恋をするのは楽しいな霊幻新隆は開き直った。土壇場で面倒くさくなるタイプだが、面倒くさくなったのではなく、受け入れる方向の覚悟を決めたということだ。
そう覚悟だった。
受け入れると決めたのは他でもない、弟子に対する諸々の感情についてだった。
11歳で霊幻の前に現れた男の子は、いまや16歳の少年になっていた。ランドセルと半ズボンからのぞくまあるい膝小僧が可愛かったのが、大きめで誂えた学ランがぴったりと袖も余らなくなって、気づけば優しい黒目はそのままに目つきも顔の輪郭もややシャープな男前になりつつあった。
素直で純で人を疑うことを知らない。心底救いようのない相手にも理解を示そうと努力する。自分の気持ちを伝えることを諦めない。そういう弟子だった。
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