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    PN_810

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    尊奈門のことが好きで好きで仕方ない高坂さんのお話。

    #高諸

    高諸⑦「高坂さん!」

    尊奈門は駆け寄り、にこりと笑った。高坂はその姿を見て、いつものように優しく微笑む。

    「尊、そんなに急いでどうした?」
    「今日は昼休憩が長い日だから、一緒にお昼を食べたいなと思って……ダメですか?」

    高坂は柔らかく目を細めた。

    「ダメなわけがない。……行くか」

    高坂にとって、尊奈門は昔から傍にいる存在だった。小さい頃から「陣にい」と言ってついてきた可愛い弟のような存在で、今も変わらず慕ってくれる。高坂も、尊奈門のことが大好きだった。ただ――尊奈門が自分を「好き」でいてくれる理由は、小さい頃からの憧れからだと思っていた。しかし、それはいつまで続くだろうか。尊奈門は、他の誰かに心を奪われることはないのか。高坂は、考えれば考えるほど苛立ちを覚えた。

    (おかしいな、私は……何を考えている)

    高坂は苦笑しながらも、尊奈門の手に持たれた弁当箱を見つめる。尊奈門は野外演習の日、こうやって自作の弁当を作ってくる。

    「今日も手作りか?」
    「はい!高坂さんの分も作ってきました」
    「そうか。なら、一緒に食べよう」

    高坂は尊奈門の頭をぽんと撫でた。尊奈門は目を丸くして、それから嬉しそうに微笑んだ。そんな笑顔を見せられるたび、高坂の胸は締めつけられる。

    (やはり、尊は私のものだ)

    それだけは、確かだった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    高坂には慕っている上司がいる。
    タソガレドキ忍軍組頭、雑渡昆奈門である。

    尊奈門は、もちろんそのことを知っていた。

    ――高坂さんには想い人がいる。

    それは確かに事実ではあるのに、胸の奥が痛くて仕方がなかった。

    「尊?」

    高坂に呼ばれ、尊奈門は我に返る。

    「すみません、考え事をしていて……」
    「どうした? 何か悩みでもあるのか?」
    「……いえ、大したことでは」

    嘘だった。本当は聞きたかった。

    ――高坂さんの想い人は、もしかして、

    でも、聞いたところで何になる。高坂の気持ちは変わらない。

    「……そうか」

    高坂は納得したように頷いたが、その瞳にはどこか苛立ちが滲んでいた。

    「最近、お前が他の奴と仲良くしているのをよく見かける。誰か、特別に親しい相手でもできたのか?」
    「え……?」
    「違うのならいい。……だが、もしそうなら、私は嫌だ」

    静かで落ち着いた声だったが、高坂の視線は鋭かった。

    「お前は私のものだろう?」
    「……っ!」

    心臓が跳ねた。
    高坂さんは、何を言っているのだろう。

    「私の……もの?」
    「そうだ。昔からずっと、私の傍にいた。これからも、そうだろう?」
    「……っ」

    胸が熱くなる。苦しくなる。

    ――でも、それは私の願いでもある。

    だから、尊奈門は小さく頷いた。

    「……はい。私は、ずっと高坂さんのものです」

    その言葉に、高坂は満足そうに微笑んだ。

    (……なら、それでいい)

    高坂は、尊奈門の肩を引き寄せる。独占欲などという生易しい感情ではない。この想いは、ずっと昔から変わらない。ただ、尊奈門だけがまだ、それに気づいていないだけだった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    尊奈門は、高坂の隣に座りながらも落ち着かなかった。

    (高坂さん……今の言葉、本気だったのかな)

    「お前は私のものだろう?」

    あの一言が、頭の中で何度も反響する。冗談ではない。あの時の高坂の眼差しは真剣で、静かながらも強い感情を孕んでいた。

    (でも、高坂さんは組頭のこと……)

    「尊、さっきから考え込んでいるな」
    「……!」

    はっと顔を上げると、高坂がじっとこちらを見つめていた。

    「別に、何も……」
    「嘘をつくな」
    「……っ」

    尊奈門は視線を逸らした。高坂には隠し事などできない。それは昔から変わらなかった。

    「お前、私に何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
    「……」

    尊奈門は唇を噛んだ。

    (聞きたい、けど……もしも、高坂さんの口から『好きな人がいる』ってはっきり言われたら)

    それを考えるだけで、胸が痛い。

    「私は、別に……」
    「……そうか」

    高坂の声がわずかに低くなる。

    「なら、それでいい」

    どこか冷たい響きを帯びたその言葉に、尊奈門は胸がざわついた。

    (どうして、高坂さんはそんな顔をするんだろう)

    私が本当に聞きたいことを、聞けないから?

    それとも――

    「尊」
    「……はい?」
    「こっちを向け」

    命令するような声音に、思わず顔を上げる。
    次の瞬間、目の前に高坂の顔があった。

    近い。

    「……っ!」

    驚いて後ずさろうとしたが、高坂の手が尊奈門の腕を掴んでいた。

    「逃げるな」

    低い声が耳元に落ちる。

    「お前は、私から逃げようとしている」
    「そ、そんなこと……」
    「ある」

    高坂は静かに言い切った。

    「私のことを知りたいのに、知るのが怖い。違うか?」
    「……」

    その通りだった。高坂が本当に誰かを想っているなら、私には勝ち目がない。

    ――なら、このままの関係でいたい。

    そんな臆病な気持ちが、尊奈門の足を止めていた。

    「尊、お前は馬鹿だな」
    「えっ……?」
    「私は、お前しか見ていないというのに」

    息が止まるかと思った。

    「……っ、そんなはず……」
    「どうしてそう思う?」
    「だ、だって……!」

    (高坂さんは、組頭が……)

