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    obrq二次創作置き場
    モリユヒちゃん

    ハビタブルゾーンモリィさんはいつも私を泣かせる。

    意地悪でしてるわけじゃない、というのは分かる。でもどうやら 「泣いている顔がものすごくかわいい」と思っているらしいということも、分かる。

    「モリィさん、まって、まって、おねがい」

    私が泣くのは大抵こういうことをしているときで、こういうことをしているときのモリィさんは、普段よりずっと無口になる。喋らないぶん、無機質な瞳が深みを帯びた怪しいかがやきを放っていたり、ちょっとひそめられた唇の破壊力がすごくて、 私はさらに泣いてしまう。

    「も、むり、ほんとにこれ、もう、だめ、だからぁ……」

    モリィさんときたら自分は喋らないくせに私の泣き声と喘ぎ声を聞くのは大好きなものだから、口を覆うのも許してくれない。

    「んん………………っ」

    呼吸がままならなくてぐすぐす泣くと、猫みたいな舌が目じりの涙を舐める。そのままくちびるが丁寧に顔中に振ってきて、しんじゃいそうになる。身体の奥、モリィさんの指があるいちばんあついところから、熱がどんどん広がって、このまま溶けてかたちのない生き物になってしまいそうな気がする。

    「モリィさん、」

    なみだでべしょべしょの声でモリィさんを呼ぶ。もうこれ以上はないって思うのに、毎回どうしてこんなにぐちゃぐちゃにされてしまうんだろう?そうして欲深い私は、もっとぐちゃぐちゃになりたいって、思ってしまうのだ。私が泣くのはきもちよすぎるせいじゃなくて、自分の欲深さが怖くなるせいもあるのかもしれない。
    でもいいか、ふだん好意をあまり積極的に口にしないモリィさんがかわいいって思ってくれるのなら。

    モリィさんはいつも私を困らせるし泣かせる。総括するとあまりにも刺激的で危険な人ということになる。なにからなにまで心臓にわるい。わるすぎる。

    でも、モリィさんのいるところが世界で一番安心できる場所なのだ。矛盾してる、と、うとうとした頭で思う。へんなの。一緒にいるといつもしんじゃいそうなのに、それでも安全、だなんて。

    「ハビタブルゾーンって言うんですよ」
    「何が?」
    「生命が存在できる星のこと。生存可能領域。安全地帯、って訳されたりもするのかな。科学の授業で習ったんですけど」

    モリィさんの指先が髪をすいて、きもちいい。猫みたいに肩に頬をすり寄せる。

    「モリィさんって、ほんとに心臓にわるいのに……でもね、ここが私の安全地帯なんです」

    この腕の届くところが、世界一安全で、生存可能な領域。私が私として生きられる場所。ここじゃないときっとダメだ。そういう生き物になっちゃったから。

    いつもいつも私を困らせて泣かせて心臓にわるいその人は、 ふうん、という顔をして、長い腕を伸ばして、私をしっかり安全地帯に閉じ込めてくれた。
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    MOURNINGobrq二次創作置き場
    カイユヒちゃん
    ねむりカイゼは眠たいときの私をさわるのが大好き。

    「……君は、眠いとふにゃふにゃするんだな」
    「う〜ん………………」
    「起きてる?」
    「おきてる……」
    「本にしおりをはさんでおくぞ。140頁でいいか?」
    「うんうん………………」
    「ふふ、かわいいな。キスしても?」
    「うんうん………………」
    「全然聞いてないな」

    おかしそうな笑い声。わかってる、ちゃんと聞こえてる。どんなときでもカイゼの声だけはちゃんと聞いてるの、私は。もしもあなたのわるい手が寝巻きのすそから侵入してきたら、まずはちょっとだけだめでしょって怒ってみせるけど、私はそもそも頭のてっぺんから足のつまさきまでぜんぶカイゼのなんだからどこをどうさわるかなんてカイゼの自由で、だから怒るなんてありえない。ただの茶番です。これだけの思考がぎゅっとつまった私の「むにゃむにゃ」みたいな呟きを聞いて、カイゼはまたわらった。さっきのおかしそうな響きとはまたちょっと違う、どうしようもなくなってぽろんとこぼれた、みたいな、やさしいのに心臓がぎゅっと縮むような笑い方。ささいなことなのに、特別でもなんでもないふとした瞬間のことなのに、目の前にいる相手のことが不意にどうしようもなく大事に思えて、ずっとここにいてほしくて、ため息を吐くようにわらってしまう、そんな笑い方。古今東西ありとあらゆる人たちはそういう摩訶不思議な感情を「いとおしい」とかって形容したんだろうな。それってただしいんだろうけどさ、でも納得いかない。だってそんな五文字で完璧に言い表せるなら、私こんなにくるしくなってないよ。
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