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    torara0821

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    57FESTA!!開催おめでとうございます。何も無いよりは…と思い少しだけ展示で出させていただきます。
    以前上げた大学生57パロの2人が出会う前の話を冒頭部分のみですがアップしました。

    57大学生パロ マイナス1「けんちゃん、どこ見てんの?」
    小学校低学年の頃だろうか、同級生によく言われた言葉だ。
    学校の階段の踊り場の隅、教室のロッカーの中、友達の後ろ、特段なにかある訳では無い。
    ただふっと視線を捕らわれ何もない事を確認するだけ。
    それがなぜなのか自分でも分からなかった。

    高学年になり三者面談で先生に言われた事は覚えている。
    「知能指数が異常に高く友達とは必要最低限しか接しないんです。ただ灰原君とだけは特段に仲が良く談笑していたりもしますがほかのクラスメイトとは…」
    言葉を濁すように言われた。
    けんちゃんは賢いだけだよねー!雄君は幼なじみだし別におかしくないよねー。と親はさほど気にしていなかったし灰原以外と仲良くする気にもなれなかった。
    お前、ガイジン?と指さされてからかわれる事もあった。
    クォーターと説明しても、理解を得られず小馬鹿にされるだけで無駄な労力だと割り切って以来同学年と馴れ合う気にもなれなかった。

    小学校では友達100人できるかな!みんな仲良く横並びが主流でそれこそその線引きから外れれば問題児扱いだったが中学に上がり友人関係にあまり口を出さなくなるやる気の薄い先生たちのお陰であまり言われる事は無くなった。

    「七海はさ、友達欲しくないの?」
    親の仕事の都合で灰原の家に泊まることは多々あった。
    灰原の部屋は和室だから畳に布団を2組並べていつも一緒に寝る。
    目が慣れて明るく感じる常夜灯を見つめていたらふいに灰原が口を開いた。
    「灰原がいるから別にいらない。」
    「そーじゃなくてさ!それじゃあ前と変わらないじゃん!」
    自分の方に体制を向けて灰原が言う。
    「前って?」
    どうにも的を得ない質問に睡魔が引っ込む。
    「んーなんかわかんないけどこのままだと七海が一人ぼっちになっちゃう気がしてさ。」
    「??」
    一体なんの話をしているんだろう。 開けた窓から夜風が入り布団を肩まで被る
    「七海さ、夢見たりしない?」
    話が変わった?灰原の瞳が真っ直ぐ七海を捉えるからそれに自分も答える。
    「夢ですか?見る時もあれば見ない時もあります。」
    「僕最近同じ夢をみるんだよね、桜が舞ってる中で七海と同じ制服着て笑ってんの。」
    「それは中学の入学式の時の夢では?」
    4月の入学式では風が強く桜が綺麗に舞っていたのを強く覚えている。
    「最初はね、そうだと思ったんだけど制服が違うんだよ。学ランじゃないの。」
    「夢だからある程度事実とは違うのでは?」
    「そうなのかな?それならいいんだけど、その夢見た日はね、必ずお腹痛くなっちゃうの!」
    「なんですかそれ。」
    結局話の意図は分からなかったけど灰原なりに私の事を心配してくれているんだろうな。と思った。それが中学3年の夏の話

    高校は2人同じ所
    成績は七海が上の上に対して灰原は中の下だったこともあり試験勉強に付き合わされて妹がいるからと七海の家で徹夜したこともあった。
    筆記テストは散々だったらしいが灰原の万年無遅刻無欠席と部活(バスケ部キャプテン)での評価が項を生したのだろう無事に2人揃って入学出来た。
    揃いのブレザーに袖を通してネクタイを締め祝入学式という立て看板の前で写真を撮った。

    その頃から同じ夢をよく見るようになった。
    春、桜が舞う中自分と灰原が学ランでは無い制服に身を包んで並んで歩く夢
    自分の夢には更に続きがあって自分より背丈のある人物と小さな人物計3人が出てくる。
    1人は黒髪にボンタン?姿、1人は多分女性、茶色い髪にスカート、もう1人は綺麗な白銀の髪にサングラスをかけて長い手足が特徴的な人だ。
    自分と灰原を含め5人が笑っているのは分かるのに何故が3人は顔が真っ黒に塗り潰されている。
    「一体誰なんだ?」

