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    maru_POI11736721

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    maru_POI11736721

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    ずっドマ!3開催おめでとうございます。
    83抗争の前後の2人のお話です

    #ドラマイ
    drabai

    約束の、その先へ目の前には一面、東京が見渡せる夜景。
    空を見上げればそれなりの星空。
    ここは二人で走ってる時に偶然見つけた穴場スポットで今現在、オレとマイキー以外誰も居ない。

    よし、ロケーションはバッチリだ。
    今しかない。


    「マイキーお前が好きだ。オレとつき合って欲しい」


    勢いよく振り返ったマイキーは、今ここで告白されるなんて微塵も思ってなかったらしく人生いちマヌケな顔をしていた。















    告白から一週間、オレたちがどうなったかというとどうもなっていない。
    フラれたのだ、オレは。

    「好きだぜマイキー」
    「ケンチンしつこい」

    でもこうして隙あれば口説いている。全く相手にはされてないけど。
    フラれはしたけど特に関係に変化はなく、マイキーは当たり前にオレの部屋に居座りベッドを占領している。
    オレをオトコとして受け入れてくれない以外はいつも通り、避けられることも気まずくなることもない。
    だからフラれたという感覚がないというのが正直なところだ。


    「なんでダメなん?」
    「なんでって…。だってお前はエマと…」

    最後の方は尻窄みになってよく聞こえなかったけどまぁだいたいわかった。
    うやむやにしてきたオレが悪いのだが、じゃあマイキーにとってあの告白は本当に青天の霹靂だったんだろうな。

    「やっぱり自分の気持ちに嘘はつけねぇ。オレはお前が好きだ、マイキー」

    真剣な顔で言うとマイキーはチラリとこちらを一瞥してまた手元の漫画に視線を戻した。
    でもその顔は少し赤くなっていて、ちょっとだけ期待をしてしまう。


    「ケンチンそう言うけどさ…祭りはエマと行くくせに」
    「…あー」

    まあそりゃそーなんだけど。
    ポリポリ、誤魔化すように頬を指で掻いた。

    マイキーが言っているのは来週の8月3日に開催される武蔵祭のことだ。
    例年トーマンのメンツと行ったりエマとマイキーとオレの3人で行ったりしてるけど、今年は武道とヒナちゃんに誘われたとかでエマに一緒に行って欲しいと頼まれている。


    「一応断ったし、お前が好きなことも言ったんだぞ」
    「え?!エマに言ったの?!」
    「…なんか言わねえと卑怯な気がして。ダメだったか?」

    マイキーはその質問にはなにも答えなかったけど、小さな声でクソ真面目かよ、と呟いた。

    「…エマ、なんて?」
    「そんなの知ってるし、って言われた」
    「そう…なんだ」
    「でも祭りはウチが先約だからって。ヒナちゃんとも約束したらしい。だから、わりぃ」

    マイキーはオレが謝ると呆れたようにため息ついてゴロンとうつ伏せから仰向けになった。
    その顔は少しだけつまらなそうに見えてまたひとつ、風船のように期待が膨らんでしまう。

    「別にオレに謝んなくていーよ。約束したんだろ?」
    「ヤキモチ?」
    「あ?なんでだよ」
    「拗ねてるから」

    そう言うと寝転がったまま、見上げるようにギロリと睨まれた。おーこわ。いや嘘だ、そんな顔すら可愛く見える。
    もうコレは肯定と捉えていいのだろうか。


    「だから、もうつき合ったらいいと思わねえ?」

    さすがに自分でもちょっとしつこいと思った。
    でもいつものようにマイキーはしつこいとかうるさいとか言わなかった。
    ただジッとなんの柄もない真っ白な天井を見つめている。


    「マイキー?」
    「一カ月…」
    「え?」
    「もし一カ月経って、それでもケンチンの気が変わらなかったら、そん時もう一回聞いてやるよ。その愛のコクハク」


