よめない感情 人と相対している時、相手が自分の左右どちらの目を見ているのかなんてわからない。けれど僕と相対する相手の見ている目がどちらかはすぐにわかる。なぜなら僕が隻眼だから。
僕と相対する人はもれなく、僕の左目を見て話しているんだろう。それがなんだか面白いと思ったのは、いつからだったろうか。
「ふっ……どうやら舞台は整ったようだな」
あちこちを警察が行き交い、所々で火の粉が上がる交差点、それらがよく見える高層ビルの屋上に降り立ち、満足げに見下す。"ストレイキャット"という怪盗名がよく似合う高所だ。我ながらいいロケーションだと一人頷く。まぁ、この場所を探すのに手間取り、今日もまた遅刻してしまったのだが。
1912