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    めろー

    @mellow__33

    @me11ow_03
    大抵は百合を描くけど、突然、性転換とか描いてポイすることもあるから気を付けてください…
    らくがきメインです!

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    めろー

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    タキオン>>>モル♀な雰囲気です。
    タキオンは学園卒業後。モル♀はトレーナーを続けていて、交流はあるけど付き合っていないです。
    ちょっとほろ苦いですよ、タキオンさん。

    きのこ帝国さんのクロノスタシスをループで聴きながら読んでください(強制)

    🕛🧪と🐹
    ハマってしまった『クロノスタシス』by.きのこ帝国

    ……



    いつもは。
    いつもなら。
    こんな時間まで、アルコールを摂取することなんてないのに。

    1日を24分割した、1日という概念。
    もうじきに1/1になってしまうな。
    試そうと思っていた、あの実験も手に付いていないのに。
    …全く。君を呼んだせいだ。

    君が明日は休みだから、なんて私を誘うから。

    君の半ば強引な提案に、首を縦に振らされた。
    そんな私は被害者なんだ。

    「タキオン、私、酔いすぎちゃった…あはは」

    なんて顔を少しほてらせた君は反省もろくにしてないように。
    いつものように、笑っている。

    いつも通りではない私と。
    いつも通りの君。

    ねえ、と君は…。
    私の手を引いた。

    「夜風に当たりに行こう」

    いつもなら断るような彼女の提案。
    なのに。
    私はまた、首肯してしまう。
    …何も言えないまま。

    歩いて10分ほど。
    行く当てもないまま、まだ続く他愛無い話。
    無邪気な君に引かれるまま。
    走光性のある生物にでもなってしまったかのように、君と私は眩し過ぎるコンビニエンスストアに飛び込んだ。
    君はこんな時間なのにピザまん。

    「この時間でも売ってる!やった!」

    と、売れ残りに喜んでいる。
    私は…。
    スリーファイブオーエムエル。
    君の真似。
    君を酔わせたという、飲み慣れないアルコールを買ってしまった。

    コンビニから抜け出して、また2人で夜の道。
    暗闇に溶ける。
    君はピザまんをぺろりと平らげる。
    そんな君を横目に歩きながら、缶を開けて。
    麦芽、ホップ及び水を発酵させて作られたその飲み物を一口。

    ああ、…苦い。
    好きな味ではない。
    好きじゃないのにな。

    「タキオン珍しいね、いつもビールなんて飲まないのに!」

    君の楽しげな声、目元、唇。
    どうしてかな。満足してしまうよ。
    あかりもないのに。
    君だけはよく見えるんだ。

    真夜中の公園。
    最後に通ろうって、君が言うから。
    …引っ張るから。
    また繋いだ手のひら。
    少し汗ばんだお互いの手。

    もう肌寒い季節なはずなのに。
    2人ともこの当てのない散歩とアルコールのせいだろう。
    子供みたいな体温。
    もう、子供じゃないのに。
    …そして、もっと。
    あの頃とは違うのに。

    「うわぁ…夜はお昼の時と全然雰囲気違うね、タキオン」

    街灯の光で君の目が輝いている。
    そう見えた。
    私の答えもろくに待たないまま、君は続ける。

    「なんか知らない所に来ちゃったみたい」

    君は変わらない。
    私があの時手を伸ばした光、そのまま。

    そんな君とこのまま、本当に誰も知らない所へ。
    この世界からこのまま抜け出してしまいたい。
    そこで2人きりで、君の、太陽のような君の、誰も知らない秘密を解き明かしたい。
    私だけ。私だけが…。

    こんな独占欲に囚われている私の手から君はするりと離れてしまった。

    3歩先。
    君は踊るように街灯の光の中へ。
    まるでスポットライトだ。

    「幻想的ってやつだね」

    スポットライトを浴びた君の髪がゆらゆらと揺れる。
    まさに幻想的だった。
    遠く感じたんだ。
    あの日々はあんなに近くにいたのに。
    結局は君にとって私は、担当したウマ娘の一人なのか?
    どれだけすごい成績をのこしても?

    過去だけに価値を見出そうとしても、意味のないことだ。
    だからさ。

    今夜だけでもいい。
    家までの帰る道すら忘れて、このまま。
    このまま…。

    …なんて、ゆらゆらした思考を持ってしまう。
    どうかしてる。

    さっきの苦い飲み物のせいだ。

    でも悪くも無いかな。
    逆に。なんだか、ちょっと、いい感じ、だ。
    街灯の明かりの中から、今度は私が君を引っ張り出して。

    …抱き締める。

    公園の、時計の針が…ふと、見えた。
    短針も、長針も、…秒針さえ、深夜0時を指す。

    しばらく、見ているような錯覚に捕らわれる。
    願いが叶ってしまったのだろうか?

    「いい感じかぁ〜。タキオンも酔ってるんだ?」

    彼女の声に、はっと目が覚めるような。

    彼女も私を抱き締める。
    いつも強引な癖に。
    どうして君は、こういう時優しく私に触れるんだろう。

    「…そろそろ帰ろう?…なんとなく、眠くなってきてさ…」

    ああ…。
    どうして君は、私の気持ちを分かってくれないんだろう。
    わがままなんだろう。

    『君、』

    抱き締め合ったまま私は彼女に呼びかけた。
    君の返事がとても近く、でも穏やかに返ってくる。
    それを聞いて、続ける。

    『"クロノスタシス"って知っているかい?』

    先程の時が止まってしまったような現象。
    それは視覚からの錯覚だったのだろう。
    なぜそんな事を彼女に問うたのか。
    案の定、知らない、と君が言う。

    『時計の針が止まって見える現象のこと、らしいよ』

    私は言い切らなかった。
    言い切れなかった。
    本当はそんな事を言いたいわけじゃなかったから。

    このまま、あの頃でもなく、これから(可能性)でもない。
    たった今の、2人きりの時間が止まってほしい。

    …なんて。
    君に素直にこんな弱気を言えない。
    言えるわけないよ。


    おしまい
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