時代とはノックの音がした。
「失礼します」
扉を開けてやってきたのは、新人教官のバイパーだった。
「お忙しい所申し訳ありません、サカキ様」
「どうした、唐突に。問題のある奴がいたか」
「いえ、そういう訳ではないのですが」
「簡潔に言え」
「はっ……。この頃、最終試験に進める者が異様に少ないのです」
「異様に?」
「はい。これはお伝えしなければと思いまして」
「試験の内容自体は、変わってないのだな?」
「はい」
「それはな……」
吸っていたタバコの煙を吐き出した。
「時代だな」
「時代、ですか」
バイパーが重いため息をついた。
「ああ。訓練所の面接官も入ってくる奴の質が落ちていると嘆いている」
「そうだったのですか……」
「これからは多少筆記試験の結果が悪くとも、やる気のある者を上に通すように伝えたばかりだ。これからは骨のある奴が増えるだろう。心配するな」
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