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    poppokyo

    @poppokyo

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    POIPOI 13

    poppokyo

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    kkobワンドロやりたかったけど今さら上げるのもなぁと思ったのでここに供養。終始ギャグです。モブが出ます。

    今さら 火影塔の窓に朝日が差し込んだ。
     昨晩、六代目火影に休暇を言い渡されたカカシは、当然のようにその命令を無視して出勤し、里長である男の元へ向かっていた。

    「あいつが休みなしで働いてんのに…オレ一人休めるわけがないでしょーが」

     そう独りごちる。執務室にいるであろう男とカカシはかつて水と油の関係であったが、とある任務をきっかけにその関係は修復した。当時少年だった男を庇って失ったカカシの左目には、今は彼の左目が居座っている。カカシは何よりその目の贈り主を大事に思っていた。
     どんな困難や喪失が降りかかろうと、この最愛さえあれば乗り越えられる。それに、休日返上で彼の業務をサポートすれば、二人で過ごせる時間が増える。廊下を歩くカカシの胸の内には、そんな下心が存在していた。

    「入るよ」

     扉をノックし、返事も待たず執務室の中へと入る。いつもの椅子に姿がない。
     見つからないことを疑問に思い、カカシは廊下を通りがかった先代火影補佐のシズネを呼び止め、部屋の主がいない理由を聞いた。

    「オビト様なら、今日はお見合いで里外に出られてますよ?」
    「は…!?オ、オビトが、お見合い!?」

     そして、唯一晒している右目を大きく見開き、驚愕した。

    「え…ええ、そうです。聞いてませんか?」

     シズネの返答が何だか遠くに聞こえる。

     見合い ─ 結婚を希望する男女が第三者を仲介して会うこと。またその慣習。

     優秀な脳内辞書が自然と言葉の意味を叩き出す。呆然自失となったカカシは「見合い…」と小さく呟いた。

    「オレ…聞いてないんだけど…」

     瞳孔の開いたカカシの片目が忙しなく泳ぐ。

     カカシとオビトは恋人関係、というわけではなかった。付き合ってはいなかったが、二人は所謂、肉体関係を持ったそれであった。
     その関係が始まった理由は諸々あったが、お互いこの歳まで独り身が続く男同士。過ちを犯した夜は一度や二度ではない。何ならお互いの両手両足の指の数を足して、それに十をかけても足りないくらい、カカシとオビトは逢瀬を重ねた間柄だった。
     火影を目指す…否、火影となったオビトの邪魔にはなりたくない。周囲に知られることもなく、何となく告白もせずにずるずるとそんな関係を続けてはいたが、二人はお互いを唯一として信頼し合っている関係であり、カカシはずっとオビトに想いを寄せていた。そして、オビトもそうだと思っていた。

     シズネは「おかしいですね」と顎に手を当て首を傾げた。

    「六代目火影補佐のカカシさんが知らないなんて…私はてっきり、護衛として見合いの場にお供するのかと…」
    「ど、どういうこと!?詳しく教えて!!」

     鬼気迫る勢いのカカシにシズネは「あひィ!」と変な声を上げて仰け反った。

    「その…先日、隣国の大名との会食の際に御息女との見合い話が進んだらしく…昨晩私が呼び出された時にオビト様から、『明朝早くに出立して留守にする。カカシの奴もいないから、シズネの方で出来る限りの業務を進めておいてくれ』と指示を受けまして…」
    「なに…それ……」

     カカシはたった今耳にしたばかりの内容を頭の中で反芻し、信じられないと顔色を青くした。

    「と……とにかく!その見合いの場所は何処!?今から本人に直接話を聞きに行く!!」
    「え!?でも、お見合いですよ!?」
    「いいからッ!早く!!」
    「あひィー!?」

     剣のある表情で押し迫るカカシに、シズネの素っ頓狂な叫びが早朝の火影室に響き渡った。


     ◇ ◇ ◇


     所変わって、ここは隣国の高級老舗料亭。
     黒の紋付羽織袴を纏ったオビトは、貸切された畳部屋の一室にて静かに端座し、縁側から覗ける四季折々の中庭を眺めていた。
     懐中時計を確認する。予定された時間ぴったりだが、今日の見合いを取り付けた大名の娘はまだ来ていなかった。外は雨が降っているから、もしかしたら道中に足を取られているのかもしれない。

