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    アラカタ

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    アラカタ

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    しろやさんとあおつきさんとたかおさん
    ラストッ!!!

    改めてREDあたなる謎解きおめでとうございました!
    舞台設定ゆるゆる雰囲気小説終幕となります、温かい目でご覧ください

    #REDあたなる謎解き

    真の黒幕はだれ?「どうやらお困りのようだね、ブルームーン」

     背後から声がかけられる。怪盗ブルームーンはその声が誰のものかもうわかっていたが、その声の主を振り返る。そこには予想通りというべきか、頭から足先まで真っ白な怪盗――怪盗スノーマンの姿があった。
    「…………スノーマンか」
    「ずいぶんと嫌そうだね。どうして?」
     ブルームーンは思わずと言った様子で顔を顰めた。
     先ほど彼が言ったように、確かに今ブルームーンは困っていた。無事この無駄に広い豪邸から宝石二つを盗み出し――一つは宝石とは名ばかりの値打ちもなさそうな石だったが――さあ脱出しようというところで、侵入者対策の罠に嵌ってしまったからだ。彼の長い脚は今床板を踏み抜きいて深く突き刺さり、盗んだ宝石は虚しく地面に転がっていた。
     確かに現状、誰かの助けを必要としている。けれど、叶うならスノーマンだけは嫌だった。なぜなら間違いなく彼は助ける対価に――
     スノーマンは微笑み、告げる。
    「僕が助けてあげる。けれどその対価はもちろんあなたが盗んだその宝石。そのがらくたみたいなのはいいや。ね。それでいいでしょう?」
     あまりにも予想通りの展開に、ブルームーンは深く息を吐く。
    「……わかってるよ。くそ、最悪だ。途中までは良かったんだがなぁ」
    「逃走経路まで確保しておかないからだよ」
     そう言うスノーマンはどこか楽しげだ。彼は律儀にもブルームーンが落としてしまった宝石を拾い上げて自分の懐にしまってから、ひょい、といとも簡単にブルームーンを救い出した。彼にそんな力があるようには見えないから、なにか仕掛けでもあるんだろう。小細工は得意そうだ。
    「ありがとよ」
    「礼を言うのはこっちかもね。盗む手間が省けた」
    「……そうかよ」
    「じゃあ、僕は先に行くね」
     そう言い残し、彼は白い髪を靡かせ窓から飛び降りる。ここは何階だったろうかと考え、考えても意味のないことだと思考を放棄する。雪だるまが溶けたかのように彼がいた痕跡が綺麗さっぱり消失した室内で、自身もまた早くここから立ち去ろうとブルームーンは足を早める。
     スノーマンは脱出経路を確保していなかったとブルームーンを責めたが、なにも全く準備がなかったわけではない。この道をまっすぐ行った先、人気のない倉庫のような場所に逃走経路は確保していた。ただ、そこに行くまでの途中で罠に嵌ってしまったというだけで。
     屋敷の廊下を今度は警戒しながら進み、曲がり角に差し掛かった時、向こう側から歩いてくる人影が見える。一瞬警備員かと緊張が走ったが、どうやら違うようだった。
    「あれ、ブルームーン? まだこの屋敷にとどまってたんだ」
    「……なんだ、今度はイエローセラフか」
    「今度はってなに」
    「いや、独り言だ」
     そこにいたのは怪盗イエローセラフだった。なんだって今日はやけに怪盗どうぎょうに遭遇するなと思いつつ、スノーマンと相対した時より幾分か気が緩む。イエローセラフはまだまだ新米の怪盗で、自分に対して特別敵意もなく、なんであれば先輩として微笑ましさすら感じる。
    「お前も宝石目当てでこの豪邸に来たのか?」
    「うーんそんなとこ。でも先に盗まれちゃったみたいだね。もしかして君が盗んだの?」
    「あぁ。でも、さっきスノーマンに盗まれちまった。残ったのはこれだけだ」
     そう言ってブルームーンは残ったがらくたのような石を手のひらにのせて見せる。てっきりイエローセラフは同情か落胆の声を上げると思っていたが、予想に反して彼はその石をじっと見つめていた。
     ブルームーンは怪訝な表情で彼を見た。
    「イエローセラフ?」
     そう呼びかけると、彼はハッとしたように顔を上げた。
    「……あぁ。ごめん。まさか本当にこれだけだったのかな、とか考えてた」
    「あ、あぁ。いやそれが違うんだよ。本当はもっと綺麗な宝石があったんだけどさ」
    「それは気の毒に」
    「本当だよ」
     ブルームーンは乾いた笑いを漏らす。そんな彼を、イエローセラフは静かに見つめる。
    「……ねぇ、ブルームーン。その石、俺にくれない?」
    「え? こんなんもらってどうすんだよ。大した値打ちもないぞ」
     イエローセラフはぱん、と音を立てて両手を合わせた。
    「ね、お願い。俺新米なのに、手ぶらで帰るとか心象悪すぎると思わない? 人助けと思って!」
    「えぇ……? まぁいいけど……はい、こんなんで本当にいいのか?」
    「やった!」
     イエローセラフは心底嬉しそうにその石を受け取り、大事そうにしまった。その様子にブルームーンはまぁいいか、と思う。彼が嬉しそうなら何よりだ。
    「そんなことよりお前、ここからどうやって逃げるんだ? お前がどこから入ってきたのかも知らないが。逃走経路、確保してるのか?」
    「あぁ。ブルームーンはどうするの?」
    「俺はこの部屋の……ここ。ここから逃げる予定だけど」
     そう言って、逃走経路のある倉庫のような部屋へ入る。そしてその部屋の通気口を指差した。特殊な細工をして、この通気口から直接外に出られるようになっている。……だが。
    「細工の都合上、ここからは一人しか逃げらんねーんだよな……」
    「あぁ。そうなんだ」
     イエローセラフは通気口の方へ歩み寄ってどこか他人事のようにそう呟いた。その様子に、どこか違和感を覚える。
    「そうなんだって……なぁ、お前は逃走経路あるのか?」
    「ん? いや、特に問題ないんじゃないかな」
    「は?」
     遠くから、警備員の足音がきこえていた。もうそろそろ時間はないのだろう。
    「だって、ブルームーンは人の目を奪う怪盗なんだろ?」
    「……あぁまぁ、そうだな」
    「じゃあ、そういうわけで」
     とん、とイエローセラフがブルームーンの肩を後方へ押す。軽く押されたはずなのに、ふらりと体が後ろへ揺らぐ。
     イエローセラフは笑っていた。通気口に脚をかけ、今にも人の逃走経路を奪って逃げ出そうとしている。
     まるで、そうするのが至極当然であるかのように。
    「あとはよろしくね」
    「え……?」
     にこりと笑ったイエローセラフの口元から八重歯が覗いて、ブルームーンはなぜか彼から目が離せなくなった。
     人の目を奪う怪盗の、その視線が奪われる。
     
