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    出勝

    #出勝
    izukatsu

    「ヴ――、ヴ―――」
    静かな部屋に、携帯電話のバイブ音が鳴り響く。布団から重い腕を伸ばし、光るスマートフォンを手に取ると、着信履歴を見てゾッとした。
    【緑谷出久 不在着信 15件】
    💥「……はい」
    🥦「あっ、もしもしかっちゃん?ごめん何回も電話して。今事務所なんだけど、ちょっと来れない?」
    💥「あ今?……わかった」
    時計を見ると、午後16時半を示していた。(こんなに寝とったンか)と熱く重い身体を起こし、上着を羽織る。ぶる、と身震いすると、起き上がった拍子についたTVから熱中症の注意喚起の声が聞こえた。チッ、と舌打ちをしながらTVの電源を切って部屋を出る。
     家から10分、交差点を越えたところに出久の事務所がある。一応ヒーロースーツは下に着て来たものの、それを着て活動できるほどの活力はなかった。
    🥦「かっちゃん!こっち……って、だいぶ厚着だね」
    💥「うるせー、で何だよ」
    🥦「あ、そうそう、ちょっと今僕だけじゃ手に負えないヴィランの……」
    ぐわんぐわん揺れる視界と頭痛に耐えつつ、火照って赤くなった顔をマスクで隠す。出久は何も気付かずに、呼び出した説明を始めた。
    🥦「……ってことで、君を呼んだんだけど」
    💥「つまり俺は爆破で誘き寄せればいいンか」
    🥦「そう、いうことなんだけど…。お願いしてもいいかな?」
    勝ちにこだわる自分の戦法とは違った役目の作戦に反抗する気力もなく、素直に承諾する。
    💥「早く行くぞ、ガキ捕まってんだろ」
    🥦「う、うん!行こう、かっちゃん!」
    2人は急いでヴィラン潜伏地である廃ビルへと向かった。廃ビルの前まで来ると、さっき説明された通りの行動をとる。俺は裏口から入り、上にあがった。
    チッチッチッチッと、時計が針を進める音が聞こえる。それと同時に、1つの部屋から複数の男の声。恐らくヴィラン達だろう。
     出久の作戦では、俺が離れたところから爆破を起こし、ヴィラン達が気になり焦って動き出した瞬間を狙って、出久が窓から入り人質に取られたガキを助け出す。人質優先、『救けて勝つ』出久の作戦だ。
     ここら辺でいいか、と部屋から少し離れた場所に手榴弾を仕掛けるため隣の部屋へ入った。
     耳に入った音は時計の秒数が進む音、目に入ったものは沢山の時限爆弾。残り2分を示し、一刻一刻と時間は短くなっていた。
    ヴ「そろそろ出るか」
    ヴィランの声が耳に入る。ここで爆破を起こしたら、この爆弾がどう動くか分からない。やべえな、と思った途端、パリンとガラスの割れる音が響いた。
    🥦「僕が来た!!って、あれ?かっちゃんは?」
    ヴ「あ?てめー誰だ」
    ヴ「おい、ヒーローじゃねぇか?」
    人質「ヒーロー…?」
    あぁ、結局グダグダになってしまった。きっと出久はヴィランが部屋を出ようと扉を開けた音を聞き、駆け付けたのだろう。本来なら俺が爆破して、急いでヴィラン達が俺のもとへ駆け付く予想だったから、その場にヴィランがいることは想定外。しかも複数。
    💥「おい、デク!とっととそのガキ連れて離れろ!あと1分で爆破する!」
    🥦「え?!爆破?!どういうこと?!君は?!」
    💥「時限爆だ」
    ヴ「おいおいおい……テメェそんなとこで何してんだよ」
    💥「チッ」
    こいつらとやり合ってる暇はない。早くあの爆弾をどうにかしねぇとこのビルだけでは済まない。
    🥦「かっちゃん!!」
    💥「!!」
    🥦「デラウェアスマッシュ・エアフォース!」
    ヴ「あぁぁぁ!!」
    出久がヴィラン達を拘束している間、俺は残り15秒を切った爆弾をどうしようか考える。駄目だ、頭が回んねー。頭痛や身体のだるさは、時を進める時限爆弾のように深刻になっていた。
    🥦「かっちゃん!上着!」
    💥「!!」
    出久の声を聞き、咄嗟に着ていた上着を爆弾に包み、持ち上げた。あと10秒。出久の割った窓まで駆け寄り、上に投げようとしたその時――。
    🥦「!!かっちゃん!!!」
    視界がガクンと大きく揺れ、ただでさえ速かった脈拍が、強く、より速くなっていくのを感じる。倒れた拍子に、用意していた手榴弾や服に包んだ時限爆弾が床に散らばった。あと3秒。出久は急いで時限爆弾を掴むと一気に上へ投げ、風圧で更に上へと吹き飛ばした。
     見事空中で爆破し、周りの人はなんだ花火かと群がった。

