冗談酷く不愉快な事件の後、おぶったまどかをそおっとベットに下ろす。
まどかは、誠一の背中が離れたことに気づき、目を開けた。
「ん、起きたんか」
ぼんやりとした視界と裏腹に、はっきりと聞こえる声。
誠一は「なんか食べるか?」と優しく語りかる。意識がハッキリとしてくると、先の事件が脳裏に浮かぶ。愚かな犯人。見るに絶えない人間の愚かさ。
お腹はすいているけれど、今は何も考えていたくない。
「いいや。寝る」
まどかは、そう簡単に言ってみせた。
「......」
誠一が怪訝な顔をする。やっぱり誠一にはバレるか。
「誠一も一緒に寝る?」
そう軽口を叩いてみる。
「......あー、まぁ悪くないかもな」
意外にも誠一がノってきた。にやりといたずらっぽい顔をしてなんだかムカつく。
「えぇ...冗談なんだけど」
「それを言うたら俺もやな」
きょうの誠一はとことん意外だ。余裕そうで、僕のことなんでもわかってますー、みたいな反応をしてきて面白くない。
「はぁ、飽きた。よくわからない冗談言うもんじゃないね。僕は寝る」
「さよか」
でも、誠一には絶対いってやんないけど、少しだけ安心したような気がする。まぁ、それもお見通しなのかもしれない。だから誠一はズルい。
「恵美、おやすみ」
温かい声、優しげな表情で誠一は言う。目を閉じれば、まどかは深い夢の海に沈んだ。