怪盗ショーの幕間「あははっ。情けないねえ、J。滑稽ですらある」
頭上から降ってきた声に、神辰J威弦Ⅲ世は思わず空を仰ぎ見る。
目線の先、鉄塔の上に降り立った怪盗リコリスは高らかに笑い、怪我を負ったJを見下ろしていた。彼のマントは風に煽られ、モノクルは月光を反射して怪しく光っていた。
Jは血が滲む右腕を押さえながら、苦々しく呟く。
「相変わらず性根捻じ曲がってやがるな、怪盗リコリス」
「どう言ってくれても結構。でも実際、僕が助けてあげたようなものだよね?」
Jは思わず乾いた笑いをこぼした。
「警察連中から視線を逸らすために、盛大に爆竹ぶっ放すことが、か? あの場には子どももいたんだぞ」
「だからなんだというの?」
Jはリコリスの、にこにことしながらこちらへ向ける、その楽しげな表情を見やる。こちらの反応を伺って面白がっているのだ。――ふざけやがって。
Jは密かな反抗心で、すっとぼけたような声を出した。
「さあ? だからなんだろうなぁ」
「……あっそ」
リコリスは吐き捨てるようにそう告げると、心底失望したような目を向ける。 Jの返答に明らかに興味を失した様子だった。まるで、この世でなんの価値もないものを見るかのような視線だ。
リコリスは退屈そうな表情で続ける。
「子どもを爆竹とその落下物から守って怪我とかさ。君、本当につまらないよねぇ。……盗むまでもない」
「そりゃどうも、光栄だねえ」
Jがそう言って笑って見せると、リコリスは嘲るような笑みを返す。
二人が話している間も、遠くからサイレンの音と人の声が聞こえている。それに遠くの空を旋回するあれは――暗くてよく見えないが――ヘリコプター?
Jが怪訝な表情で辺りを見回していると、リコリスは気を取り直したように楽しそうな声を上げる。
「どうやら、怪盗ショーは山場を迎えたみたいだ。僕はこれで失礼するとするよ。こんな面白いもの、特等席で観なくちゃね」
「そうかい」
音がする先へ体を向けていたリコリスはそうだ、と言ってわざとらしくJの方へ身を翻した。
「――君は僕がちゃあんと面白くしてあげるから、首を洗って待っているといいよ」
そう笑うリコリスの片目は、月明かりが反射して窺い知ることはできない。だが、月光に照らされたシルエット、その口元が三日月のように弧を描いているのが見えた。
「……いってろ」
Jがそう言い終わる頃には、リコリスの姿は消えていた。
Jは一人、すっかり人気のなくなった路地を歩く。ぽた、と歩くたびに血が滴り、思わず舌打ちをこぼした。そういえば少女のそばにも血痕を残してしまったか。あれから足がつかなければいいが。
……あぁ、ただ。あの血痕に気づくのがあいつなら、悪くはないのかもしれない。
かつて自分を慕ってついてきた後輩刑事を思い出し、Jは思わず笑みをこぼす。
そしてぽつり、と、誰に伝えるでもなく独りごちた。
「……俺はあの子に『必ず守る』と言った。だからそれをやり遂げたまでだ」
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Q. 関西弁どこいった?
A. おら関西弁さ書けねぇだ。
しのじょにてぇてぇ
こんな関係値だったらアツいなと勝手に思う。
じょにさんかっこよ成分だけ抽出してしまった……