【ラビ×リュカ小説本サンプル】La crique embrasse la chanson旅に出て一年が経つ。伝聞や噂を頼りに渡り歩いてきたが、結局どこも徒労に終わった。
やりくりしてきた金ももう心許ない。
やはり噂は噂でしかなかったということなのだろうか。
次の町で最後にしてしまおうという気持ちが徐々に強くなってきている。
もし次も駄目で諦めて中央に帰ることになるとすればオレのこの一年は全く無駄で、
実りのない日々を送ってきたというわけだ。
そんなオレを中央では嘲笑っているやつらもいるだろう。
曲を作れないまま一年間を棒に振ったオレに、帰るところなんてあるのだろうか。
あれにさえ会うことが出来れば、何か変わるという思いでここまで来た。
メッキが剥がれ、気狂いになってしまったという奴もいるかもしれない。それでもいい。
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