【フィガ晶♂】夢から覚めても へへ、とバーカウンターに突っ伏した彼はむにゃむにゃ唇を動かしながら夢現に気の抜けた笑い声を溢した。
「と言う状態ですので」
「潰れるまで飲ませておいてよく言うよ」
「ふふ、うっかりしておりました」
上品に笑って見せたシャイロックは全てわかっている癖に、私は何も知りませんよとでも言うように目を細めてグラスにシャンパンを注いでいる。
「足を運んでいただいたお礼です」
「そこまでされる義理はないけど、まぁお酒に罪はないからね」
フルートグラスで小さな泡を立てている淡い琥珀色の液体を飲み干して、カウンターですやすやと気持ち良さげに寝息を立てている彼の肩を軽く揺すった。ん、とむずがる子供のように息を吐いてそれでも彼は目覚める素振りを見せないので、よほど深く眠りについているのだろう。
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