    「はぁ…」

     雨音の中にため息が混じる。中庭の紫陽花が天の雫を受けて美しく輝いていたが、オビトの心は憂鬱だった。
     その原因はわかっている。火影である自分の補佐役でもあり、最愛の相棒ともいえるカカシに黙って見合いを受けたからだ。事前に伝える勇気は出なかった。それだけオビトはカカシに本気になってしまっていた。
     この見合いを受けた理由は、自身の火影という立場や結婚適齢期であることなど、要因は様々であったが、オビトの中で主な割合を占めていたのは、やはりカカシという存在だった。
     いつかはやめなければ…と思いながら、この歳になるまでずるずると肉体関係を続けている。カカシとは体と拳で散々語らってきた仲だが、その想いを口にしたことは一度足りともなかった。お互いがお互いを大切に思う気持ちは何となく理解していたが、ハッキリとした告白がカカシからない以上、つまりそういうことなのだろう。カカシとそういう行為をする度に、オビトの中では虚しさが募っていった。
     そんな中で降って湧いた見合い話。大名から勧められたその話に、オビトは(これだ)と閃いてしまった。正直にいえば、オビトは今のカカシとの関係に不満があった。カカシのことは嫌いではない。むしろ深く愛している。だからこそ今の爛れた関係をキッチリと清算して、ちゃんと幸せになって欲しかった。
     カカシとは同年代。愛を語らえる恋人を見つけ、結婚して、家族を作る、人並みの幸せを得る時期だ。そうであるから、一つ年上である自分がリードして今の関係に引導を渡してやろう…と。オビトが考えるそれは、自分の気持ちに折り合いをつかせる為の強行策でもあった。

     この地域の気候である五月雨の中、到着した大名の娘をオビトは複雑な感情を抱きながら、笑顔を貼り付けて迎えた。
     何も生半可な気持ちで見合い話を受けたわけではない。相手に失礼のないよう、オビトは誠心誠意応えるつもりでいた。

    「お待たせしてしまい申し訳ございません………重ねての失礼となり、大変心苦しく思うのですが……」

     だからまさか、その遅刻してきた見合い相手の娘から破談の話を切り出されるとは思わなかった。
     どうやら父親である隣国の大名が勧めた手前、会食の場では断れなかったようだが、その娘にはすでに想い人がいた。いわゆる身分違いの恋。オビトとの見合いが決まり、一緒になることを諦めかけた時、その想い人から決死の告白を受けたらしい。胸を打たれた娘は父親にかけ合い、言い争いになっている内に約束の時間に遅れてしまったという。

    「最後には父も認めてくださり…その代わりに、この場は私一人が責任を持って謝罪を……」
    「そうか…それはよかったな」

     オビトは心からそう思った。柔らかくなった微笑みに娘の目が見開く。てっきり責められると思ったのだろう。困惑の表情を浮かべた娘に、オビトはぽつりぽつりと雨音のように静かに、その理由を話していった。

    「そうだったのですね。貴方にも想い人が…」
    「ああ…だが、オレとあいつが結ばれることなんて…」

     自嘲めいた顔でオビトが俯いた、その時。
     ──ガララッ!バン!

    「その見合い……待った!!」

     突然、障子の向こう側から現れたカカシにオビトの心臓は大きく跳ね上がった。カカシは目を見開いて固まったオビトの両手を取り、真剣な眼差しで顔を覗き込んできた。

    「オビト…お前、結婚するのか…?オレ以外の奴と…」
    「!………今さら……今さら何だよッ!お前…ッ!」

     右目から涙がこぼれる。刻まれた傷痕を伝った雫を、カカシの指がそっと拭った。

    「お前が好きだ……伝えるのが遅くなってすまない」
    「バカカシ…っ!オレも…!」

     抱き締め合うカカシとオビトを目にした娘は、二人が結ばれた姿にいたく共感し、身分差やすれ違い、そして隔たりのある恋を応援する為、原稿用紙と筆を手に取った。そうして発売された本は国を超えて話題となり、ドラマ化を経て『戦場のボーイズラブ』というタイトルで映画化されるのであった。


      終わり
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