    もしかして一時の気の迷いだとでも思われてるのか。それはそれは、オレの本気を舐めてもらっては困る。


    「まぁいいけど。絶対変わらねえと思うけどな」
    「そんなの、誰にもわかんねえだろ」


    普段は一人じゃなんも出来ねえくせに変なところで強がって懐の奥底に他人を入れたがらないコイツらしい答えだ。
    おそらくマイキーはオレのことが好きとかキライとかそんなレベルの話じゃなくて、自分の領域に誰かを入れるのをこわがっている。


    「ケンチン、オレのオトコになりたきゃあと一つ、条件がある」
    「条件?」


    腹筋を使って体を起こしたマイキーは胡座をかいてベッドからオレを見下ろした。それは階段の上から隊員たちを見下ろす時の総長の顔にも似ていて、自然とこっちも背筋が伸びる。


    「ひとつだけ約束しろ」
    「おう」
    「オレより先に死なないで。それだけ」


    それだけって…どんだけ臆病なんだよ。
    なるほど、わかった。自分の領域を侵されることにビビってんじゃなくて入ってきた人間がまた出て行ってしまうことがこわいんだ。
    寂しかったら死ぬ小動物かよ。
    そんな冗談も言えないくらいマイキーの瞳は不安で揺れていた。


    「それが守れないなら何ヶ月たっても無理」
    「わかった、約束する。ちなみにさ、マイキーはオレが死んだら泣いてくれんの?」
    「ううん。むしろ約束破って死んだらオレがお前をコロス」
    「んだそりゃ」


    どっちにしろ結局オレ死ぬじゃねえかよ、そう言って二人で笑い合った。




    次の日もう一回マイキーも一緒に祭りに行かないかと誘ったけど断られ、当日の夕方、エマを迎えに佐野家についた時にはバブがなかった。
    少し嫌な予感はしたけど、まぁアイツなら大丈夫だろう、と勝手に簡潔していた。

















    体が丈夫なことには自信があったんだけどな。
    まさか救急車に乗る羽目になるとは思わなかった。

    どんどん下がっていく体温。
    だんだん薄れていく意識。

    目を閉じたら戻ってこれなくなるんじゃないかという恐怖心から必死に瞼を持ち上げていた。
    あっちは大丈夫なのか。
    マイキーの蹴りを止めたアイツ、まあマイキーなら大丈夫だろう。なんと言っても無敵だし。

    そうだ、ケンカならなんも心配なんかいらねぇんだ。
    でも普段のアイツはオレが見てねえと危なっかしいんだよ。

    ちゃんと朝起こしてやらねえと起きねえし。
    髪もボサボサだから苦労するんだ。
    給食の時なんか赤ん坊より手がかかる。
    オムライスには旗立ててやらねえと拗ねちまうし、腹一杯になったらどこでも寝るから背負っていかねえとダメなんだ。
    オレが…オレがいねえとダメなんだよ。

    ずっとコイツの世話して生きてくのか、ってウンザリすることもあるけど、マイキーにオレが必要とかでなくてオレにマイキーが必要なんだ。ずっと側で見ときたいんだよ。

    でも、もう叶いそうにないから。

    だから、どうか誰でもいいからアイツの側に居て寂しくねえように甘やかしてバカなことしたらちゃんと叱って一人にならないようにしてやってくれ。
    どうか。

    「…マイキーを頼む」


    瞼を閉じると浮かんできたのはあの時の真剣な顔。その奥の少しだけ揺れるような不安を宿した瞳だった。

    『オレより先に死なないで』

    約束を守れなくてごめん。
    死ぬと思った瞬間、頭をよぎったのはアイツのことばかりだった。














    眩しさを感じて目を開けた。

    でも眩しすぎて目が開かなかった。
    多分、照明が真上にあるせいだろうと思ったけど瞼がちゃんと持ち上がらないから確認しようもない。

    段々と目が慣れてきて部屋を見渡すと知らないところだった。
    腹が痛い。
    体に刺さった管からポタポタとゆっくり落ちる液体と規則的な音を立てる機械音。
    ここは病院なんだろうな。

