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    koimari

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    時々rpsの架空のはなし

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    koimari

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    ヘジェ。パンツの話。ぽいぴくに入れ忘れていた

     先にどうぞ、と風呂を譲って数分後、皿洗いだってまだ終わらないうちに、シンクに立つパクヘヨンの隣に人の気配がした。
     簡単にタオルドライをしただけの髪はいつもより強めに跳ねている。何のロゴも入っていないグレーのスウェットは上半身だけを覆い、その下はこれまたどこにでも安く売っていそうな三枚組のおじさんパンツからすらりとした脚が伸びていた。
     ジェハンさんから夜のお誘いをする時、どこで学んだのか——間違いなくパクヘヨンにも責任の一端はあるが——やたらと布面積の少ないセクシーランジェリーを身につけて「今日はどうする?」とわずかに恥じらいを残したまま身を寄せてくることがある。流石に毎回ではないが。そうでなくても、ヘヨンとの夜を意識した日は、少しばかり良さげなボクサーパンツなのだ。ウエスト周りはオーバーサイズのスウェットに覆われて見えずとも、ゴムの緩んだいつからあるともしれないおじさんパンツの背には、「今日はしないぞ」と太い字が浮かび上がって見える気さえする。
     それはそれとして、ヘヨンは三十前の男なので、本当にだめなのかその口から聞くまではと押してみた日もかつてはあった。それに対してジェハンさんは、柔道の有段者かつ熟練の刑事に相応しい素早さで、ゆるゆるの裾から覗く素足に這わされた不埒な手を叩き落としたのだ。そのまま流れるように胸ぐらを掴まれ、投げられる、とヘヨンは覚悟した。しかし、いつまで経っても追撃がないものだから、咄嗟に閉じていた目をそろそろと開けた。
    「今日は……しないだろ……?」
     湯上がりでない薔薇色に頬を染めて、目線はヘヨンの二の腕と指先と、あと天井とをうろうろと彷徨っていた。スキンシップですよと言いくるめてなし崩しを狙うこともできなくはなさそうだったけれど、必死にアピールする恋人の意向を無視することは憚られた。
     そういった経緯で、今日もおじさんパンツを見せられたからにはスッと引いてあげるのが理解ある年下の恋人の振る舞いなのだろう。
    「……ジェハンさん」
     ぴくりと広い肩が揺れるが見なかったことにする。薄い口角と、最近伸ばし始めた髭に、歯磨き粉の泡が付いている。そんな顔で、何かあるかとでも言うように厳しい顔を作るものだからつい意地悪しそうになる。歯磨きだって、洗面台でも、何なら風呂場でもしてるというのに、ヘヨンにアピールするためにわざわざ台所までやって来て。
    「スウェット、下も履かないと風邪ひきますよ」
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