いつかどこかの縁日で 砂糖と澱粉で出来た板を、真剣に爪楊枝で掻く。
板には、オールマイトのシルエットが薄く掘られていた。凹凸とカーブが多く、細いところもたくさんある難易度の高い型だ。板自体もそこそこ脆いから、ほんの少しのミスで欠けてしまう。
指先に集中して、かりかりと溝を深くしていく。普段は見惚れる逆三角形の胸板が、今は少し憎い。なんとか削り終わって、板から生じた粉を吹き飛ばした。細くだが、板の向こうに天板が見える。さて次はどこを削ろうかとあたりをつけていたところへ、至近距離から、聞き慣れたブツブツ声が流れてきた。
「そこ難しいよね。オールマイトのトレードマークだから妥協はできないけど髪の根っこと毛先が細いからどうしたって削った時の負荷がそこに」
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