    「俺に降り注ぐはずだった視線もぜーんぶ、君が盗んでくれよ。――怪盗ブルームーン」

     そう言ったイエローセラフが身を翻したのと、背後で音を立ててドアが蹴破られるのは同時だった。
     いたぞ、ブルームーンだ――そう警備員が言っているのが聞こえる。しかし、怪盗ブルームーンはイエローセラフが立ち去った場所をただ呆然と見つめていた。
     鮮烈なイエローが彼の目に焼きついて、その残像が未だその網膜に止まっていた。

     ***
     
     バラバラバラバラ……と、頭上でヘリコプターが旋回している。リコリスは頭上を仰ぎ見、眩しいものでも見るかのように目を細めてやられたな、と呟く。
     ブルームーンが忍び込んだ豪邸にスノーマンをかち合わせて、外では騒動が起きているような混沌とした状況。その場から逃げようとするスノーマンとブルームーンにさらなる揺さぶりをかけようと目論んでいたのだが。
     どうやらあのイエローセラフとかいう怪盗は、あのの正体を知っているらしい。
    「……あんたのが上手うわてか。イエローセラフ」
     どこか西の訛りが混じった口調でそうこぼすと、普段紳士然とした彼にしては珍しく舌打ちを一つこぼす。ヘリコプターを見つめるその視線に、苛立ちが混ざる。
     怪盗リコリスはしばらくそうして遠ざかっていくヘリを見つめていたが、やがて興味を失したようにその場を去り、彼もまた闇夜へ消えていく。
     彼が遠ざかった道の隅、靡いた彼のマントが草花に当たり、揺らしていった。

     ***

    「いいねぇ。最高の景色だ。それにすごく……楽しい」
     イエローセラフはヘリコプターの梯子から眼下を見下ろし、そう呟く。
    「かの有名な政治家は、かつて一見がらくたにしか見えない宝玉に本当の家宝の場所を示したらしい。そして、あの豪邸の所有者である彼もまたそうだった」
     そう言って、イエローセラフは先ほどブルームーンが手渡してくれた宝玉を眼前に掲げる。月光に照らされた宝玉の奥、鈍く光るその先が、かの東の地の一点を指している。
    「大本命だ。探偵も怪盗もこの答えには辿り着けなかったみたいだけど……でも、十分楽しめた」
     そして、彼はさもそこに誰かいるかのように遠い空を見やる。
    「それに、彼の珍しく悔しそうな表情も見られたことだしね」
     彼の声は弾んでいた。その口元が半月状に弧を描いている。
     さて、と彼はそのまま梯子を登りきり、ヘリの座席へ座ると一つ伸びをする。ヘリは上空を悠々と飛び去っていく。この一連の騒動に右往左往した人間全てを見下すように、その地を去っていく。

    「今日はとても楽しかったよ。探偵、それに怪盗諸君。また次のショーでお会いしよう」

     真の黒幕は誰だったのか?
     その答えに辿り着いた者もまた、そう多くはない。

    【了】





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    改めてREDあたなる謎解き、コラボおめでとうございました!!!
    現地には行けなかった民ですが、Xで流れてきた現地行った方々のお写真だとか関係者さまのポスト・メッセージカードなど……楽しいをおすそわけしていただきました。
    いつもたくさんの楽しいをくれてありがとうございます! 新参者もいいところだったりしますが、これからもこそこそ楽しませていただきます〜!
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




    >あとがき
     黒幕っぽいたかおさんといいように利用されるすりっぷさんの絡みが描きたかった。
     舞台設定とかはさくっと作ってるけど全然ゆるゆるで考えている。











    ↓以下、見なくていい類のおまけを少し挟んで終幕となります。
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    ブルームーン「あ、すまん情報屋。足が滑った」
    1Hit
    リコリス「……おや、すまないね。そこにいたのか。足が当たってしまった」
    2Hit hard
    カズ「つーかまえっ……! んぁ!? なんでりゅーじさん!? ちょ、うわ!! りゅーじさん避けて!」
    3Hit critical

    「かはっ……」
     小さく漏れた声とともに、眼鏡に亀裂が入る。
     装甲(メガネ)欠損。


    エンドB:守れなかったメガネと占い師との約束



    ありがとうございました
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