    夢を見始めた最初の頃は起きるとすぐに忘れてしまっていたが2度、3度と見ているうちにまたこの夢だ。と認識するようになっていった。
    家に遊びに来ていた灰原に初めてこの話をしてみた。
    「七海も見たの!!??」
    真っ黒な目をまん丸にして灰原が食いついた。
    「えぇ。中学の時に灰原が話してたのを覚えていただけだと思いますが。」
    「お腹痛くなんなかった!?」
    「なりませんよ。」
    えっ!?なんでよ!!僕だけ?おかしいな。と頭をぐしゃぐしゃに掻き乱して講義する灰原が可笑しくて笑いあった。
    その日は夏休み初日で部活も無いということもあり灰原が家に泊まり自分はベットで灰原は敷いた布団で並んだ寝た。

    夏休みといえば部活が1番盛り上がる時期だ。甲子園や全国大会、発表会に展示会。
    灰原も例に漏れずバスケ部の地区大会でレギュラー入りしていた。1年生ながらも優れた洞察力、ポジショニング、そして圧倒的な跳躍力で余らせて困るほど居る部員の中から抜擢されたのだ。
    「今日勝てれば全国大会に行ける!頑張る!!」
    おにぎりの絵文字付きでメールが鳴ったのが朝一番
    その日七海は朝から落ち着きが無かった。
    いつもなら母と灰原くらいしかやりとりをしない携帯電話がやけに気になり開いては閉じを繰り返していた。
    そんな七海は今病院のベットの隣で簡素な椅子に腰掛けて宙を見上げている。
    「雄が病院に運ばれた!!」
    灰原のおばさんから電話があって嫌な予感は的中したと思ったし何故がまくし立てるように病院の場所を聞いた。
    試合中相手チームに灰原は完全にマークされてたらしくプッシングやブロッキングで灰原を牽制し続け挙句肘でみぞおちに強烈な一撃。その衝撃で倒れた際に頭を強く打ってすぐに目を覚まさなかったそうだ。顧問の先生もやられた!と思ったらしい。
    「七海、大袈裟だよ。」
    運ばれる途中で意識も取り戻したし幸い命に別状は無かったが頭を打ってるので経過入院となった灰原が笑った。
    「本当に大丈夫ですか?」
    真っ白でシミひとつ無い天井から隣にいる灰原に視線だけ送る
    「大丈夫だよ。お腹は痛いけど。打撲で済んだし。」
    ほら。とシャツを捲り大きく赤紫になったお腹を見せる灰原
    「…っ!!見せなくていいです!!」
    朝、灰原からのメールを見た時からずっと嫌な予感はしていた。それが何かもわからなくて朝ごはんに食べたバターたっぷりのパンの味も覚えてないし前から楽しみにして読み始めた本も目が滑って集中出来なかった。
    見つめていた天井がエフェクトがかかるようにじわっと揺らいだ。
    「七海、泣いてるの?」
    Tシャツの袖をくんっと引かれて覗き込む真っ黒な2つの大きな目
    「死んじゃったかと思いました…」
    言葉にしたらダメだと思ったけどそれを言ったとたん瞳いっぱいに溜めてた涙が溢れ出した、ポロポロと頬を伝い顎先に留まりぽたぽたと雫となって落ちる。
    「試合でやられたくらいでそんなわけないじゃん!今回は大丈夫だよ!」
    自分より少し大きくて厚い手が頭をわしゃわしゃとかき乱す。
    「七海、大丈夫だよ。僕は生きてる。」
    何故こんなに涙が溢れるのか何故こんなに胸が苦しいのか灰原が死んじゃう!と何故思ったのか分からなかった、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
    ただ一日中胸に引っ掛かってた棘のようなものが抜けた。そんな気がした。

    あれから灰原は異常なしとしてすぐ退院して部活にも復帰出来た。
    夏休みも終わり金木犀の香りがあちこちからする今となってはあの衝動的な涙や焦燥感は分からない。
    ただ1つ灰原のお腹のアザだけは消えていないのがなんとも不思議だった。
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