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    obrq二次創作置き場
    クロユヒちゃん

    癒し「今すごくお前に甘えられたい」

    妙にハキハキした口調でクロードがそう言ったので私は無言で離れようとした。そして捕まった。

    「やだ!」
    「やだじゃない!」
    「やだー!」
    「やだじゃない!!」

    でっかい声を出し合って二人とも息切れしてしまった。いや訂正。クロードは全然涼しい顔してる。そうだよこの人すんごい体力あるし。勝てたこと一回もないし。いや一生負けるんだけどクロードには。

    研究が煮詰まってきたのかはたまた昨夜は完徹したのか。朝食を終えた途端テーブルに伏せてしまったお疲れなクロードを労うために肩を揉んで、どさくさにギュッと抱きついたりしてクロードを堪能していた。していたら、突然の「甘えられたい」発言が降ってきたのだった。
    抵抗する私の腹に腕を回してガシッと掴んだクロードは、そのままよいせと私を膝の上に乗せた。

    「さあ。甘えてくれ」
    「急に言われてもできないってば」

    それでなくても私はそういうのは得意じゃない。クロードと暮らし始めてしばらく経つのに未だに目を合わせるとドキドキしてすぐ逸らしちゃうし、ちゃんと自分からいろんなことできないし。
    クロードにくすぐられてなんかそういう雰囲気になったら耐えられず手足をバタつかせたり逃げ腰になってしまうほど私は素直じゃない。どうしても照れが勝る。
    はいはいよしよし、といつも私をちゃんとなだめてくれるクロードは私に対して心が広すぎるからそういう時に暴れても許してくれているけれど、正直これは猛獣ペットの調教のようなものなのだと私は思っている。
    私の脇の下に手を突っ込んで向かい合わせに座らせたクロードは、ほら、とまた促してきた。

    「はやく。甘えてくれよ」

    ハードル高すぎる。あとこの距離の近さもつらすぎる。
    私は目をぎゅっと瞑って梅干みたいに渋い顔のままぐぬぬと唸った。

    「なんで……私がクロードに甘えてクロードに何かいいことあるの………………」
    「癒される」

    大真面目な声が返ってくる。

    「ぜったいうそじゃん……」
    「嘘じゃないよ」
    「ううっ………………」
    「なあいいだろお願いだよ」

    クロードが髪を梳いてくる。珍しく甘えた表情がかわいい。
    むり、そういうの苦手だもん、と顔をそむけたら、黒手袋を外した指先で前髪をすかれてウッとなってしまった。だめ、こういうことされるともう本当によわい。

    「ちょっとでいいから」
    「う……」

    内心、泣きそうになる。
    自分で追い詰めたくせにクロードときたらいつもこうやってぐずる私を甘やかしてくる。
    甘えてと言われなくたって、私はいつも甘えている。面と向かってちゃんと好きと言えなかったりなんかそういう雰囲気をすぐ粉砕しようとしたり、クロードの優しさに甘えている。その自覚は、ある。
    でもたぶん、クロードが欲しがっているのはそれとはまた別のことなのだ。もっとかわいくて、もっと恋人っぽい、かわいい甘え方。私が一生慣れる気がしないやつ。

    「…………」

    ごくり、と唾を飲み込む。
    や……やれるの…!? 私に…………?!
    クロードに抱っこされたまま勇気をかき集めようとしたのだけどさっそく邪魔が入った。クロードの目だ。まつ毛ふさふさ、その奥の、でっろでろにあまいクレマチス色をした、その、目!

