フェッセンデンの指先「日本に居た時にね、フェッセンデンの宇宙って話をね?読んだの。図書館で借りて」
「ユヒルさんってけっこうフィクション読むの好きですよね。それもハードめなやつ」
「うん。好き」
「俺の次にですよね?」
「ぜったい言うと思った!あはは!うん、はい、そうそう、ドロシーの次にね!」
「どんな話なんです」
「あのねえ、フェッセンデンって人がね、科学者なんだけど、すごく小さなミニチュアの地球を作るの」
「やりますね」
「やるでしょ。それでね、その小さな地球を、指でちょんってつついたら洪水が起きたり大地震が起こったりしちゃうの」
「へえ」
「で、フェッセンデンは好奇心の赴くままにどんどんそのミニチュアの地球をいじくって色んな災害を起こすんだけど、最後はちょっと怖い終わり方で…………まあそれはおいといて、私が思ったのは」
「ええ」
「はい、ドロシー、手出して」
「はい」
「これ。この手がね、その手だなって思って」
「…………『フェッセンデンの指先ひとつで天変地異を巻き起こされる極小の宇宙と恋人の指先ひとつでいつも翻弄される自分という器に共通点を見出しました』みたいな話ですか?」
「そう!それ! あはは!うーんさすがドロシー」
「言葉足らずですねえ…………」
「いいでしょ別に。私に足りないものぜんぶドロシーが持ってるし、ねえ、ちょっと失礼して膝に乗ってもいい」
「どうぞ」
「ありがとう。はい、じゃあ、どうぞ。今日も私のことあげるから、自由に遊んで」
「………………今日だけですか?」
「ぜったい言うと思った!あはは!明日も明後日もだよ!ずっとどうぞ、好きなだけ。ね?」