年甲斐もなく湧いた出来心。でも水を与えて育てたのはあんた自身、ならば受け入れてくれるよな?
「ただいま」
「おかえり彰人くん。外暑かっただろう」
「昼ほどじゃねえっすよ。夕暮れ時はけっこー涼しいっす」
ジャンルは似通ってる部分はあれど携わってる仕事自体は違う故に、オレはセンパイから「おかえり」を言われる事の方が多い。付き合いたての頃と言えば大概寝落ちしたセンパイをオレが起こして飯まで誘導するのが常だったが、歳を重ねて仕事も性格も幾分か落ち着いたらしく、こうして顔を合わせる頻度も増えた。
非常に喜ばしい事ではある。しかしオレらの挨拶には口にするのが小っ恥ずかしくなる習慣がある。
「……、?…、彰人くん…?」
小首を傾げるセンパイが要求してるものは、所謂「おかえりのキス」と言うやつだ。
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