    そう言おうとして、尊奈門は口をつぐんだ。高坂は静かに微笑んでいた。それは、どこか優越感すら漂う笑みだった。

    「お前、私が組頭を好きだと思っているんだろう?」
    「……!」
    「確かに、私は組頭を敬愛している。だが、それは恋ではない」
    「……え?」
    「お前が勝手に勘違いしているだけだ」
    「そ、そんな……」

    思考が追いつかない。

    「私は、お前が好きだ」
    「……!」
    「それがわかるまで、待ってやるつもりだったが……やはり待つのは性に合わない」

    高坂は、尊奈門の頬を優しく撫でた。

    「お前は、私のものなんだろう?」

    そう言われた瞬間、尊奈門の中で張り詰めていた何かが崩れた。

    「……はい」

    掠れるような声で、それでもはっきりと答える。高坂の腕がするりと伸びて、尊奈門を抱き寄せた。

    「……なら、それでいい」

    その囁きは、何よりも甘く、逃れられない鎖のようだった。

    ―――

    高坂の腕の中は、暖かかった。それなのに、心臓は痛いほどに跳ね続けている。

    (……高坂さんが、私を……好き?)

    信じられない気持ちと、信じたい気持ちがせめぎ合う。

    「……信じられないか?」

    尊奈門の髪に指を絡めながら、高坂が低く問いかける。

    「そ、そんなこと……」
    「顔がそう言っている」

    くすっと笑う気配がして、尊奈門は余計に顔が熱くなった。

    (こんなに近くで笑わないで……!)

    「お前は、ずっと私に向かってきた。だから、私はお前が隣にいることが当たり前だと思っていた」
    「……はい」

    それは尊奈門も同じだった。

    「けれど――お前がもし、私の手を離れるとしたら?」

    耳元で囁かれ、背筋が震えた。

    「私以外の誰かに、お前が微笑むとしたら?」
    「……っ」

    「そんなもの、私は許せない」

    高坂の腕が、少しだけ強くなる。

    (……そんなこと、考えたこともないのに)

    私が誰かと仲良くして、高坂さんの傍を離れるなんて――

    「……ないです」
    「何が?」
    「私は……高坂さん以外の人を、好きになったりしません」

    高坂の肩に額を押し当てながら、尊奈門は震える声で言った。

    「だから、そんなふうに言わないでください……」
    「……」

    沈黙のあと、ふっと優しく髪を撫でられる。

    「わかった」
    「……?」
    「なら、お前はずっと私のものだ」
    「え……」

    言い返す暇もなく、顎を持ち上げられた。

    「……っ!」

    尊奈門の瞳が大きく揺れる。高坂の瞳は、逃げ場のないほど近くにあった。

    「尊」

    低く呼ばれた瞬間、唇に柔らかい感触が触れた。

    ――ああ。

    (やっぱり……私は、高坂さんが好きだ)

    気づけば目を閉じて、その温もりに身を預けていた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「……さっきから、顔が赤いが?」
    「な、なんでもありません!!」

    夕方、並んで歩きながら、高坂がくすくすと笑う。

    「本当か?」
    「……もう、知ってるくせに」

    ぼそっと呟くと、高坂が満足そうに微笑んだ。

    「私は、お前の全部を知っていたいんだよ」

    その言葉に、尊奈門の心はまた大きく揺れた。

    (……ずるい)

    高坂さんは、いつだって私の気持ちを簡単に持っていく。

    でも――

    「……私も、同じです」
    「うん?」
    「高坂さんの全部を、知りたい」

    そう言うと、高坂は少し驚いたような顔をして、それから小さく笑った。

    「そうか」

    優しく髪を撫でながら、耳元で囁く。

    「なら、全部お前に教えてやる」

    尊奈門は目を見開いて、それからそっと微笑んだ。
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    PN_810

    PROGRESS現パロ高諸♀

    大学生になった尊奈門がモブ男に弄ばれて高坂さんのところに戻るお話。
    今まで女子校で異性との付き合いもなく、悪い虫がつかないように守られてきた尊奈門が大学進学をきっかけに外の世界を知り心に傷を負ったところにすかさずつけこみ自分のものにしてしまう高坂さんが書きたかっただけです。
    このあと普通にヨシヨシ慰めセックスするだろうから、そこを加筆してpixivにあげます。
    高諸①雨が降っていた。五月の終わりにしては肌寒く、窓の外には濡れた街路樹が風に揺れている。高坂は、キッチンの時計をちらと見た。
    ――23時14分。今日も、尊奈門はまだ帰ってこない。

    「……遅いな」

    呟いた声が、静かな部屋に落ちた。
    大学進学を機に、尊奈門がこのマンションに転がり込んできてから一年が経つ。最初は賑やかで、毎晩のように今日の出来事を語ってくれた。講義で隣になった子が面白かったとか、サークルに誘われたけど断ったとか、やけに細かく報告してくれるものだから、高坂はうんざりしながらも耳を傾けていた。
    ――だけど、あの男と付き合い始めてからは変わった。

    「……尊」

    小さく呼びかけるように名前を呟いたとき、カチャリ、と鍵が回る音がした。
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    このあと普通にヨシヨシ慰めセックスするだろうから、そこを加筆してpixivにあげます。
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    ――23時14分。今日も、尊奈門はまだ帰ってこない。

    「……遅いな」

    呟いた声が、静かな部屋に落ちた。
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