなくなっても、ベルトお兄さんがしっかり介抱してあげるから安心しな。脈拍が早くなって酔いが早く回ったのか、私はそこで意識を手放した。
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