幸せを紡ぐ歌 緑谷と二人で暮らすようになってしばらく経つが、最近妙に緑谷に見つめられることが増えてきた気がする。今もそうだが、隣からとても熱心に見つめているのがひしひしと伝わるような視線だ。ひとまず腹が減っているのかと思って作ったばかりの玉子焼きの端を薄く切り、緩く開いた口に放り込む。
「そんなに見なくても、もうすぐできる」
「ん?」
玉子焼きを咀嚼しながらきょとりと大きな瞳を丸くして首をかしげた緑谷に「腹減ったんだろ」と言いながら、手早く盛り付けを進めていく。つまみ食い防止だとでも思ったのか、そばかすの散ったまろい頬を赤く染め、本人的には睨み付けているのだろう潤んだ瞳で見上げてきた。
「お、お腹は空いてるけどそこまで食いしん坊じゃないよ!」
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