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    satsuki_chi_he

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    satsuki_chi_he

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    ハッピーバースデーというわけで、バースデーフレームネタなウィルガス

    #ウィルガス
    wilgus

    嘘にしておきたい「バースデー用の撮影、ですか?」
     ブラッドから出た言葉に、数ヶ月前、慣れないスーツを着て撮影に挑んだことを思い出す。カメラマンが慣れていたから良かったものの、用意された衣装を着て一人で撮影をしたものだから、緊張した。もう一巡が終わったのかと思うと感慨深い。
    「ああ。今回はラフな格好で花冠をかぶることになった」
    「そうなんですか。そういうコンセプトって誰が決めるんですか?」
    「主に広報部だ。去年はスーツだったから、差がある方がいいのだろう」
    「なるほど……」
     ヒーローになってしばらく経つが、単純にサブスタンスやイクリプスの対応をするだけではなく、こういう撮影をしたり、自分がグッズになったりと、様々な仕事があると改めて思う。
    「ウィルの実家に注文をしたいと広報部から言われたが、問題ないだろうか。撮影まであまり日がないのだが……」
    「多分、大丈夫ですよ。企画書を見せてもらったら見積もりを用意するよう頼んでみます」
    「助かる。手が空いた時でいいから目を通してくれ。次回からも毎回頼むことになると思うので、問題ないかも聞いてほしい」
     そう言ったブラッドから企画書を受け取る。日がないらしいので、急いだ方がいいだろう。頭の中で予定を立てる。ちょうど明日はオフだったので、実家に帰ろう。
    「おそらく、今後もこういった依頼が度々あると思うが、難しい時はそう言ってほしい」
    「わかりました。お気遣いありがとうございます」
     広報部の職員から、家が花屋なのは強い。そういうところは出していくべきだと言われたことを思い出す。今回もきっとそういうことだろう。
     仕事が回ってくることはありがたいし、店にある花の質も採用基準を満たしているのだと思うとなんだか誇らしい。
    「初回は撮影に立ち会ってもらいたいが、いいだろうか。生花を使用するから花の扱いに慣れたウィルがいると助かる」
     なるほど、と思う。スタイリストもプロだが、花の扱いに関してはウィルの方が慣れているはずなので、何か助けになれるかもしれない。
    「それに、撮影の仕事はあまり経験していないから勉強にもなるだろう。俺も昔から世話になっているカメラマンが担当するから今後のためになると思う。こういう仕事もこれから増えるからな」
    「わかりました。大丈夫です。ふふ、なんだか楽しみだなあ」
     花冠の注文はなかなかないので、単純に用意が楽しみだ。せっかくだから、毎回は無理でもできる時には自分も花屋サイドで関わってみたい。
     企画書をぺらりとめくると、撮影の仮スケジュールが載っていた。そこに書いてある名前につい手が止まる。
    「撮影はガストからだな」
    「そう、ですね」
    「撮影日のスケジュールについては後日また連絡をする。その他も、何かあったら遠慮なく言ってくれ」
    「いえ、大丈夫です。とりあえずこれを読んだらまた相談しますね」
    「わかった」
     その日はそれで解散となった。
     企画書を読み込んでからブラッドに質問や相談をしつつ、実家にも連絡を入れる。詳しくは実家に帰った時に話し合うことになったので、そこまで長くは話さなかった。
     翌日、実家で両親にコンセプトを説明し、継続的な依頼は問題ないと確認した。断られないだろうとは思っていたが一安心だ。それどころか両親も結構ワクワクしていた。自分の仕事が花屋の仕事と繋がったのはウィルも嬉しい。
     そのテンションのまま、実際に花を選んでいたところで、帰宅した妹が店に顔を出したので、妹にも企画を説明をした。誰の撮影から入るのかと質問されてから、説明したことを後悔する。あまり答えたくはないが、渋々ガストの名前を出すと、喜んで赤やらピンクやらの薔薇を選び始めたので慌てて止める。
     自分の趣味を全面に押し出したり、あげたい花を選ぶのではなく、きちんと相手の魅力が引き立つよう考えなければいけないと注意をした。
     おかげで、ガストの魅力や、ガストに似合う花について散々聞かれて困った。整った顔に華やかな雰囲気があるので、派手な色より落ち着いた色の方がいいと思うということと、服装がラフなので、浮きすぎないような花を選んだ方がいいということを説明した。
     そして結局、盛り上がった流れで撮影用の花冠を家族全員で考えてしまった。当日に作り直すが、問題がなければ同じように作ればいいだろう。
     ブラッドに花冠の写真を送ると、広報部に確認をしてから連絡するとすぐに返事が来た。
    仮の花冠は妹がニコニコしながら頭にかぶっていて、なんとも複雑な気分だった。そして、自分が撮影に参加することは妹に黙っておくことにした。