    生きてんのか、オレは。
    じゃあよかった、コレでアイツに殺されずに済む。
    それが最初に思った感想だった。











    二日後には一般病棟に移れて、代わる代わる色んな奴がオレの生存確認をしに来た。
    オレに負担をかけまいとみんな短い時間で帰って行く中、マイキーだけは一向に現れなかった。
    一番最初に会いたかっただけに残念に思ったけどまぁそのうち来るだろ、と軽い気持ちで待っていた。
    だけど、その日いくら待ってもマイキーはやって来なくてそのうち面会時間が終わってしまった。


    一人きりの病室、消灯時間になると一気に真っ暗になったのに昼間からずっと寝転がってるだけのオレはなかなか寝付けなかった。
    静かな部屋に居ると考えなくていいことまで考えちまう。

    マイキーなんでこねぇんだろ。
    もしかして、オレがやられた後ケガでもしたんだろうか。いや、アイツにかぎってそれはない。今日来た奴らも誰もそんなこと言ってなかったし。

    …もしかしてなんか怒ってるとか。
    簡単にオレが刺されたりして約束を破りそうになったから呆れてるんだろうか。

    悪かったよ、マイキー。
    謝りたいから来てくれねぇかな。今、オレからは会いに行けねえから。
    お前の顔が見たい。
    声が聞きたい。
    明日は、来てくれねえとオレの方が拗ねちまうけどいいのかよ。

    こんな気分では寝れそうにない、そう思ってたのにいつのまにか怪我人よろしく呆気なく寝てしまっていた。












    「ケンチン」

    名前を呼ばれた気がした。
    目を開けるとまだ真っ暗で痛みを抑え携帯に手を伸ばすと夜中の2時だった。

    マイキーの声がした気がしたけど、そんなわけないか。
    どんだけアイツに会いたいんだ、と自嘲してもう一回寝てしまおうと思ったらやっぱり声が聞こえた。

    「ケンチンってば」
    「…マイキー?!…痛って」

    ベッドの足元に立っている人物に、思わず起き上がりかけて腹に激痛が走った。ポフっとマヌケな音を立てて再びベッドに倒れ込んだ。

    「なにやってんだよ、ケンチン。傷が開いちまうだろ」
    「…ッ。いや、こっちのセリフな。何時だと思ってんだよ」

    いくら個室だといっても見舞いに来ていい時間じゃない。
    昼間こなかったくせになんでこんな時間に。


    「明るい時に来る勇気がなくて…」
    「…?」
    「痛えの?ソレ」
    「まぁ、そりゃな」

    勇気がないとはどういうことだろうか。
    多分、聞いても答えないだろうなと思ったからスルーした。

    「マイキー、ごめんな」
    「なにが?」
    「約束やぶりかけたから」
    「……残念だな。せっかくケンチンをコロせるチャンスだったのに」
    「ははっ。…ぅ」

    笑うとまた腹に鈍痛が走る。
    つうか、なんて縁起でもねえことを言うんだ。

    「ケンチン?痛ぇの?」
    「さすがにまだ痛いけど大丈夫だ。それよりもっとこっちに来ねえ?遠いんだけど」

    なぜかマイキーはオレの足元から一向に動かなくて暗くて顔もよく見えない。
    全然下心なんかあったわけじゃなくて純粋に近くで顔が見たかっただけなのに、マイキーは首を振った。

    「いい。起こしてごめん。帰るな」
    「えっ?マイキー待てって…ッ!」

    居なくなろうとするマイキーを引き止めたくてまた急に体を起こしてしまった。
    オレの呻き声にマイキーが慌てて駆け寄ってきた。

    「ケンチン?!大丈夫?!」
    「掴まえた」
    「?!」

    オレの腹に伸ばしかけてた手首を掴んだらマイキーと至近距離で目が合った。
    入院してからまだそんなに日は経ってないのにずいぶんと久しぶりな気がする。
    あまりの距離の近さにマイキーはパッと顔ごとそらした。

