ハッピーエンド前線異常なし「漸くディルック殿にも婚約者が!」
「安心ですね」
「式の際には是非とも……」
ちょっと何を言っているのかわからない。
婚約者? ディルックさんに? 誰が? イメージが全くもって湧かない。よくわからないが多分美人だろう。ホールに入るや否や、急に大量の視線が蛍とディルックに注がれると、ドドドドッと地鳴りかと思うくらいに音をたてて駆け寄って来て浴びせられた言葉の嵐。いきなりのことに蛍は状況を吞み込めない。周りを取り囲む人、人、人。パーティーとはもっとお上品で華やかなものかと蛍は思っていたし、このような名だたる人物や権力を有した一族等が集まるこのパーティーなんて、蛍が抱いていた「おパーティー」像の権化であるはず。口々に詰め寄る人の群れとディルックを目が回るほどに交互に視線を動かすしかない。想像と違った光景に全然ついていけていない蛍だが、ここに来る前にディルックに言われたことを、ただ、ただ、頭の中でもう一度唱えた。
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