     撮影当日、ブラッドから花冠は問題ないと言われたので、残しておいた写真をもとに作った。結局、ほぼウィルの案が通ったので、両親に当日の作成も任されたのだ。ガストのために花冠を作っていると思うと、複雑な気分になる。平日だから妹が学校に行っていたのは幸いだった。
     実家から花冠を持ってエリオスタワー内の撮影場所へ向かうと、すでに着替えを終えたガストと、撮影の様子を見るためにスケジュールをなんとか空けたブラッドがいた。
    「すみません、遅くなりました」
    「いや、時間前だから問題ない」
     ブラッドにあやまりつつ、スタイリストに花冠が入ったボックスを渡すと、開けたスタッフから感嘆の声が上がる。色々と考えて作ったので、褒められて素直に嬉しかった。
     ガストも横からボックスを覗き込む。
    「おお〜綺麗だな!これ、ウィルが作ったのか?」
    「まあ」
    「やっぱり器用だな。俺には絶対作れない」
    「だろうな」
    「はは、そこは否定してくれよ」
    「事実だろ」
     以前一緒に作った正月飾りを思い出す。不器用というわけではないが、細部に拘れなければ綺麗に作れないのは確かだ。あとは単純に花の扱いに慣れていないので、手早く作れずしおらせる気がする。
    「でも、わざわざありがとうな」
    「俺もなんだかんだ結構楽しかったから」
     これも事実だった。花は好きだし、細かい作業も苦ではない。自分の想像した通りにでき上がればテンションも上がる。あとは、特定の人物のために作ったものだから、似合えばいい。喜んでもらえればもっといい。
    「なら良かった。ウィルが作ってくれて嬉しいよ」
     そう言ってガストは笑ったので、少し安心してウィルも頬の力を少し緩めた。
     ブラッドがカメラマンと打ち合わせをしている中、スタイリストに花冠をセットしてもらって待機をしてるガストの横に、ウィルは並ぶ。
    「でも、ちょっとかわいすぎないか?」
    「お前はかわいくないから安心しろ」
    「いや、花冠がだよ!」
     ガスト相手に軽口を叩けるくらいにはなっていた。というか、こういうことはガストにしか言わない気もする。
     ツボにハマったのか、くっくっと笑いながら肩を震わせているガストと体がぶつかり、距離感が変わったと実感する。今まではこんなぶつかるような位置にいなかった。
    「ぶつかって潰すなよ」
    「悪い悪い」
    「……あと、似合わない物を持ってくるわけないだろ」
    「ん?おお、そっか。そうだな」
     そうやって二人で話しながらカメラやスタジオの調整を待っていたら、ブラッドが近付いて来た。少し早足だったので、これは仕事の連絡が入ったなと予想をしたら、その通りで、撮影を見て何か気付くことや今後に役立ちそうなことがあれば教えてくれと言い残してブラッドは去って行った。
     それからすぐにガストは呼ばれ、整えられたセットの前に座る。
     カメラマンから、せっかくだから隣で撮影を見ていていいと促されて隣に立つ。
     何枚だかはわからないが、しばらく写真を撮ったところで、一度休憩になった。ガストは水を飲みに行き、カメラマンは撮った写真を確認し出す。ウィルは迷った末、その場に残った。
    「うーん、ちょっと硬いなあ。こういう写真が撮りたいんだよね」
    「へぇ……えっ!?」
     カメラマンに差し出された写真を見て思わず大きい声が出た。今より若いブラッドが少しはにかんだような笑顔を浮かべていた。初めて見る表情だ。
    「えっ、ええー!?こんな写真どうやって撮ったんですか……!?」