    「……やっぱむり……」
    「なんでだよ」
    「……ごめ、クロード…あの……ちょっと見ないでいただいても…………?」
    「見るに決まってるだろ。お前の顔だぞ」
    「くっ………………あ、ありがとう…………」
    「こら、顔隠すなって」
    「むり恥ずかしいたえられない……」
    「……わかった」

    クロードの声がちょっと落ち着いたので、顔を覆った指の隙間からそうっと見やる。

    「だめなら、いい………………」

    うわーーすごいしょげてるーー?!かわいい!……じゃなくて!
    世界一好きな人にこんな顔をさせていいわけはない。私は羞恥を封印して腹をくくって、顔を隠していた手をどけた。
    甘える。甘える。甘えるって、どうするんだっけ? えっ待って。かなり待って。分かんなすぎ。どうしよ。
    未だに慣れないクロードの近すぎる距離を前に、私は完全にパニックになってしまった。

    甘える。甘える?甘える、何?!

    「っ」

    おそるおそる、視線を落とす。クロードの唇。笑うと綺麗に弧を描く端正な唇。とにかくそのクロードの唇を見て、何だかよくない思考に囚われそうで、私はぎゅっと目を閉じた。
    頭をかがめて、ぐりぐりぐり、と柔らかい髪や首筋に鼻先を押し付ける。小さなこどもみたいに。あるいは、猫や犬みたいに。
    マーキングするみたいなその動作をしばらく繰り返して、私はそうっと視線を上げた。あだめこれ絶対間違った気がする。どうしよ。どうしよう。どんどん顔が真っ赤になるのが分かる。あとつらい。恥ずかしすぎて視界がなみだで滲んできた。

    「……あの、クロード、こ、これでいい……?」
    「…………」
    「なんか言ってよーー!」

    さっきは私が顔を覆っていたのに今度はクロードが腕で顔を隠してしまった。あ〜これ間違えたやつだ! だめだったやつ!やっぱ慣れないことなんてするものじゃなかった!
    羞恥と失敗のショックが二重でつらすぎる、逃げたい。クロードの腕の拘束から逃れようとしたらクロードがおもむろに私を抱えたまま立ち上がり、私をテーブルの上に押し倒した。

    「えっ、今度は何事?え、」
    「……甘えてくれてありがとな。もろもろ吹っ飛んだよ。じゃあ今度は俺から甘えさせてくれ」
    「なんで?!そんな話だったっけ?あ、ちょ、吸わないでくすぐったい…ねえ待ってそれダメほんとに、ねえってば〜!!」
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    🐤(旧:格)

    MOURNINGobrq二次創作置き場
    カイユヒちゃん
    ねむりカイゼは眠たいときの私をさわるのが大好き。

    「……君は、眠いとふにゃふにゃするんだな」
    「う〜ん………………」
    「起きてる?」
    「おきてる……」
    「本にしおりをはさんでおくぞ。140頁でいいか?」
    「うんうん………………」
    「ふふ、かわいいな。キスしても?」
    「うんうん………………」
    「全然聞いてないな」

    おかしそうな笑い声。わかってる、ちゃんと聞こえてる。どんなときでもカイゼの声だけはちゃんと聞いてるの、私は。もしもあなたのわるい手が寝巻きのすそから侵入してきたら、まずはちょっとだけだめでしょって怒ってみせるけど、私はそもそも頭のてっぺんから足のつまさきまでぜんぶカイゼのなんだからどこをどうさわるかなんてカイゼの自由で、だから怒るなんてありえない。ただの茶番です。これだけの思考がぎゅっとつまった私の「むにゃむにゃ」みたいな呟きを聞いて、カイゼはまたわらった。さっきのおかしそうな響きとはまたちょっと違う、どうしようもなくなってぽろんとこぼれた、みたいな、やさしいのに心臓がぎゅっと縮むような笑い方。ささいなことなのに、特別でもなんでもないふとした瞬間のことなのに、目の前にいる相手のことが不意にどうしようもなく大事に思えて、ずっとここにいてほしくて、ため息を吐くようにわらってしまう、そんな笑い方。古今東西ありとあらゆる人たちはそういう摩訶不思議な感情を「いとおしい」とかって形容したんだろうな。それってただしいんだろうけどさ、でも納得いかない。だってそんな五文字で完璧に言い表せるなら、私こんなにくるしくなってないよ。
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