可愛い意地悪を許せ 手洗い場でリップを直して戻ると、見慣れた顔が見慣れない表情を浮かべ、一人公園のベンチでクレープを貪り食っていた。
「なに一人で先に食ってんだてめェ」
「いいだろ別に」
普段の甘ったれぶりはどこへやら、硬い声で返される。何やらぶすくれている幼なじみは勝己と目線すら合わせず、クレープをもりもりと食べ続けた。断面から察するに、具はツナマヨである。
「それ、半分こしたかったんじゃねーの?」
クレープを指して問うと、出久の声のトーンがさらに下がる。
「しない」
「なんで?」
「…僕ら、恋人じゃないし」
勝己はちょっと驚いた。
出久にしては珍しく変な拗ね方をしている。普段は嫌になるほど真っ直ぐだから、「拗ねる」ことそれ自体が不慣れなのだろう。
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