    「撮影に付いてきたディノとキースが、笑わせようと、ひたすらかっこいいとか本業はモデルだなとか褒めまくってて、たまたま通りかかったジェイにまで同じように言われたら耐えられなくなったみたい」
    「そ、それは……」
     自分は恥ずかしさと面白さで笑う自信があるが、あのブラッドがそうなるとは思えなかった。
    「まあ当時はブラッドも撮影には慣れてなかったから、緊張してた反動で笑っちゃったんだろうね。今は同じようにはならない」
    「そうですよね」
    「今は仕事なら自分からこういう表情をする」
    「す、すごい……」
     とはいえ、ファンの間では爽やかでクールなヒーローと認知されているため、こういう顔をした企画は立たないらしい。
    「いい仕事をしたからこの写真を参考に持ってきたんだ。今回はこういう雰囲気でいきたい」
    「なるほど……」
     とはいえ、この写真は三人のアシストがあってこそなので、今日は無理ではないだろうか。
     何枚か先ほど撮った写真を見せてもらったが、普通にカメラの前で決めた笑顔だった。それが悪いというのではなく、カメラマンの求めているものとはただ違うというだけだ。よく撮れているからこれはこれでいいのではないかとも思うが。
    「君もちょっと手伝ってよ」
    「お、俺ですか!?」
    「そうそう。なんか声かけて、緊張を解してあげてよ。いい感じに笑わせて」
    「えっと」
    「頼むよ!同期でしょ?ね!」
    「うーん、わかりました……」
     無茶振りをされてから気付いたが、もしかしたら撮影に同行しているということから、ブラッド達のように仲が良い同期だと思われているのではないだろうか。決してそういうわけではないが、ここでそう言えば戸惑わせてしまうだろうから黙ることにした。
     どう声をかけようか少し悩んだが、撮影前の会話を思い出す。あの時、ガストは笑っていた。
    「ア、アドラー!」
    「ん?」
    「お前、かわいいぞ!」
    「え?」
    「さっきはかわいくないって言ったけど、花冠だけじゃなくてお前もかわいい!」
    「な、なんだよ……」
     困惑された。それはそうだ。自分も同じことをガストに言われたら反応に困る。
     けれど、視界の端に映るカメラマンは、もっともっととウィルを煽っている。自分でやってくれと思ったけど、勢いに押されたとはいえ了承してしまった手前、引くに引けないし、こちらも勢いで押し切るしかない。半ばやけくそだ。
    「花冠!お前に似合うように作ったから、ちゃんと似合ってる!」
    「お、おお、ありがとうな?」
    「あとかわいい!お前が!」
    「いや、なんでそこを主張したいんだよ?」
    「あー……、かわいいと思うからだ。かわいいぞ!」
     さっき、ガストがかわいくないという話で、当たり前だと笑っていたから、逆にかわいいと言ったらそれはそれで笑うのではないかと思った。それだけだ。
    「ふ、はは。なんだよ。意味わかんねぇな」
     ガストは狙い通りに少し照れて笑っている。
    おっ!というカメラマンの声が聞こえた。どうやら彼が求めていた表情になったらしい。
    「そのまま、目線こっち!」
     撮影はそこからしばらくして終わり、ガストには、お前が変なこと言うから笑っちまっただろと言われたが、こちらとしてはそれが狙いだったので詫びる気はない。
     嘘をつくのが苦手な自分の割に、言葉が簡単に口から出てきたなと思ったが、深く考えることはやめた。
     その日の夜にブラッドに会った時に、撮影に付き添いがいると、いつもと雰囲気の違う写真が撮れるかもしれないとだけ報告をしておいた。
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