運レア立場というものには制約という名の鎖がある。
自らがいくらフレンドリィな職場にいたとしても自分の立ち位置は忘れてはならない。
「なぁ運命〜。」
それを無意識にぶち壊そうという存在がいたとしてもだ。
「どうしたの?レアリザス。」
レアリザスは片耳をぴこっと動かしどこか嬉しそうに私を見てくる。
「運命が難しい顔をしてたからさぁ。兄ちゃんで良ければ話に乗ろうか?運命もオレの家族みたいなものだろ〜。」
勘違いしそうな程甘く優しい顔でしてくるのは何よりも非道な線引きだ。
群れの長兄である事に拘るレアリザスは私の気持ちなんかきっと理解しない…。そう思う度に胸の中の制約の鎖がガシャガシャと音を立てて皇帝という立場を一時的にでも忘れてしまいたいと心が流れるようにどす黒くドロドロな感情に染まる。
「疲れてるのかも。最近忙しかったから。」
最もらしい理由をつけて心の中の荒ぶるけだものを沈めにかかる。
立場で、甘え落としでレアリザスを傍らに置き続けるのは容易い。
割と尊重される立場の身の上、レアリザスに手を出してしまったとしてもきっと有耶無耶にされて咎められもしないんだろう。
「そっか〜。うーん、添い寝してアニマルセラピーとかしてみるか?兄ちゃん太陽の匂いもするらしいしきっと運命も癒されること間違いなしだぞ!」
鴨が葱を背負って鍋まで被ってきた。
あまりの危機感の無さに目眩を起こした振りをして私はレアリザスを自らのベッドに引き倒す。
「もっと、セラピーとか言わないで身体全部で癒して。何も知らない歳じゃないよね?お兄ちゃん。」
騎士でいながら身内に甘いレアリザスは見事に不意打ちを食らい尻尾をボッと膨らます。
もう何も言わせたくない。『皇帝』久条運命は自らの『騎士』であるレアリザスの唇を吐息すら飲み込む強引さで確りと塞いだ。