    「ケンチン卑怯だぞ。騙したな。…心配したのに」
    「痛えのはホントだって。つうか、なんで帰っちまうの、もうちょっと居ればいいだろ」
    「だって、ちゃんと寝ねぇと治らねえだろ」

    だったらこんな時間に来る方がおかしいだろ、と思う。マイキーは全然こっちを向いてくれない。

    「ケンチン、離せ。オレ帰るから」
    「ヤダ」
    「なにワガママ言ってんだよ」

    ワガママか。お前に言われる日が来るとは思ってもみなかった。
    この掴んでる手を離したら本当に帰ってしまいそうでギュッと握った。

    「ケンチン、明日はちゃんと昼に来るから」
    「…わかった。じゃあおやすみのキスしてくれたら離してやるよ」

    冗談めかしてそう言うとマイキーがようやくこっちを向いた。
    それは前に突然告白した日と同じ、まん丸な目をこじ開けてマヌケな顔をしていた。

    「…ケンチン頭も打った?まだ一カ月経ってねぇぞ」
    「そうだっけ?何度でも言ってやるけど。お前が好きだって」


    どーせまた躱されるんだろうと思ってたから軽いノリで言ってしまった。それをめちゃくちゃ後悔した。
    マイキーがこんな泣きそうなくらい顔を歪めるなんて思わなかったから。
    ズキと腹ではなく胸が痛む。

    「マイキーごめん」
    「…ケンチン、やっぱり卑怯だ」

    腹が痛いのも忘れ、起き上がってマイキーを抱きしめた。腕の中の小柄な体は小さく震えていた。

    「今日ずっと泣いてた?」
    「……」
    「だから昼間来れなかった?」
    「……違うし」

    強がりと嘘がかわいいと思った。
    だってさっきドアップの顔面見ちまったし。
    マヌケなツラのどデカく見開いた目と鼻が真っ赤だった。

    「こわい思いをさせて悪かった。でもちゃんと生きてるから。約束も守ったぞ」
    「死んだら許さなかったけどな」
    「コレでお前のオトコにしてくれる?」
    「…一カ月経ったらな」

    そこだけは頑ななんだ。
    思わずふきだしたら腹のキズが忘れるなというように主張し始めた。

    「わり、ちょっと転がるわ」
    「痛てえの?!」
    「だから痛てえんだって。早く治さねえとお前泣くし」
    「泣いてねえし!」

    おそらく無意識に拳が飛んできたけどなんとか怪我人だということを思い出してくれたみたいで寸でで止まった。

    「一カ月経ったらもう一回ちゃんと言うから逃げんなよマイキー」
    「へーへー。それまでオレを好きでいられたらな」

    帰るわ、そう言ってマイキーは立ち上がった。
    そんなに信用できないんだろうか。一カ月どころかお前に片想いして何年経つと思ってるんだ。
    一度入ったら、簡単にお前の領域から出てったりしないのに。まぁひと月経てば許されるみたいだから気長に待つか。

    そういえば真夜中だった、ってことを思い出した途端、勝手にあくびが出た。
    ふぁ、と大きな口を開けてるとマイキーの顔が近づいてきて、なんだ?って考える間もなく口と口が触れ合った。

    「………え?」

    一瞬のことで何がおきたのかわからなかったけど今たしかにマイキーからキス…?

    「…は?え?おま…今っ!」
    「じゃーな、おやすみケンチン。明日までちゃんと生きてろよ」


    マイキーは縁起でもねえことを言って足早に出て行った。
    そりゃ言ったけど。おやすみのキスしてってオレの方が言ったけど。まさかほんとに…。

    顔が熱い。
    これで一ヶ月間待て、なんて。
    生憎、オレはそんな賢くないんでね。
    のんびり時間が経つのを待つつもりだったけど、もういいか。

    生きててよかった。




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