     🥦「かっちゃん!!」
    僕はかっちゃんに駆け寄り、おでこに手を当てた。すごい熱だ。人質の子どもは安全な場所に下ろし、ヴィラン達は拘束しているから大丈夫だけれど、彼の熱はどんどん高くなっていく。警察やヒーロー達が一般市民の誘導やヴィラン達の受け渡しに勤しむ中、僕はかっちゃんを抱えて下に降りた。

     💥(どこだ、ここ……)
    俺は少し軽くなった身体を起こすと、その拍子で膝に落ちた濡れタオルに目を移す。視界に入った掛け布団はオールマイト柄で、明らかに自分の家ではないことがわかった。小さい頃から嗅いだことのある落ち着く匂い。匂いでわかったというと気持ちが悪いが、恐らく出久の部屋だろう。
     隣にあるテーブルにはスポーツ飲料水や解熱剤、体温計などコンビニのビニール袋に入ったまま置かれていた。その近くには見慣れた字の置き手紙。
    『かっちゃんへ 熱あるなら無理したらだめだよ。冷蔵庫にアイスとかフルーツとかもあるからよかったら食べてね、22時ごろ帰ります。出久』
    『気付けなくてごめん。』
    💥(気付かれないようにしとったんだわ)
     カチャカチャ、と鍵を開ける声が聞こえ、予想通り汗だくの出久が部屋に入ってきた。時計を見ると、21時20分。走ってきたのだろう。息を切らして靴を脱ぐのに手間取る出久を見ながらそう思った。
    🥦「かっちゃん、具合はどう?熱は?何度?」
    💥「……おさまった」
    🥦「本当に?ほら、体温測るから腕上げて。うわ汗べったりじゃん、その服脱いで。」
    💥「は、」
    🥦「君ね、熱あるなら無理しちゃ駄目だからね?そりゃあ僕も気付けなくて悪いとは思ってるけど、かっちゃん倒れたの覚えてる?どれだけ心配したと思ってるの?」
    口を挟む暇もなく、マスクの下でペラペラと動く口にムッとしたが、すぐに服を脱がされ、洗面所に持っていってしまった。そのままタオルと着替えを持って戻った出久はまた口を開く。
    🥦「本当にきみは」
    スッと出久の頬に手を添え、マスクの上から唇を重ねる。
    💥「そんなに動く口にはキスできねぇな」
    🥦「!!///」
    出久の顔がみるみる赤く染まった。
    🥦「ちょっ、かっちゃ……」
    💥「はは、ダッセ!」

     子どものように笑う勝己に出久の下半身が疼く。出久は急いで隠すと、今の状況に顔が更に赤くなった。
    🥦(かっちゃん半裸……ベッドの上……)
    思わず押し倒すと、勝己はにやりと笑った。
    💥「エロナードくんは変わんねぇなァ」
    🥦「君がそういうことするから悪いんだろ…っ」
    💥「ん、」
    出久はマスクを素早く外し、直接勝己の唇に自分の唇を押しつける。
    💥「テメェうつってもいいンかよ」
    🥦「いいよ、お揃いだね」
    💥「は?」
    🥦「くちあけて」
    そのまま開けた勝己の口にすかさず舌を入れる。
     
     次の日、出久は熱を出し、勝己は回復し、その後2ヶ月は話のネタとなった。
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